リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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30_舞踏会

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会長に待ってろと言われてしばらく経つと生徒もあらかた集まったようで、それぞれの担任が点呼を始めている。どうやら生徒を端の方に集めているみたいだ。真ん中は誰もいない。なんか、この授業って単位に入るらしいんだよな…。

コウヤ先生とセルトは見つけたんだが、どうしてもヒルエが見つからない。あいつサボったのか…。頭良いからこのくらい単位落としても大丈夫そうだしな。一生懸命ヒルエを探していると急に照明が落ちた。

「え、え!?」

真っ暗の中慌てていると、赤い光がほのかに灯った。あの光は会長の…

その光は人1人分ほどの大きさになり、会長の顔がほんのり見えた。会長の灯りが灯り終わると次は両側の光が灯った。水属性の水色と風属性の緑。緑はおそらくテンマ先輩だ。いつか絶対殴ってやる。水色は…。だんだん大きくなる水色の光に顔を確認する。水色は副会長だった。2人の光が灯り終わると次は、地属性の黄色と光属性の白が灯った。黄色はナツメ先輩だから、白はアオとアカだ。5つの属性の火が灯り終わる。暗闇に輝くその光はとても美しかった。

「綺麗…」

そして、その光はそれぞれの属性を象っていく。

赤は竜、水色は人魚、緑は精霊、黄色は狼、白は天使。細かなところまで精巧に象られたそれらはもはや芸術だ。それにしてもなんて魔力量だろう。一年のアオとアカは2人でしているが、それでも凄い魔力量だ。流石は生徒会。あんなの俺がしたら死ぬ…。


会長達は淡い光に照らされながら、手を上に伸ばした。

「「僕たちは僕たちの世界の元へ」」

「私は悲しげな花の元へ」

「僕は美しい月の元へ」

「私は海の底に沈む泡の元へ」

「俺は燃ゆる炎の中にある心の元へ」

パチンッ

双子、ナツメ先輩、テンマ先輩、副会長、会長の順に台詞を言うと、会長達は指を鳴らした。その瞬間、会長達の光は消えた。それと同時に俺の体は浮遊感に晒された。そして誰かの腕に支えられた。

「始まるぜ。気合い入れろよ」

俺を支えていたのはやはり会長だった。会長の小さな声に俺は緊張し始めた。

「はい」

会長は俺から離れる。そして、会長が動く気配がしたと思ったら、手を取られた。


「「「「「誘う運命に従い、私たちは出会った。さぁ、この手を取り、地獄の果てでもついて来てくれるかい?」」」」」

生徒会全員で声を揃えたと思ったら、灯りがついた。会長は俺の手を取り、ひざまづいていた。

「仰せのままに、光の魔術師よ」

ん?ん!?台詞がある上に手を差し伸べてキスされるのか!?聞いてないぞ!というか、アオとアカはお互いがパートナーとかそんなのありかよ。

「仰せのままに、地の魔術師よ」

今の声って…ヒルエ!ナツメ先輩のパートナーはヒルエなのか…。俺は確認する。ヒルエは黄色の貴族風な服で短パン。ズボンとか羨ましい…。ヒルエを見つめていると目があった。そうして、やっぱりなという顔をした。お互い様だろうが。

「仰せのままに、風の魔術師よ」

えっと、副会長の次で、会長は火属性。ここで失敗したら踊れた意味がない!

「仰せのままに、水の魔術師よ」

来てしまった…。

「お、仰せのままに、火の魔術師よ」

どもってしまった!しかし、ここで動揺するわけにもいかない。俺は会長に手を差し出す。

ちゅ

キスした俺の手を会長は握って立ち上がり、ダンスの最初のポーズをとった。必然的に俺もそのポーズをとる。

「「「「「では、踊ろうか。祝福を捧げるために」」」」」

そこで、曲が流れ始める。俺は慌ててステップを踏む。緊張して、頭が真っ白になる。

「緊張しすぎだ。安心して俺様に身を委ねろ。大丈夫だ」

「はい!あ、台詞があるとか聞いてなかったです」

「伝えるの忘れてた」

足を踏んでやろうかと思ったが、止まった。

「その分、俺がしっかりリードしてやるよ」

その言葉に安心して、俺は少し力を緩めた。少しだけ踊りやすくなった。会長のリードに合わせて、ステップを踏む。俺の足がついていけそうになると会長は即座にフォローしてくれる。

「会長、ありがとうございます」

「何がだ」

「全部です。全部、ありがとうございます」

そう言って会長の顔を見上げると、会長は笑っていた。俺も思わず笑顔になる。

「俺様こそお前に感謝する」

会長みたいな自信家で俺様がお礼を言うなんて思わず、俺はきょっとんとした顔になってしまった。

「そんな顔してると失敗するぞ」

「が、頑張ります」

俺は顔を引き締める。曲も終盤。なんで、こうも長いんだ。一曲だと言うのに。そして、この一曲のために全部の曲を踊れるようにならなくちゃいけなくなったんだ。なんせ、生徒会パートナーを務めたものが踊れないとかあり得ないらしい。

曲の最後、俺と会長は距離をとり、お互い礼をした。やっと終わった…。会長は俺に近づく。そして俺の手を掴むと椅子が用意してあるところまで誘われる。俺の隣はヒルエだ。俺たちパートナーが座ったのを確認すると、生徒会は礼をして、舞台の上に登り、舞台の後ろに並んで待機した。

「ヒルエ」

「よぉ、トラブルメーカー。こんな事だろうと思ったよ」

「今回はお互い様だろうが」

「お前はよりにもよって会長だけどな」

「ヒルエだって生徒会メンバーに変わりないだろ」

「これ以上、俺のこと言うとこの場で犯すぞ」

「すいませんでした」

俺は姿勢を正し謝る。ヒルエはそれに満足したように笑った。まぁでも、ここにヒルエが居てくれて良かった。平凡万歳。

俺がそんなことを考えていると、派手な着物を着たイケメンが舞台の袖から現れた。


「あい、理事長の紫月でありんす。生徒会とそのパートナー達のダンスは楽しんでもらえたかえ?今年も素晴らしい演出でございんした。流石でありんす。今日は皆の衆、存分に楽しんでくんなまし。舞踏会の始まりでありんす」

パンッ!

理事長が開会宣言をした瞬間に音楽がなり、花吹雪が散り、外に花火が上がった。

「は、派手だ…」

「うちの理事長は派手好きで有名だからな。んで、女嫌い」

「え、まじで?じゃあ、ここ男子校なのって…」

「おそらくな」

なんてこった。ある意味、職権乱用だな。

「では、今宵は良き夢を」

理事長は扇子を少し降って、ホールに食事を転送し、舞台の袖に隠れた。生徒会のメンバーは、風紀委員と生徒会に用意されたエリアに行く。それぞれの人気を考えてのことだろう。生徒達もそれぞれ動き始めた。

舞踏会の始まりだ。





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