366日の奇跡

夏目とろ

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[第5章]ラブレター

08

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 新歓はなんとか盛況に終わり、俺達は一度、生徒会室に戻った。

「お疲れ。思ったよりも盛り上がったね」

 椿野が淹れてくれた紅茶で一息つく。メンバー全員で応接セットのソファーに座り、俺達は新歓の労をねぎらった。応接セットは革張りの特注品で、一つのソファーに四人が座ることが出来る余裕のサイズだ。リコールされる前に俺が親衛隊員を連れ込んで乱交していたとされる現場で、それが頭の中にあるからか俺はなんとなく落ち着かなかったりするんだけども。
 長い脚を組み、ドカッと座る鷹司は絵になってるし、日向もとてもリラックスしてるようだ。椿野はカップを持つ手の小指がピンと立っていて、大役を終えた不知火は燃え尽きたようにぼーっとしている。佐倉と日下部はお喋りに花を咲かせ、そんないつもの光景にホッとした。

「それにしても、質問コーナー盛り上がったねー」
「そうそう! 俺達に当てられた子の中には泣いてた子もいたよな!」
「羽柴への質問もすごかったよね。やっぱ、まだあまり知られてないからかなあ?」

 日下部は興奮気味にそう言うと、お茶受けのマフィンに手を伸ばす。そのまま話題は新歓の話題となり、反省会へとなだれ込んだ。

 質問コーナーはメンバーが順番に『何番』と指名する形で、S組からF組の全員に満遍なく当たるように工夫した。俺への質問がS組で、椿野がA組、鷹司がB組の何番という具合に。時間内に無制限に質問を受け付けたから、かなりの新入生に当たったと思う。だからか、最後の方の質問はお気に入りの下着の色まで聞かれちゃったりなんかして。
 他のメンバーは校内新聞や噂である程度のプロフィールが出回っているからか、俺への質問が一番多かった。それは家族構成から趣味、好きな食べ物等の定番のものから、好きなタイプとの突っ込んだ内容にまで及んで。因みに趣味は料理と手芸とはなんとなく言えなくて、DIYだと答えてごまかした。趣味とまではいかないが、一応は部屋の模様替えは好きでちょこちょこやってるし。テディベア作りにしたってDIYの一種だと言えなくもない。

「好きなタイプか……」

 一番悩んだのがこの質問で、うちに女の子がいないのに加え、忙しさから恋愛のことなんか考えられなかったから返事に困る。仕方なく、

「小さくて可愛い子かな。控えめだけど頑張り屋さんで、胸はそんなに大きくなくていい」

 軽くジョークを交えて当たり障りのない答えを言ったつもりなのに、今日一番にシラケてしまったっけ。もしかして、この場合の好きなタイプは、うちの学校の生徒の中でってことだったのかも知れない。何しろ抱きたいとか、抱かれたいランキングがあるくらいだし。
 だがしかし。タイプの子って聞かれても、マジで何も思い浮かばないんだよね。そもそも俺の周りに女の子はいないし、よく話す女の人ってなると手芸店の店員さんや槙村の彼女の彩夏さんぐらいだし。本当は胸の大きさにもこだわりはないけど、大きいと無意識に見てしまうのは悲しい男のさが。とかなんとか言いつつも、性欲も殆どなかったりする。

 そういや、前回、自慰をしたのっていつだっけ。確か、リコールされて引きこもってた時だったっけか。

「…………」

 やばいな、俺。本当に高校男子かよ。本来なら思春期真っ盛りで、やりたい盛りでもあるはずなのに。ラブレター企画は予想通り反応が薄かったけど、鷹司が上手くフォローしてくれたからきっとひそかに盛り上がる企画になるだろう。
 日向達は何通貰えるかで盛り上がっていたが、俺はこれまでの状況を思い返すと貰える気がまるでしなかった。
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