さよならルーレット

夏目とろ

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 不思議に思ってジョンに目線を移したら、ジョンは真っ赤な顔でふいと顔を背けたっけ。今になって思えば、その頃から僕のことを特別に思ってくれていたのかな。
 その日は日曜日。朝食を食べ終えた僕らは父さんがやっている喫茶店のほうへ行き、当時まだ作成途中だった音楽スタジオを見学させてもらった。

「いいね。パパさん、あっちはステージ?」

 これまた興味津々なようで、ジョンはキョロキョロとあちこちをうろついて、父さんも合わせて三人でセッションしたり。
 父さんと僕がエレキギター。ジョンはブルースハープとアコースティックギター。歌はそれぞれがそれぞれのタイミングで歌い、楽しい時間を過ごした。

 とにかくジョンは、ギターも歌も上手かった。それからブルースハープも。年齢的には無理があるけど、本当にジョン・レノンの生まれ変わりなんじゃないかと思うくらいに。
 父さんと三人、セッションを始めた曲はロックのスタンダードナンバー。ジョン・レノンがソロアルバムでカバーしている曲で、時間を忘れて没頭したっけ。


 どうして忘れられたんだろう。どうやって記憶から消してしまえていたんだろう。封印していた蓋を開けると湯水のように、あの頃の記憶が溢れて来る。
 君と過ごした三ヶ月と短い期間、君はいろんなものを僕にくれたよね。僕は君に何かをあげることができたかな。

 その日の夕方。僕らは再び浴衣を着込み、秋祭りに出掛けた。漁師町特有のささやかなもので、おみこしをかついで海に練り込むお祭りだ。
 体力に自信のない僕らは見学側に回り、大人に混じって先頭で担ぐ村田にエールを送った。ふんどしひとつの姿は見ているこちら側は寒いのに、額に球の汗が浮かんでいる。

「かっこいい。村田」
「うん。ほんと」
「ジュン、ある?」
「ん?」
「おみこし持ったこと」

 担いだことがあるかってことなんだろう。少し笑って、首を横に振る。

「ジョン。持ちたい?」
「うん。けど無理。だからジュンと一緒に見る」

 そう言って僕らは手を繋いだ。人込みの中、誰にも知られずこっそりと。

 今思えば君は、激しい運動は見学していた。君の命のカウントダウンは着実にゆっくりと、その時もされていたんだ。 
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