27 / 41
27
最後に店内を見回し、いつもの癖でグラスを磨いた。父さんの趣味のアンティークなデザインのもので揃えられた店内の調度品。不意に古い振り子の柱時計が11時の時報とともにリンゴンと鳴り響き、
(――ガシャン)
グラスをひとつ、落として割ってしまった。
「……っっ」
飛び散ったガラス片を慌てて拾い集めようとして、不覚にも指先を切ってしまう。
ふと思い出したジョンと交わした約束。指切りには小指を絡める約束以外にもう一つの意味があり、永遠の愛を誓った男女が文字通りに指先を切り落としてしまうことも指切りと言うそうだ。
小指を絡める約束も破れば針千本を飲まされる。ただその罰は、ほぼ百パーセントがうやむやに終わってしまうのが世の常なれど。
「指切り!」
あの日の約束もきっとそうだ。守れないのが分かっていたなら、指切りなんかしなきゃよかった。
(――違う)
ごめん。ジョン。君は約束を守ろうとしてたよね。必死に生きて、僕のそばにいてくれようとした。
あの夜、初めて触れた唇へのキスも、熱い腕も、全てで僕を愛してくれた。なのに僕は何もあげられないままで、君は天国へ逝ってしまった。
思いの外、深く切ってしまっていたようで、ぽとりと一滴、鮮血が床を汚す。慌ててタオルで止血をするも、タオルはすぐに鮮血に染まった。
ふと切り落とされた指先を思う。勿論、患部は単なる切り傷で、少し深く切ってしまっただけだけど。
もしも指先を切り落とすことで君からの永遠の愛が手に入るなら、僕はあの時、指先を切り落としたかな。あのまま君はこの町にいて、春夏秋冬、全ての季節を一緒に過ごせるのなら。
そんな有り得ない空想なんかして、今日の僕はどうかしている。湯水のように溢れ来る君との思い出に、僕の心臓が悲鳴を上げている。
「ジョン……」
どんなに君を呼んでも、
『ジュン』
僕を呼ぶ君の声は聞こえない。
あの甘い夜の思い出も何もかも、あの頃の記憶を取り戻しても、何もいいことはなかった。
君がいない。
その現実に、ただ打ちのめされただけだ。
(――ガシャン)
グラスをひとつ、落として割ってしまった。
「……っっ」
飛び散ったガラス片を慌てて拾い集めようとして、不覚にも指先を切ってしまう。
ふと思い出したジョンと交わした約束。指切りには小指を絡める約束以外にもう一つの意味があり、永遠の愛を誓った男女が文字通りに指先を切り落としてしまうことも指切りと言うそうだ。
小指を絡める約束も破れば針千本を飲まされる。ただその罰は、ほぼ百パーセントがうやむやに終わってしまうのが世の常なれど。
「指切り!」
あの日の約束もきっとそうだ。守れないのが分かっていたなら、指切りなんかしなきゃよかった。
(――違う)
ごめん。ジョン。君は約束を守ろうとしてたよね。必死に生きて、僕のそばにいてくれようとした。
あの夜、初めて触れた唇へのキスも、熱い腕も、全てで僕を愛してくれた。なのに僕は何もあげられないままで、君は天国へ逝ってしまった。
思いの外、深く切ってしまっていたようで、ぽとりと一滴、鮮血が床を汚す。慌ててタオルで止血をするも、タオルはすぐに鮮血に染まった。
ふと切り落とされた指先を思う。勿論、患部は単なる切り傷で、少し深く切ってしまっただけだけど。
もしも指先を切り落とすことで君からの永遠の愛が手に入るなら、僕はあの時、指先を切り落としたかな。あのまま君はこの町にいて、春夏秋冬、全ての季節を一緒に過ごせるのなら。
そんな有り得ない空想なんかして、今日の僕はどうかしている。湯水のように溢れ来る君との思い出に、僕の心臓が悲鳴を上げている。
「ジョン……」
どんなに君を呼んでも、
『ジュン』
僕を呼ぶ君の声は聞こえない。
あの甘い夜の思い出も何もかも、あの頃の記憶を取り戻しても、何もいいことはなかった。
君がいない。
その現実に、ただ打ちのめされただけだ。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。