さよならルーレット

夏目とろ

文字の大きさ
32 / 41

32

しおりを挟む
 結局はジョンの故郷を訪ねたことで、僕はジョンを前より身近に感じていた。ジョンはもういないのに。その現実と向き合わなきゃいけないのに。
 村田の思惑おもわくは僕をジョンに向き合わさせ、ジョンがこの世にいない現実をきちんと受け止めさせることだと思う。花苗が逝ってからは現実逃避も少なくなって来たけど、ジョンの記憶を消してしまったのは現実逃避以外の何ものでもなかったから。

 あの頃の僕は、最初のうちはなかなかクラスメートと打ち解けられずにいた。この町に引越してきた小学生の頃から同じ顔触れなのに、なぜだか僕は一線を引いていた。
 だけど、そのうちジョンや村田と四六時中一緒にいるようになり、ジョンと村田の人懐っこさが移ったのか、いつの間にか僕はジョンや村田がいなくてもクラスメートと自然に話せるようになっていた。


 時節は秋の運動会も終わった10月も半ば。その頃の僕も、村田を含めた三人でつるむことが多かった。当時の僕が住んでいた家か父さんの喫茶店に集まることが多く、学校から帰ると誰からともなく集まって音楽や馬鹿話に花を咲かせた。

 ジョンがなぜか僕と二人きりになりたがるのはもう少し後のことで、この頃は村田を含めた三人のスタンスが心地好く、ただ馬鹿笑いできればそれでよかった。
 思えばこの頃が、僕が一番、青春を謳歌おうかしていた頃なのかも知れない。高校生になると村田とも学校が別になるし、勿論、ジョンもそばにはいなかったから。

 特に時間がないわけでもないが、今日はシャワーだけで済ませてしまおう。なんとなく湯浴みするのも億劫おっくうで、カラスの行水で浴室を出た。


 ねえ、ジョン。覚えてる?

 あの頃の僕らはボードゲームにハマっていて、特に人間の一生を擬似体験できるゲームでよく遊んだよね。自分の運命はルーレットで決める。そんな運任せのいさぎよさが僕は好きだった。

「やったあ、男の子!」
「えっ」
「うそっ。またかよ」

 なぜだかジョンはいつも子宝に恵まれて、車の駒に子供が乗り切れないことも何回かあって、僕らはおおいに笑い合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暮色蒼然

珊瑚
BL
「まだ書いているのか」 「君も書いてみたら良いじゃないですか。案外好きかもしれませんよ」 「じっとしているのは俺の性に合わん」 「でしょうね」 間髪入れずに言い放った春壱に、奏介はカチンとし彼を小突いた。彼はまるで猫の戯れだと言わんばかりにさっと躱し、執筆を続けた。 「君は単調ですねぇ。これで遊んでいてくださいね」  そう言って、春壱は奏介に万華鏡を投げて渡した。奏介は万華鏡を素直に覗いたりもしたが、すぐに飽きて適当な本を開いた。  しばらくの間、お互いのことをして過ごしていたが、ふと春壱が口を開いた。 「君、私のこと好きでしょう?」 「⋯⋯? いや」 「はて、私の勘違いか。随分私に執着しているように感じましてね。いや良いんです。違うのなら」 「何が言いたい」 「私も同じ気持ちだなぁって思っただけですよ」   俺はこの頃をどんなに切望したって、時はやり直させてはくれない。 だから、だからこそ春壱のことを見捨ててはいけなかった。 --------- 数年前に書いたもので、今見ると気恥ずかしさがありますが、 初めてきちんと最後まで書ききった思い出の作品です。 こういう二人が癖なんだな~と思って読んでいただけると嬉しいです。 ※他のところにも掲載予定です。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

恋と脅しは使いよう

makase
BL
恋に破れ、やけ酒の末酔いつぶれた賢一。気が付けば酔っぱらいの戯言を弱みとして握られてしまう……

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

休憩時間10分の内緒の恋人チャージ(高校生ver)

子犬一 はぁて
BL
俺様攻め×一途受け。学校の休み時間10分の内緒の恋人チャージ方法は、ちゅーとぎゅーの他にも内緒でしています。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

処理中です...