ゲームの世界に来てもチート級な力を手に入れれなかった結果。

yuki*

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1章 冒険が始まってしまった

5話 騎士差別が酷すぎる

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「…すげぇ」

階段を上りきると、広くスペースを使った、武器と防具の店があった。店のカウンター奥には、壁にかけられた剣や西洋の甲冑が見える。初めてこんなの見た。さすがゲームの世界。
光に照らされている鎧に目を奪われていると、クレアが視界に入ってきた。それから、ピッと人差し指を立て、腰に手を当てる。口を開いた瞬間、面倒な話が始まると勘づいた。

『いいか。よく聞けよ。ここの神殿にある防具は、どこの国から見ても最高の品揃えだ。でも、だからと言って──』

「はいはいはいはい。わかった、わかった。なー、店員さん。そこにある鎧、いくらですかー?」

『話を聞け!』

剣を手入れしていた店主と思しき女性に声をかけると、彼女は剣から手を離し、ふんわりとした笑顔を浮かべて、「金貨6000枚です」と言った。

「俺、あれでいいから。金だして」

『ばっ…金貨6000枚なんて、高額すぎる!ってかお前、その装備…っ』

「いいだろ別に。これお願いしまーす」

気に入った剣を指さし、そう言うと、店員さんが手を差し出してくる。

「では、まずライセンスカードを」

「カード…あー、あれか」

ズボンのポケットにしまっていたライセンスカードを取り出し、店員さんに渡す。なんでカードがいるのか、わからなかったけど、多分騎士かどうか判別するためだろう。
なんて思ったのも束の間。店員さんの顔が、みるみるうちに曇っていく。そして、一通り目を通したのであろうライセンスカードを無言で戻された。

「えっと…」

俺、買えるの?
そう聞こうとした時、女性の方からチッという舌打ちが聞こえた。

「てめぇに売るモンなんてねぇよ!」

眉間にしわを寄せ、さっきまでの笑顔はどこへやら。唾でも吐かれそうな勢いでバンとカウンターを叩かれる。あまりの表情の変わりように思考がついていかず、俺はただ小さく「え?」と呟いた。

『ったく…だからマニュアル読めって言ったのに…』

ぶつくさ言いながら俺の横から出てくると、クレアは俺に睨みをきかせている店員に近寄っていく。店員はクレアを見るなり、ハッとして姿勢を正した。この様子を見ると、コイツはこの神殿の中では偉いヤツなんだろうと勘づくことができた。

「えっ…?な、なんでクレア様が2階に…?……そうなんですか…はい…はい…」

頷きながらクレアの言葉に耳を傾けている店員。だけど、俺にはその話が聞こえてこない。おかしいな。さっきまでこのくらいの距離ならこいつの声聞こえたのに。
話がついたのか、クレアは俺の方に戻ってきて、やれやれといった仕草をした。

『ここの国は強さで差別されると言っただろ。お前は今騎士の中で最っ低のGランクだ。装備できるのはせいぜい…これだな』

「げっ…ダサ…」

クレアが指さしたのは、布でできた鎧のようなものだった。くすんだ茶色をしているから、余計にダサい。俺が実際装備したいのは、もっとゴツくてカッコイイ中世ヨーロッパにあったような鎧だ。だから、こんなものは断固拒否。選択のうちに入らない。

『そう言うと思って、ちゃんと話をつけておいた。Fランクのものならレベル足りなくてもギリギリ着れるだろうから、特別に買ってやる。…あ、ちなみにお前の今のレベルは1だ』

ぴっと人差し指を立てられ、思わず肩を落とす。
ここの世界はレベル制なのか…。ゲームならまだしも、ここは【ゲーム】といつものにさらに【リアル】がつく。今までニート生活だった俺が死なずにゲームクリアできる自信が無い。例えばスライムなんかに殺されたらどうすれば。…あ、なんだか胃が痛くなってきた。

『Fランクなら、ここら辺だな』

「…ん…?」

悩み込んで、伏せていた顔を上げると、ふと目にとまるものがあった。
藍色の鎧と一緒になった黒のマント。それに、鉄製の小手。それだけ、周りの鎧より一際目立っている…気がした。

「じゃあ、俺…これにするわ」

『ふぅん。…値段もなかなかだな。よし、いいだろう』

クレアはまた店員の所に飛んでいくと、俺の言った鎧を指差して、売ってくれるように交渉しているようだった。まさか、防具を買うのにもこんなに制限があるなんて。…確かに、どのRPGも、最初は布切れのような服だったりするからな。
ぼんやりそんなことを考えていると、クレアが戻ってきた。どうでもいいけど、よく飛ぶな、コイツ。

『今から買った鎧を着てもらう。武器はあたしのほうで適当に選んでおくからな。さっさと着て、さっさと来いよ。遅いやつは嫌いなんだ』

そう言ってクレアが向かいの武器屋へ飛んでいく。そして、俺はあることに気がついた。
…そういえば、鎧着てもらうって…。
防具屋を恐る恐る見ると、カウンターの向こうで鎧を手にした先ほどの店員が、ニコニコして俺を待っていた。俺の見間違いじゃなければ、その背後からどす黒いオーラが見える。

「どうせ鎧着れないだろうから手伝ってあげますね。早く来てください。ランクGのクソ騎士」

──俺は今、改めて騎士差別を味わったような気がした。
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