ゲームの世界に来てもチート級な力を手に入れれなかった結果。

yuki*

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1章 冒険が始まってしまった

4話 騎士になってしまった

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ポトリ。
透明なモニターのどこからか吐き出されたカードを見て、妖精は言った。
 
『ライセンス発行完了。これで晴れて今日から、お前も騎士だ』
 
…マジか。
まさか、成り行きで本当に騎士になってしまうとは。
仕方なく目の前にあるライセンスカードを手に取ると、そこには見たこともない字が羅列していた。
 
「なぁ、チビ。これってなんて読──っぶっ」

バシャ、と水の塊を顔面にぶつけられ、言葉を無理やり遮られた。頭からずぶ濡れになった俺を見て、妖精は腹立たしそうに腰に手を当てる。

『誰がチビだとロリコン野郎!…そういえばまだ名乗ってなかったな。あたしはクレアだ。その容量の悪い頭でよーく覚えておけよ!』

妖精──クレアは頭を指差し、煽るような口調でそう告げた。ちょっとそこにはイラッとした上に、俺はロリコンじゃないと否定したかったけど、それよりも今さっきやられたことに疑問を持った。

「…どこから水出たんだよ」

『は?魔法だよ魔法。あたしみたいな妖精族は生まれてから自然と魔法が使えるようになる。ま、お前みたいなやつは一生かかっても無理だけど』

…イラッ。
なんだか、さっきからいちいち煽りがウザいな。
俺を下に見てるのか?妖精族だかなんだか知らねぇけど、人間様の方が立場上だっての。
声に出しそうになった手前で、ぐっとその言葉を飲み込み、俺は小さく息を吐いた。
そういえば…ここに入る前に会った、剣をぶっ下げてたやつが、クレアがどうのこうのって言ってた気がする。

「メンタル強く持てってそういう事か…」

確かに、豆腐メンタルのやつがこんなのと話したら、一瞬でそのメンタルがペースト状になるだろう。

『?…なにブツブツ言ってんだ。聞きたいことがあったんじゃないのか』

「あ。…あー、そうだ。ここに書いてあるやつ、なんて読むんだよ」

『……』

ライセンスカード片手に聞いた途端、クレアの顔が一気に険しくなった。そして深く深くため息をつくと、先程とは打って変わって、悲愴の表情を浮かべる。

『そうか…お前、学校に行ってないんだな』

「え?」

『それなら文字も…この国のことも分からなくて当然だ。他国のことなんて尚更だろうし…』

一人納得した様子で頷くクレアに、俺はただ首を傾げる。なんかよく分からないけど、とりあえず何か酷い勘違いをされているのは分かった。

『よし。決めた』

そして、クレアは何かを決心した表情で俺を見上げる。
…咄嗟に感じた嫌な予感は、見事的中することになった。

『お前の冒険にあたしもついて行ってやろう』

「…は?いや、いいです」

『いいですとはなんだ!神殿の案内人のクレアだぞ!ついていって損はないだろ!っていうか、お前がなんと言おうと、ついてくからな!』

…いらねぇ…。
多分、ゲームで言うナビゲーター役なのだろうが、これは本当にいらない。煽りがなければ美少女だし、まだアリだが、これは…本当に…。
どうにかして断れないものか。ライセンスカードの文字を丁寧に説明しているクレアを見つめ、自分の言動が失敗を招いたのかと、げんなりした。





************





『…と、こんなもんだな。まぁ、といっても、字を書くことはこの時代ではあまり無いから安心しろ。最低限、話せればいい』

じゃあ今までの説明は何だったんだ。
濡れた髪も服も、ある程度乾いている。
無駄な時間を使ってしまった、なんて遠い目をしながら思っていると、クレアが『そうだ』と手を叩いた。

『防具を探しに行かないと、冒険に出れねぇな』

「防具?」

『ん。その格好で出たら、スライムも倒せないって言っただろ?だから、一応最低限の防具を揃えようと思って。ここなら色んな防具が揃ってるから、お前に合うやつもあるはずだ』

防具…防具か。
その言葉を聞いて、考え込む。
ここまできたら…もうゲームだよな、ここ。
流石に現実だと割り切れなくなってきた。てか、今まで現実だと割り切ろうとした自分がすごいと思う。普通、神殿入る前の戦士を見て、勘付くべきだったんだろうけど。
じゃあ、だとしたら…ここは?

ふと、家で見つけた、見慣れないゲームのことを思い出した。
【mystery・field】
まさか、あの時の声の「ゲームには強制参加して貰います」って…。

『おーい!おいてくぞ!早くしろ!!』

キーン…と、脳内に直接響く声がして、我に返る。
俺が足をおいて、怒られた階段の近くに、妖精が急かすようにパタパタと羽をはためかせていた。

「くっ…うぜぇ…」

『あー?なんだって?また水かけられたいのか?』

「…今行きまーす」

知らないとこに来て、成り行きで騎士になり、おまけに上から目線のロリチビの奴隷的存在にさせられそうになってるし…。
──俺、元の世界の帰れんのかな。

「ゲームやりてぇ…」

階段に向かいながら、ポツリと呟く。
できれば…切実に、リアルじゃない方のがいいです、と願って。
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