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第2章 出会い アイリス、クロ編 (16話〜48話)

〈眷属化〉

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「ふむ………呪いに黒い幼女かぁ」
「そ。俺は全く分かんなかったんだけど、ノエルは何か知ってる?」


主従契約を終えて、ダグラス商館の外でアイリスを待っていた時の事。

お菓子を食べお腹いっぱいになり、俺の背中でうとうと目を擦っていたノエルにあの古城での出来事を話した。
正直この状況でノエルを起こすのは躊躇ためらったんだけど、こういうのはなるべく早く話しといた方が良いと思いまして。
ノエルは大きく伸びて欠伸をすると、俺が話した事を復唱しながら考え込むように顎に手を当てる。


「………真白はその幼女に何かされたのか?」
「え?いや、何もされてないと思う。いて言えばおでこをこつんってされたけど………」
「…………………ほう?」


ノエルの目がすっと細められた。
あれ、おかしいな………。
さっきまで後ろから身を乗り出して、自慢の銀髪を垂らしながらこてんと可愛らしく首を傾げていたはず。

しかし、一瞬で有無を言わさない圧力を感じさせる表情に早変わり。
笑顔なのに目が笑ってないのが非常に怖い。


「むぅ~!真白が帰ってくる前に、不気味な気配がしたから心配していたのに…………ワタシの知らぬ間に、初対面の女とそんな事をしていたのか!?」


背後のノエルが首をがっちりホールドしながら片腕をぶんぶん振り回し、うがぁー!と叫び声を上げた。


「裁判長、待ってください!あれは不可抗力なんです!」


弁解を試みる。
さっきから若干通りがかりの人達の視線が冷たさを帯びてきているのだ。
話を部分的に聞いたと思われる人達からの"こいつやべぇ"みたいな視線が痛いのなんのって。
ここで汚名返上しておきたい。


「ギルティ、なのだ」


ダメだった。
顔を見なくても、声色だけでノエルがぶすっとして不機嫌なのがよく分かる。


「んー!」
「わ、分かった!今回は何にするの?」


ノエルが何かを訴えかけるように俺の肩を前後に揺さぶる。

俺達の間の暗黙の了解。
それは、どちらかが相手に迷惑をかけたり心配させたりした時は、相手の言うことを何でも一つ聞く、というものだ。
もはや当たり前すぎてルールですらない。


「…………今度、丸一日真白にちやほやしてもらうのだ」
「りょ、了解です」


俺の首筋に顔を埋め、くぐもった声でぽつりと一言。


「それとは別に!」
「おわっ!?」


突然ガバッと体を起こしたノエルは、念力のような力でふわりと浮き上がって正面に回り。
俺の頬を掴むと、わざとらしくコチンと音を立てておでことおでこを合わせ、力いっぱいぐりぐりしまくる。


「これは上書きするのだ!」


ムキになってるノエルも可愛い……………いっ、いててっ!?

目の前のノエルを微笑ほほえましく眺めていると、突如おでこを局所的な痛みが襲ってきた。
摩擦でおでこが削れるんじゃないかと思うほどひたすら擦り付けたノエルは、やっと満足したのか謎の達成感を滲ませながら離れて額の汗を拭う。


「ふぃ~。これでよしなのだ。………それはそうと真白、本当にこれ以外何もされていないのだな?」
「いてて…………う、うん、そのはず。あの時はすぐにステータス画面を確認したしね」


これ、確実に俺のおでこ真っ赤になってない?
ノエルは見る限りいつもの綺麗な肌なんだけど…………おでこがめっちゃヒリヒリする。
まぁこれくらいは甘んじて受け入れるべきか。
…………いや、むしろあの至近距離でノエルのムキになった顔を拝めたならプラスでは?

割と真剣にそんな事を考えながら、念の為もう一度ステータス画面を開く。
何らかの呪いが付いてたらやばいから、あの幼女が消えたあとすぐにステータス画面は確認した。
でももしかしたら時差で発動するタイプかもしれないし、あんだけ思わせぶりにしておいて何もありませんでした~、じゃあまりにも拍子抜ひょうしぬけすぎる。
もちろん、何も無いならそれに越したことはないけども。


「……………お?」
「どうしたのだ?」


〈鑑定〉のスキルでステータス画面を開くと、所持スキル欄にビックリマークが付いているのを見つけた。
何だこれ、今までこんなの見たことないな…………。


「………〈眷属化〉に何かあるのか」


恐る恐るスキル欄を開いてみると、その中の一番上に書いてある〈眷属化〉の文字の斜め上に同じビックリマークが。
その他に変わった所は見当たらない。
試しに押してみる。


「これは………追加能力的なやつ、ってこと?」
「う~む………。と言うより、これが〈眷属化〉の本来の能力と言った方が良いかもなのだ」


開かれたページには、何行にも渡って〈眷属化〉についての詳細が表示されていた。
今までの基本的な情報だけでなく、新しく追加された初めて見るものもある。



    ────────────────


・スキル名〈眷属化〉

・能力………潜在能力解放、昇華、隷属、眷属化


・詳細………スキル所持者の魂魄こんぱくの濃度が高い分泌物、または構成物質を取り込ませた任意の対象の潜在能力の解放、その人物の魂を昇華させる事ができる。

また、互いの任意で眷属にすることもできる。
対象を強制的に従わせる"隷属"も可能。

ただし、眷属にする事で様々な恩恵があるが、隷属すると対象と自身のステータスが減少するなどのデメリットが発生する。

etc………。


   ────────────────






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