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第5章 出会い リーン編
ダグールの王女様
しおりを挟む拝啓、お父様、お母様。
お元気でしょうか。
天国でも仲睦まじく暮らしていますか?
こちらは新しい家族も増え、毎日楽しく幸せに過ごしています。
そして、もうじき夏を迎える今日この頃、俺は今──────────吸血鬼の王様と、二人でどデカいお風呂に入っています。
緊張しすぎてお風呂が気持ちいいとか全く考えられない。
ちらりと俯いていた視線を上げると、反対側の風呂の縁に寄りかかった厳粛そうなダンディおじが、湯船に浮かべた桶から小さな盃を持ち上げ、くいっと傾けた。
き、気まずい。
これお風呂の温度大丈夫?
なんか震えてきたんだけど…………。
本当にどうしてこうなった……………。
のぼせ上がり茹だった頭で、必死に思い返す。
時は遡ること数時間前。
リーンがダグールの第二王女だと発覚し、あれよあれよと王城に招かれてからの事だ。
「え………第二王女って……………………え?」
何やら豪華な馬車の中。
馬の蹄の音と揺れを感じながら、俺は呆然とリーンを見つめる。
軍事隊長だという男に連れられて乗ったは良いものの、未だ突然のカミングアウトに停止していた頭が上手く回っておらず、繰り返すようにそう聞き返した。
頭の上に大量の?を浮かべる俺を前に、なぜかリーンも首を傾げ、隊長らしき男は顔を覆って天を仰いでしまう。
………………いや、ちょっと待って、聞いてない聞いてない。
「えっと、王女様………?」
「はい。そうですよ?」
「………………王女なのに、国を無断で出て運命の人探しを?」
「はい!」
何してんだ本当に…………。
嘘でしょ?
一国の王女様とか言う超重鎮なのに護衛の一人も付けず国を出て、運命の人探しの旅をしていたなんて…………。
この世界の王族はもれなく行動力の化身なのかな?
幸いなことに何も無かった(そんな事はない)から事なきを得たけど、もしもの事があったらと考えるとゾッとする。
「姫様がお姿をおくらましになってからと言うもの、国は大いに傾きまして…………」
「そりゃそうだ」
大切な王女様が手紙だけ残して失踪したんだよ?
しかも"運命の人を探してきます"っていう手紙。
誰一人行先なんて知らないし、なんなら帰ってくるかすらも分からない。
やばい。
やばすぎる。
下手すりゃ国がどうなっていた事か……………。
王様と王妃様……………つまりリーンのお父さんとお母さんもすごく心配したんじゃないだろうか。
「………………まぁ、姫様がどこかへ行ってしまわれるのは既に日常茶飯事でしたので、大概の人々はまたか………と…………」
「ああ……………」
隊長さんの表情を見て何となく察した。
話を聞くと、昔は気付いた時にはリーンが消えていて、大捜索の結果、城下町のレストランで大食い競走をしていたり、魔法学校の授業に勝手に参加していたり。
無理やり冒険者パーティについて行って外で暴れたりと、かなりあれこれやんちゃしていたらしい。
血を吸ってなくて元気の無い状態とは到底思えないわんぱくさだったそうだ。
そのおかげで城下町の人達とはかなり仲良くなり、騎士団の騎士達からも手のかかる孫的な感じで愛されていたのだとか。
だが、最近はその明るさに影が差し、徐々に外に出る気力も無くなってしまったのだと。
町の人達にそれはもう心配されてたんだってさ。
昔から既に大食いだったんだ……………え?そこじゃない?
ガラガラと馬車がスピードを緩めたところで隊長さんは一度話を切り、入口を開けて外で敬礼していた兵士と何かを話す。
横からひょいっと顔を覗かせて正面を見上げると、そこには独特の雰囲気を醸し出す、黒ベースのかっこいい王城がどんと構えていた。
いかにも吸血鬼が住んでいそうな、良い意味で禍々しさを放つ城だ。
うちの国の王城とはまた違った様式だな……………やっぱり国によって個性が出るね。
「ふふっ、こちらはお父様がお建てになったお城なんです。かっこいいでしょう?」
「うん。こりゃすごい…………」
まさに圧巻だ。
見上げる首が痛くなってくるほど大きく、それでいて過度に誇張しすぎずスタイリッシュな造形。
この闇深い感じ…………非常に厨二心がくすぐられますな。
「隊長、お疲れ様です!こちらは───────って、姫様!?」
「あ、ただいま帰りました」
「ああはい……………ではなくて!陛下がお待ちです、どうぞお通りください」
驚きつつもしっかりと敬礼でリーンを出迎えると、パパッと仕事をこなしてすぐに馬車を城の中へと促す。
すれ違い際に、「まさか本当にお帰りになられるとは…………」と呟いていたのが聞こえた。
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