最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

文字の大きさ
253 / 405
第13章

罠にかかったのは②

しおりを挟む





「何しとるんじゃこのバカタレがァーーーッ!!」



どこからかそんな叫び声が聞こえると同時に、黒い何かが土蜘蛛目掛けて飛来した。
コマ送りのように進む世界で、異変に気が付いた土蜘蛛がひょいっと身を躱す。
目標を見失った黒い物体は必然的にその先に座っていた俺の元に落下し、もふっとした感触を与えながら視界を真っ黒に染め上げる。

ガバチョ!とダイナミックな抱きつきを見せたのは、向こうの茂みに隠れていたはずのセンリだった。
黒猫姿で器用に四肢を広げ、俺の顔面に飛びついた。

どうも最初は猫キックを土蜘蛛に命中させるつもりだったらしく、どこかで見たことあるような必殺のポーズで右足を突き出していたのだが、避けられてしまったためすぐにダイビングに切り替えていた。
空中での見事な身のこなしである。

頭がちぎれ飛ぶかと思うほどの勢いで抱きついてきたセンリの勢いに負け、ズザザーーッ!と地面を滑る俺。
引きずった後頭部が痛い。
ほのかに香るお日様の匂いがなければ、思いっきり痛がっていたことだろう。


「あ、あら、センリじゃない………久しぶりねぇ」


驚きのあまり、土蜘蛛も目をぱちくりさせている。
まさか突然、旧友がどこからともなく降ってくるとは思ってもみなかったのだろう。
本気で驚いているのが声色からもよく分かる。

…………て言うかセンリさん、そろそろどいてくれませんかね。
未だに視界が真っ黒で何も見えない。
いつまで人の顔面の上に乗っかってるつもりだ…………あれ、もしかしてくつろぎ始めた?

感覚的に、なんかモゾモゾ動いて安定する位置を定めているように思える。
何しとんだ………。
ここは休憩所じゃないっての。
愛すべき肉球でふみふみされているはずなのに全然嬉しくない。

その意思を伝えようとセンリの背中をポンポン叩いてみるが、なぜかシャーッ!と絶賛威嚇中の彼女は全く聞く耳を持たない。


「"久しぶり"ではないわっ!土蜘蛛お主………何を人の男に手を出しとるんじゃ!」
「あらあら。坊や、すでに先客が居たのねぇ。まぁ………それでも諦める気は無いけれど」
「ぷはっ。…………一応言っておくけど、俺はどっちのものにもなるつもりはないからな」


何とかのたうち回ってセンリにどいてもらった俺は、とびきりのジト目で二人に念押す。
しかし効果は無いようだ。
俺の冷ややかな視線はなんのその。
本人を除け者にしたセンリと土蜘蛛の間で熱い火花が散る。


「うへへ~。なんか凄いことになってるね~」
「言っとる場合か。早く捕まえた方が良いんじゃないの?」
「おおぅ………それもそうだね~」


シュカが戻ってきた瞬間から、明らかに土蜘蛛の警戒心が高まった。
どうやら罠だということに気が付いたらしい。
センリと壮絶な睨み合いを繰り広げながらも、周囲に気を配って何かを模索している。
さすがに三対一で勝てるとは思っていないのか………逃げる準備って感じか。


「シュカまで…………どうしましょうか」
「大人しくお縄になるのが賢明じゃぞ」
「そうだよ~。そろそろ捕まっちゃいなよ~」


マスコット二人と土蜘蛛が相対する。
ゆるゆるの見た目でビシッと指をさしてもあまり怖くない。
むしろ可愛い。

対して、土蜘蛛は腰あたりからパキパキと蜘蛛の脚のようなものを五本生やして二人に向ける。
こっちは抜群の威圧感だ。
中身を知らなければ、完全に一方的ないじめである。
絵面的にずいぶん珍しいことになってるな………。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...