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第十四章
原初の大妖魔③
しおりを挟む夜。
闇の帳が降りた、辺りに一切の生物の気配を感じさせない荒野にて。
「くくく、お主がよもや、こんな事を企んでおったとはのぅ」
「………………」
クツクツと、心底愉快そうな笑い声が聞こえる。
月明かりに照らされた美しい白髪が風に揺れ、露わになったのは妖しい笑みを浮かべる九尾の狐だった。
いつもの狂気じみた笑顔ではなく、おかしそうな、愉快そうなその笑顔は、万人を見惚れさせる不思議な魅力を携えていた。
"お主"と呼ばれた相手側の顔は、ちょうど闇がかかっていてよく見えない。
気配にも一切の変動がないので、何を考えているか、こちらから読み取ることは出来ない。
しばらく、二人の間に沈黙の時間が流れた。
風でなびく髪を抑え、九尾の狐はなんとなしに月を見上げる。
「そう気兼ねすることもあるまいて。妾は、自分がしたいようにするのみじゃ」
おもむろに、履いていた下駄を投げ捨て。
「何かに縛られ、制限された中で生きて何が幸せか。己の欲望を叶え、享受してこその生であろう?……………お主に言うのもなんじゃがな」
今度は足袋も脱いで投げ捨て。
屈伸、伸脚。
「妾は妾じゃ。何者にも縛られぬ、妖怪の王」
手足をプラプラ、最後に肩をコキッ、コキッと鳴らしてからちらりと振り返ると。
「…………くふふ。お主も、大変じゃのぅ」
「………………」
相手は、何も言わない。
肯定も否定も無い。
話は終わったと満足気な九尾の狐が背を向けると、もうその時には相手の気配は消えてしまっていた。
まるで、初めからその場には彼女一人しか居なかったかのようだ。
場を、残された不気味な静寂が支配する。
────────それが破られたのは、案外すぐの事だった。
それこそ入れ替わりと言っても過言では無い。
「くくく、やっとのお出ましじゃなぁ………!」
九尾の狐に相対するように、月明かりが落とす九つの影。
彼女の笑顔に狂気が戻る。
「どうやら………本気で妾を止めるつもりらしいのぅ」
「うへへ~。さすがに見逃せないもんね~」
「私は不本意なのだけれど…………狙いの男が殺されるのも癪だしねぇ」
「貴方は罪の無い人々を殺しすぎました………。せめて、私達の手で」
「戦争は終わった。もう、お前が求めるものはここには無い」
「ししし!あいつ、驚かせてやったらどんな顔するかなっ!」
「おい、お主だけ趣旨が変わっとらんか………?」
「ぐわっはっはっ!腕が鳴るじゃねぇか!」
「……………心配」
酒呑童子、土蜘蛛、鵺、大天狗、座敷わらし、猫又、輪入道、八岐大蛇。
聖魔戦争を生き抜いた、妖怪の中でもトップに君臨する八人の精鋭達。
何のためにこんな豪華なメンバーが集まったのか。
言葉は無くとも、九尾の狐は十分に理解していた。
おそらく、"自分を殺しに来た"のだろう、と。
…………だからこそ、彼女は解せなかった。
「そこの獣人はなんじゃ?たいして強そうには見えないが…………」
彼ら彼女らの背後には、一人の女性が佇んでいた。
見かけはただのキツネの獣人。
歳の頃は二十前半。
決意に満ちた表情をしているものの、特別感じる気配が大きいわけでもない。
何かサポート特化のスキルを所持しているのか……………いや、だとしても単体戦力として足手まといになるような輩を、この戦場に連れてくるとは考えにくい。
あの娘には何かがある。
わざわざこのような場所まで連れてくるに至る、何かが。
「…………くふふ、まぁ良い」
たとえ何かがあろうと、正面から粉砕してやれば良いだけのこと。
自分には、それを成すだけの力がある。
一人ながらさっさとそう結論付ける。
──────そして、溢れ出す圧倒的なまでの妖力。
戦闘態勢に入った九尾の狐の妖力は、大妖怪八人を持ってしても逃げ出したくなるくらい純粋で巨大だ。
空気が重くなり、圧迫感のあるプレッシャーが圧殺せんとのしかかる。
ボボゥッ!
揺らめいた九つの尾の先に、妖力により生成された紫色の炎が順々に灯る。
それはおもむろに彼女の手のひらへと集束。
凶悪な笑みをもって、夜の荒野へと解き放たれる。
ゴパッ!と一瞬にしてその体積を拡大した炎は、轟音と共に火の粉と熱波を撒き散らし、周囲をあっという間に地獄絵図へと変貌させた。
たゆみ、波打つ炎海は自在にその姿を変え、大地を蹂躙する。
地面がギリギリのところで原型を保てているのは、一重に九尾の狐のコントロール故だろう。
彼女がその気になれば、大地を溶かす程の熱を内包した炎を放つなど容易い。
が、そんな事をしてしまえば、せっかくの戦うフィールドが台無しになってしまうではないか。
そんなつまらない事を、彼女は絶対にしない。
「むっ………」
正面から、渦巻いた爆風。
炎の波に風穴を空け、九尾の狐に襲いかかる。
思わず彼女が腕で風よけした隙に、上空から何かが落下、叩きつけられた地面がメキメキと悲鳴を上げる。
「ぬんっ!」
「"鉤爪"」
怪力による強烈な刺突と、まるでドラゴンの爪のように研ぎ澄まされた漆黒の一撃が九尾の狐を捉える。
避けるのは不可能と判断。
ダメージが大きいと思われる槍を両腕でガードして防ぐ。
無防備な脇腹に"鉤爪"がくい込み、ブシッ!と出血した。
しかし、それ以上、好きにはさせない。
力んだ腹筋で鋭い脚先をがっちり固定し、ヤクザキックをお見舞い。
残りの脚でガードしながらも吹き飛ぶ土蜘蛛から目を離し、続いてずっと片手で掴んでいた槍を引っ張る。
万力によって引き寄せられた巨体に、腹パン。
「むおっ!?」
普通なら、どこぞの神殿騎士よろしくぶっ飛ばされるのがオチだ。
しかし、目の前の巨体は他と一味も二味も違う。
直前で盛り上がった筋肉が九尾の狐の一撃を弾いた。
思わずたたらを踏む九尾の狐。
一旦距離を取ろうとバックステップで下がるが、数歩行った時点で異変に気がつく。
辺りを漂うのは凍てつく冷気だ。
次の瞬間、パキパキッ!と一瞬にして膝まで氷が覆った。
しかもただの氷ではなく、妖力によってその強度を限界まで引き上げられた鋼鉄の氷だ。
「〈桃源洞裡〉"氷燐・天黎氷獄蓮"」
紫色の業火とは相対する、絶対零度の息吹である。
足を曲げ、両腕をクロスして防御するとほぼ同時に、真上から落下してきたかかと落としが一閃。
見上げた九尾の狐が捉えたのは、手足が氷による装甲で固められ、なにやら冷気による凍てつく気配を身にまとった猫又の姿。
視線が交差した瞬間、華麗な身のこなしで空中を滑るように回転、九尾の狐の腕を掴み、回避不能の回し蹴りを喰らわせた。
あまりの衝撃に頭部が弾けたようにノックバック。
が、そんな事は気にせず、逆に猫又の腕を絡み取って地面に叩きつける。
苦悶の声と共に粉々に粉砕された氷が宙を舞う。
今の一撃で、九尾の狐は自身を束縛していた氷を粉砕したのだ。
ハンマー代わりに使われた猫又がビキッと青筋を立てる。
もう用済みだと放り投げた猫又に変わって、紅蓮の炎を迸らせながら突っ込んで来たのは酒呑童子。
その足元には仮面を被った四足歩行の虎のような式神がおり。
『グルァアアア!』
虎の式神が咆哮すると、いつの間にやら漂っていた暗雲から雷が九尾の狐めがけて降り注ぐ。
式神を足場に軽々と飛び出すと、未だ痺れて動きの鈍い九尾の狐を一閃。
腹に深い傷を刻み込んだ。
血は流れない。
なぜなら、斬られた瞬間に、刃を覆う灼熱の炎によってその傷を焼かれたから。
出血しない代わりに、えも言えぬ苦痛が九尾の狐を襲う。
常人ならば悲鳴の一つどころか、失神してもおかしくないほどだろう。
いくらスキルまたは能力によって体の修復が出来ると言えど、痛覚は残るのだ。
彼女にとっても、痛いものはやはり痛い。
───────しかし、この程度の痛みでは彼女はビクともしない。
「くくっ、これこそまさに"生きている"と言うやつじゃなぁ!」
ドンッ!と大地を一踏み。
その衝撃によって、周囲に撒き散らされていた抉れた土の塊などが浮かび上がり、続いて放たれた衝撃波によって、拡散弾のように四方八方に飛び散る。
目くらましと攻撃。
その両方を兼ね備えた目の前の光景に、大妖怪達の警戒心が高まる。
「それ」
「ぬっ!」
「もういっちょ」
「ぬぐっ!」
「ほれほれ、もう一発ゆくぞ!」
「ぐおっ!?…………ぐはは、さすがだぜ九尾の狐…………!」
賞賛の言葉を残し、巨体の男、輪入道が膝を付く。
一撃ごとにその重さを増すパンチ。
華奢な肉体のどこからこれだけのパワーが出るのだろう。
「"水刃"」
トドメを刺そうとする九尾の狐と輪入道の間に、水飛沫を散らしながら何者かが割って入る。
放たれた剣閃によって地面がヒビ割れ、九尾の狐は強制的に距離を取らされた。
「っ、お嬢!」
「……………一旦下がって。あなたの力は後で必要」
「すまねぇな、お嬢」
「…………ん」
"お嬢"と呼ばれる銀髪の少女。
しかしその可愛げのある見た目に反して、内包する妖気はこの場において二番目に大きい。
つまり、九尾の狐の次に多い妖気を──────。
ガギンッ、ギンッ、ガガガガッ!!
二人の間で、激しい剣撃が繰り広げられる。
片方は剣と言っても手刀な訳だが。
至近距離での鍔迫り合いの後、不意に八岐大蛇の重心が後ろに傾く。
「"オロチ"」
視界を覆うように九尾の狐に迫るのは、蛇型の式神"オロチ"。
八つの蛇が九尾の狐に絡みつき、視界と動きを一時的に封じた。
蛇の筋肉は実に力強い。
さらに高位の式神、妖力による強化もあるとなると、並大抵の力では動くことさえ叶うまい。
オマケに。
「"時間切れ"っ!」
「これはっ…………座敷わらしめ………!」
のしかかるは圧倒的重力。
座敷わらしとの遊びをミスった代償として、局所的に何倍にもなった重力によって、九尾の狐の体がメキメキと地面にめり込む。
さらにだ。
「"神速・風魔の陣"」
全てを貫いて、渦巻く疾風をその身に宿した大天狗の槍が九尾の狐の片腕を穿つ。
"オロチ"は霧のように霧散して八岐大蛇の元に戻り、重力は解除。
ギリギリと手のひらと二の腕を貫通した槍を握り返し、大天狗を睨みつける。
「妾の肉体を貫くとは……………その強さ、誇って良いぞ」
「否。我はまだ未熟だ」
さらに回転を加え、疾風による加速も足して九尾の狐を弾き飛ばす。
これだけの妖力を込め、他の大妖怪の手助けもあってようやくこの一撃。
一応言っておくが、大天狗は決して未熟などではない。
むしろ強さを求め、武者修行の旅に出ただけあって、その強さは誰しも認めるほどである。
九尾の狐がおかしいのだ。
尋常ならざる肉体の強度、妖力の大きさ、フィジカルの強さ。
まさに神が造形した最高傑作の肉体と言われても違和感は無い。
九尾の狐が着弾した場所からドゴォンッ!と土煙が巻き上げられ、その中心から捻れるように拡散。
向かい合わせた手のひらの間に集束させた妖力がスパークし、あらゆるものを寄せ付けまいと唸り声を上げる。
「【神羅万壊】!」
逆さ三日月のように裂けた、彼女の凶悪な笑みと言葉によって妖術のトリガーが引かれた。
いつぞやの武士相手の時とは比べ物にならない、超広範囲を対象とした【神羅万壊】。
しかし術の発動までのタイムラグは全くと言って良いほど大差が無く、ここでも九尾の狐のセンスが光る。
大地が砕け、その破片が飛び散り、大気が悲鳴を上げる。
解き放たれた圧倒的な衝撃波がビリビリと荒野に響き渡り、辺り一帯をこれでもかと破壊の渦で呑み込んだ。
理不尽なまでの力の暴力だ。
…………とは言え、そこはさすが大妖怪の精鋭達と言うべきか。
今の妖術による負傷はあっても、死者は一人も出なかった。
「"雷猫────」
「"水刃────」
幾重もの雷が迸り、その隙間を縫うように水飛沫を散らす流水が通り抜け。
「"天衝雷轟"!」
「"天之叢雲"っ………!」
雷を纏った猫又による一撃が胸元に傷を残し、八岐大蛇による流麗な剣撃が肌を撫でた。
駆け抜けた先、九尾の狐の背後で一回転の後、地面に着地。
そのまま猫又は再び距離を詰め、遅れて残心を取りながら背後に回った八岐大蛇も後を追う。
ピピッ!と飛び散った鮮血の間を抜け………………違和感に気がつく。
不自然に停滞した血の粒、明らかに物理法則を無視した動きで二人の背後に落下する鮮血。
まさか───────。
「"血晶"」
ザシュザシュッ!!と生々しい音を立てて、血から生成された細い線がまるでビームのように二人の体を貫いた。
よろける猫又に一度目、距離を取ろうとする八岐大蛇に二度目の蹴りをかましてからジャンプ。
バネのようにしなやかな筋肉が遺憾無く発揮され、あっという間に遥か上空へ。
「くふふっ…………妾の力、その身にとくと刻め!」
体を逸らし、真上に掲げた両の手のひらに馬鹿げた大きさの妖力が集束。
ここら一帯を更地にするつもりか?
もはやそれが可能なのは見るまでもない事実であり、同時に大妖怪達の間に戦慄が走る。
「"神滅之焔"!」
その名の通り、神すらも滅ぼしうる妖狐の焔。
紫色に燃え盛るそれは、九尾の狐の手元から離れると共におびただしい光量を発しながら膨れ上がり、暗き大地へと広がっていく。
音も置き去り、静寂の中、しかし確実な絶望を乗せた紫の光が瞬く。
それはまるで、宇宙空間にて発生する超新星爆発のよう。
遅れて、耳をつんざくような轟音。
大地が爆ぜ、あらゆるものを蹂躙し尽くす。
光はやがて何事も無かったかのようにふっ、と消えた。
だが残された爪痕は相当に酷い。
光は消えど止まぬ土煙と頬を焦がすような熱は健在で、蒸発した何かによって巻き起こった風が九尾の狐の髪を忙しなく揺らす。
少し、疲れた様子だろうか。
さすがに大技と呼ぶにふさわしい術を使っただけあって、いくら九尾の狐と言えど多少の疲労感を感じているらしい。
しかし、その瞳は未だギラギラと輝きを失っておらず、確信を持って眼下を見下ろしている。
まだ死んでいない。
確固たる証拠なんて何も無いが、九尾の狐はそう確信していた。
奴らのしぶとさはよく知っているのだ。
──────そしてこの考えは、次の瞬間、正しかったと証明される。
キャリギャリギャリッッ!!!
ボバッ!と白煙を押しのけて、銀色に輝くいくつもの鎖が彼女を捕獲。
見ると、地上にて、血だらけの鵺が式神と協力し鎖を引いていた。
強度も申し分ない、かなり頑丈な鎖だ………………がしかし、"オロチ"に比べれば幾分か下回ってしまう。
「ふんっ!」
鎖を引きちぎり、瞬時に鵺に肉薄。
妖気を纏った拳を叩き込む───────寸前、大天狗が割って入る。
盾にした槍によって直撃は回避したものの、振り抜かれた拳による一撃は相当なもので、勢いを殺しきれず、鵺と大天狗はまとめて地を削りながら弾き飛ばされた。
さて、次はどいつを───────。
九尾の狐が、品定めするような瞳を土煙の向こうに向けようとした時だった。
「皆様、準備が整いましたっ!」
戦場に響き渡る、どの妖怪とも違う女性の声。
準備?
何事だと転じた視線の先で、九尾の狐が捉えたのはあのキツネの獣人。
(どうやって………。いや、それよりもあの陣はなんじゃ!?)
どうしてあれだけの猛攻の中、あの女は生きていられたのか。
"神滅之焔"は近くにいた輪入道やらが防いでやったのだろうが…………。
不思議でならないと言った表情だが、それは女性の足元に展開された陣を目にした途端、綺麗さっぱり吹き飛んだ。
アレはなんだ?
分からない。
しかし、危険なことだけは明確に分かる。
野生の勘が、今まで幾度となく潜り抜けてきた修羅場で培った長年の勘が、激しく警鐘を鳴らしている。
優秀な肉体はすでに反射的に動き出しており、陣を形成する張本人たる女を殺さんと妖気を宿す。
ジャラッ──────。
「ッ!?」
左腕が、ある一定以上前に動かせない。
バランスを崩して体ごと引き戻される最中、唖然と振り返ると、なんと左の手首に何やら血色の鎖が絡みついていたのだ。
血色の鎖は抵抗してもまるでビクともせず、ひたすらにその役目を全うする。
ならば右腕で───────。
ガチンッ!
「ちっ、お主ら………!」
右腕も、もたついている間に同じく血色の鎖によって動きを封じられてしまった。
一本目の犯人、座敷わらしと、二本目の主、猫又を苛立たしげに睨みつける。
なぜこの鎖は切れない?
たった一本、先程のものより細く心もとない鎖だ。
なぜ──────。
突然の出来事に戸惑いを隠せない様子の九尾の狐。
与えてしまった隙は、取り返しがつかないほど大きい。
ジャラジャラと、次々に飛び出してきた血色の鎖が九尾の狐の自由を奪う。
左右の腕、両足、首、腹、荒ぶるしっぽ×2
もはや完全に動きを封じられ、ただその場でもがく事しか出来なかった。
「っ、よもやお主ら………!」
「…………正解」
「私達では、貴方を殺すことは出来ません。ですが…………」
「殺せずとも、封印することは出来るじゃろう?」
封印する?
九尾の狐は信じられなかった。
実は、過去に同じことを試みた陰陽師が居たのだ。
しかし、従来の封印術では九尾の狐の妖力が大きすぎて、キャパオーバーのため封印しきれず、内側からでも容易に破壊が可能だった。
かの陰陽師は結界に長けた随一の実力者。
正直、大妖怪ですら彼の域に至るのは楽では無い。
その彼を超える術を、あの女が扱えると言うのか。
にわかにも信じ難い。
「うふふ。封印するには、何も結界術に頼らなければならない訳じゃないでしょう?」
「とは言っても、君限定の話だけどね~」
「"器の一族"。お前も耳にしたことがあろう」
"器の一族"。
この単語に、九尾の狐がピクリと反応する。
災禍と相反するように生まれる存在。
その身に災禍を宿し、世界に安寧をもたらす守り人の一族。
「そうか、その娘が…………」
決然とした表情の女性。
なぜ彼女がこの場に連れてこられたのか、九尾の狐はやっと理解した。
「くふふ、完敗じゃな………」
心底残念そうに、九尾の狐は体の力を抜いた。
普段の妖艶な雰囲気とは違い、どこか遊び足りない子供のような不満げな表情で肩をすくめる。
九尾の狐の足元に、赤色の陣が展開。
鎖が反応を示したかと思うと、妖怪達の手元を離れて彼女の周りをゆっくりと旋回し始めた。
「今回は妾の負けじゃ。…………が、次はこうはいかんぞ?くくくっ、楽しみにしておれ」
その言葉を最後に、九尾の狐は美しい赤色の光に呑まれる。
"器の一族"による封印術が発動。
その効力を遺憾無く発揮し、見事、大厄災たる九尾の狐をその身に封じこんだ
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