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十九章
平穏の終わり②
しおりを挟む同刻。
「うっ………!?」
バチッ!と押さえ込んでいた力が放電するかのように漏れ出て、その衝撃を受けた白ワンピースの女性は弾かれ地面を転がる。
焼け焦げブスブスと黒い煙を立ち上らせる両手を回復させつつ、額から伝った脂汗を拭いながら女性は何とか立ち上がる。
………ついにこの時が来てしまった。
本当ならもう少し抑え込めるはずだったのに、力を取り戻すのが思ったよりもだいぶ早くて、こちらの抵抗が最後の方はほとんど意味を生していなかった。
見ると、何の変哲もない美しい草原の端から、何やら黒い何かがゾワゾワと侵食しているのが目に入った。
よく目を凝らすとそれは、空間をまるでパズルのピースのように変えながら呑み込む漆黒の闇だった。
あれこそまさに、彼と女性が繰り広げている力の取り合いにおける勢力図だ。
今はまだまだ女性の方が優勢だが、それも時間の問題………。
「長くは持ちそうにありませんが………任せましたよ、マシロ君………!」
回復した腕で、女性は再び抵抗を始めた。
◇◆◇◆◇◆
───────ドンッ!!!!
世界を揺るがす激震が走った。
地震が多いとされる日本に住んでいた頃でさえ感じたことがない程の、強烈な揺れ。
地面ごとシェイクされたかと錯覚してしまいそうな地震に、先程までののんびりした雰囲気は一瞬でぶち壊された。
ノエルの膝枕から急いで起き上がり、二人で支え合いながら焦燥の浮かぶ瞳を空に向ける。
先程まで何の変哲もなかった快晴の空には亀裂が走っていた。
まるで空が巨大なガラス板であるかのように、一部だけに留まっていた亀裂がビシビシッ………と徐々に広がっていく。
激震の瞬間………。
確かに感じたのだ。
あの向こうから這い寄る、とてつもなくおぞましい何かを。
「──────あぶっ、おっと」
突然、背後でズザザザーーッ!と何者かが地面を引きずる音がした。
振り返ると、そこにはおそらくお尻で削ったであろう跡の先で、白衣姿の白髪女性………ソニアが足を組み不満気に眉を顰めていた。
「ソアレ!?」
思わぬ再会に言葉に詰まっていると、先程の揺れもあり未だに考えがまとまらない俺に変わってノエルがソアレに掴みかかった。
その表情は、かつてないほど焦燥に満ちている。
「お前っ、これはどういう事なのだ!?なぜ─────」
「…………君の予想通りさ。原初の悪魔が復活した。すまない、今回は我の責任でもある」
絶句。
原初の悪魔が復活した………?
確かにあれほどの気持ち悪い気配の主の正体がそれなら納得………というかむしろ、このタイミングならそれ以外ありえないだろうが………。
完全にフラグだった。
もはやそんな事を言っている場合では無いと言うのは分かっているが、現実逃避気味な思考が脳裏に浮かぶ。
申し訳なさそうに謝ったソアレは、するりとノエルの体をすり抜けると何も無い空中に腰掛ける。
「時間が無い。手短に話そう」
ソアレから口早に話された内容は、以下の通りだ。
・ついに"原初の悪魔"が復活したという事。
・しかし復活の間際に行使した封印術によって、僅かながら動きを封じることに成功した事。
・奴らが現世に現れるのは、おおよそ三日後という事。
・"原初の悪魔"が率いる軍団は圧倒的で、その戦力は世界全土に分配してもあまりある程だという事。
・"原初の悪魔"は、"別次元の何か"に変貌したという事。
「状況は最悪に近い………。だが、運命を決めつけるには早計だ。そうだろう?」
ソアレの問いに、俺は迷うことなく頷いた。
「ああ。ノエル、行こう。皆にも声をかけなくちゃ」
「…………うむ」
──────第二次聖魔戦争の幕開けまで、残り三日。
短すぎるカウントダウンがスタートした。
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