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10 売買
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挨拶して預言者様の部屋を出て、サーシャとともに自室へと戻った。
サーシャが紅茶を淹れているあいだ、俺はぼーっとしていた。
預言者様か。
人間なのかどうかも分からなかったな。
「どうでした?預言者様とお話した感想は」
「疲れた。人間と話した気がしない」
「預言者様は完全に人間ではありません。精霊が気に入った人間を見初めた時に、人間を通じて顕現されるのです。いわば半分精霊ですね」
あの深紅の瞳が半分精霊だという証なのだろう。ああいう瞳の色は見たことが無い。
本当に異世界に来たんだなぁ。
国を自然災害から守るという意味では預言者様ほど大切な存在は無い。
だが、いまこの国に必要なのは人災から身を守る方法なのだ。
「やっぱり先に軍事だな。軍の責任者と諜報の責任者に会いたい。諸国と対等にならないとあっさり滅びそうな気がしてきた」
「軍の最高責任者は王様です。諜報の最高責任者は私になります」
そんなにエラかったの?いや、国王付けの護衛だったらそれくらいの地位でもおかしくないか。
「他国がこの国を攻めて来る予兆のようなものはある?」
「今のところありませんがいつ来てもおかしくないですね。ですが理由がありません」
資源も少ないし、農地もイマイチのようだものな。たしかに土地を奪ううまみは無い。
「どこかが攻めてきたら隣接する二国から攻められるんだったな。この国にたいして軽率な軍事行動は起こさないか」
いや、なにか見落としがある気がするな。例えば・・・
「隣接する一国と協定を結んだ上で他国に攻め入るということは考えられないか?」
「まったくありえない話では無いですが、目的が分かりません」
「大陸の統一を目論むような王はいないのか?かつて大陸を統一した人間はいないのか?」
王として並び立つ者がいる状況が気に入らない、という人間がいてもおかしくない。
「歴史上そういった人物のことは聞いたことがありませんが・・・そう考えそうな王もいます」
だが・・・最初にこの国が狙われるとは考えづらいな。いつでも勝てる相手などと戦う必要は無い。
とすると、不作や疫病や天災でどこかの国が弱って、いまのパワーバランスが崩れた時に開戦ということになるか。
「いつ来るか分からないが、少なくとも他の国同士での戦争がひとつ終わるまでは猶予は残されているということか。他国に開放されると分かっている最弱国を狙う意味が無いな」
「大陸全体の統一を考えるような王がいるとしたらそうなります。この国の人間の販売も順調のようですし、時間的余裕はまだあると思います」
・・・人間の販売?
「人間を売っているのか?この国では」
「ええ。お天気のせいか食事のせいか、顔も身体も綺麗に育つのでこの国の人間は高く売れるのです。王族や貴族の方じゃないと買えませんね」
美味しい果物みたいな言い方だな。
「礼節を身に着けた一流の女性が売られています。中には男性もいますが。品質の良い彼女たちのおかげでかろうじて国として成り立っているとも言えます。一部はもちろん諜報の人間です」
人身売買については宰相も言わなかったぞ。いや、言えなかったのか。
この国の女性でハーレムを作るために、俺はこの国の国防と利益に協力するのだ。美しい女性を他国に売るなどという話を俺が納得するとは思えなかっただろうな。
「・・・その話、俺に言うなとは命令されなかったのか?」
「時期を見てお伝えするというお話でした。ですがアラヒト様が気づくまで時間の問題だったでしょう。長年利益を上げている商材です。国の人間なら誰でも知っている話でしたので」
貧困がスパイラルしてしまっているんだな。人身売買が常態化しているのか。
いや、もっと早く気づけたはずだ。
これだけ人間が美しいのだ。
お金を払ってでも欲しいと思う人間は居るだろう。むしろほんの百年前までは、俺が居た世界でも労働力や性の対象として売られたりしていた。今でもどこかで売っているだろう。
女性と寝ることが人生最大の娯楽だった俺でも、人身売買と聞くと少し気分が悪くなる。
女性は嫌いな相手とのセックスではうまくイケない。つまるところパートナーへの好意があってこそ女性はセックスを楽しめるのだ。単純に歪んだ性癖のためだけに美しい女性が好意を持っていない男性に消費されるというのは・・・なんだかなぁ・・・
いや俺もあてがわれた女と寝てるんだけれど。
「人身売買・・・いや、人間の販売というのはいつから始まっていたんだ?」
「国が落ちぶれる頃から頻繁になったと聞いています。それ以前にもあったでしょうが国庫に入るようになったのは私の親くらいの世代からですね」
ざっくり20年というところか。
抱かれたくもない男に抱かれるために、こんな美しい人間が売られてしまうというのか。
抱いて抱かれてという関係にならないと分からない人間関係があることくらいは分かっているが、それと人身売買は話が別だ。男女の関係に金銭や国家間の売買が絡むとなると話はよりややこしくなってくるな。国が絡んでいなくても困窮すれば自分を売り物にしようとする女性も出てくるだろう。もちろん男娼もだ。完全に女性の身柄を国家が管理するなどということは不可能か。
ごちゃまぜの感情と同時に、なんだか無性に女の身体が欲しくなってきた。
サーシャが紅茶を淹れているあいだ、俺はぼーっとしていた。
預言者様か。
人間なのかどうかも分からなかったな。
「どうでした?預言者様とお話した感想は」
「疲れた。人間と話した気がしない」
「預言者様は完全に人間ではありません。精霊が気に入った人間を見初めた時に、人間を通じて顕現されるのです。いわば半分精霊ですね」
あの深紅の瞳が半分精霊だという証なのだろう。ああいう瞳の色は見たことが無い。
本当に異世界に来たんだなぁ。
国を自然災害から守るという意味では預言者様ほど大切な存在は無い。
だが、いまこの国に必要なのは人災から身を守る方法なのだ。
「やっぱり先に軍事だな。軍の責任者と諜報の責任者に会いたい。諸国と対等にならないとあっさり滅びそうな気がしてきた」
「軍の最高責任者は王様です。諜報の最高責任者は私になります」
そんなにエラかったの?いや、国王付けの護衛だったらそれくらいの地位でもおかしくないか。
「他国がこの国を攻めて来る予兆のようなものはある?」
「今のところありませんがいつ来てもおかしくないですね。ですが理由がありません」
資源も少ないし、農地もイマイチのようだものな。たしかに土地を奪ううまみは無い。
「どこかが攻めてきたら隣接する二国から攻められるんだったな。この国にたいして軽率な軍事行動は起こさないか」
いや、なにか見落としがある気がするな。例えば・・・
「隣接する一国と協定を結んだ上で他国に攻め入るということは考えられないか?」
「まったくありえない話では無いですが、目的が分かりません」
「大陸の統一を目論むような王はいないのか?かつて大陸を統一した人間はいないのか?」
王として並び立つ者がいる状況が気に入らない、という人間がいてもおかしくない。
「歴史上そういった人物のことは聞いたことがありませんが・・・そう考えそうな王もいます」
だが・・・最初にこの国が狙われるとは考えづらいな。いつでも勝てる相手などと戦う必要は無い。
とすると、不作や疫病や天災でどこかの国が弱って、いまのパワーバランスが崩れた時に開戦ということになるか。
「いつ来るか分からないが、少なくとも他の国同士での戦争がひとつ終わるまでは猶予は残されているということか。他国に開放されると分かっている最弱国を狙う意味が無いな」
「大陸全体の統一を考えるような王がいるとしたらそうなります。この国の人間の販売も順調のようですし、時間的余裕はまだあると思います」
・・・人間の販売?
「人間を売っているのか?この国では」
「ええ。お天気のせいか食事のせいか、顔も身体も綺麗に育つのでこの国の人間は高く売れるのです。王族や貴族の方じゃないと買えませんね」
美味しい果物みたいな言い方だな。
「礼節を身に着けた一流の女性が売られています。中には男性もいますが。品質の良い彼女たちのおかげでかろうじて国として成り立っているとも言えます。一部はもちろん諜報の人間です」
人身売買については宰相も言わなかったぞ。いや、言えなかったのか。
この国の女性でハーレムを作るために、俺はこの国の国防と利益に協力するのだ。美しい女性を他国に売るなどという話を俺が納得するとは思えなかっただろうな。
「・・・その話、俺に言うなとは命令されなかったのか?」
「時期を見てお伝えするというお話でした。ですがアラヒト様が気づくまで時間の問題だったでしょう。長年利益を上げている商材です。国の人間なら誰でも知っている話でしたので」
貧困がスパイラルしてしまっているんだな。人身売買が常態化しているのか。
いや、もっと早く気づけたはずだ。
これだけ人間が美しいのだ。
お金を払ってでも欲しいと思う人間は居るだろう。むしろほんの百年前までは、俺が居た世界でも労働力や性の対象として売られたりしていた。今でもどこかで売っているだろう。
女性と寝ることが人生最大の娯楽だった俺でも、人身売買と聞くと少し気分が悪くなる。
女性は嫌いな相手とのセックスではうまくイケない。つまるところパートナーへの好意があってこそ女性はセックスを楽しめるのだ。単純に歪んだ性癖のためだけに美しい女性が好意を持っていない男性に消費されるというのは・・・なんだかなぁ・・・
いや俺もあてがわれた女と寝てるんだけれど。
「人身売買・・・いや、人間の販売というのはいつから始まっていたんだ?」
「国が落ちぶれる頃から頻繁になったと聞いています。それ以前にもあったでしょうが国庫に入るようになったのは私の親くらいの世代からですね」
ざっくり20年というところか。
抱かれたくもない男に抱かれるために、こんな美しい人間が売られてしまうというのか。
抱いて抱かれてという関係にならないと分からない人間関係があることくらいは分かっているが、それと人身売買は話が別だ。男女の関係に金銭や国家間の売買が絡むとなると話はよりややこしくなってくるな。国が絡んでいなくても困窮すれば自分を売り物にしようとする女性も出てくるだろう。もちろん男娼もだ。完全に女性の身柄を国家が管理するなどということは不可能か。
ごちゃまぜの感情と同時に、なんだか無性に女の身体が欲しくなってきた。
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