18 / 111
18 市場
しおりを挟む
「・・・きちんと機能しますかね?こういう制度」
「文字の普及ができたら動くと思います。一番の利点はこの仕組みだとものの値段が急騰したり急落したりしづらいということです。国の富が安定しますし、うまく運用すれば国自体の富の量が増えるという利点もあります」
「大飢饉が起きたりした時は?」
「国が食物庫を解放する時により効果的になります。餓死者がまったく出ない保証は無いですが」
「大豊作が起きた時は?」
「安い価格で国が買い取ればいいでしょう。山があるんでしたら、年間を通じて暗くて乾燥した洞窟があると思います。そこに貯蔵しましょう。ジャガイモが高くなったら国が貯蔵しているものを売って安くすればいいんです」
「戦争が起きたら食料品は暴騰しますよね?」
「暴騰します。ですから値段の幅は上限も下限も国が決めて、守らない人間は厳罰に処さなくてはいけません。最悪の状況だと判断したら市場を数日間閉めることも考えるべきでしょう」
質問の数は真剣さの度合いそのものだ。カラシフなら食いつくと思った。
「たとえばギョクを他の国が買い集めたりしたら・・・」
「我が国の富の総量が増えるということです。勝手に買ってくれるんですから。その時はリーベリ金貨でリーベリや他の国のものをたくさん買えばいいです」
ギョクの売りオペをされたら通貨戦争になるが、ギョクの先物を規制すればいい。
「すぐにどうこうできる話では無いですが・・・面白いですね!」
「まぁ文字の普及が先ですから、早くても十年後くらいでしょうかね」
「いや、早ければ三年後にはできると思いますよ。石板がもっと普及すれば書き言葉もあっという間に普及するでしょう。便利ですからね。我々も絵と数字を使って資源や兵の数を把握しようとしているんですよ。紙とやらができたらもっと便利になると思いますね」
石板を見せてもらった。なるほど。象形文字ってこうやってできたんだろうな。絵記号がなんとなく武具や人や食料を表現しているということが分かる。
「私が知っている一番簡単な書き文字を教えた方が良さそうですね」
象形文字では意思疎通に齟齬が生じやすい。それに市場を作るのであれば文字は必須だ。読み書きそろばんがそろって、初めて商売が成立する。
カタカナだな。
発音と50文字をカラシフは一時間ほどで憶えた。
この世界のインテリはとんでもなく優秀だな。
「私も憶えました」
・・・マジで?さすが諜報部の責任者だけあるな。頭脳も運動能力同等に優秀か。
ジャガイモや麦、人や武器といった単語も教えた瞬間に憶えた。仕事で使っている言葉はあっという間に憶えるか。聞かれた単語を片っ端から黒板に書いていくと、今度は教えていない単語も音を頼りに単語にしていった。教えてすぐに憶えられて応用が効く相手と話すのは面白い。カラシフは外国語の素養があるからまだ分かるが、サーシャもとんでもない能力だ。
「いや・・・これ数字や計算と同じくらい力がありますよ!発音できるものはすべて文字になるじゃないですか!」
言われてみるとそうだ。
なにかがあって当然の世界にいると、無いものを発見した人の感動は分かりづらい。
「今まで諜報員に会うことで情報収取をしていましたが、これなら必要な情報を会わずとも伝えられますね」
「手紙、と呼んでいた」
チャットツールやメールが全盛の時代から来て、手紙の有用性を考えることになるとは。
「距離も時間も超越するのか・・・」
「私が居た世界では数千年前の文字が発見されて解読されていました。石に書かれていたものですが・・・」
二人ともその悠久ともいえる時の長さに驚愕している。
「いや・・・石に刻まれたものというのはそういうものか・・・数千年ものちに伝えられるのか・・・」
「あまりに長大すぎて・・・ちょっと想像がつきません・・・」
前に居た世界でも、文字に神性を見出す人たちというのは一定程度いた。数字にもだ。それほどの魅力と魔力とでも呼べるなにかがあるのだろう。人の一生よりも長く機能する記号なのだ。
夜も深まった。王宮の中庭から虫の音が聞こえてくる。
カラシフと話しているとあっという間に時間が過ぎていくな。
「今日のところは王宮で休んでください。あまりに遅くなりましたし」
「そうさせてもらいます」
カラシフはものすごい興奮状態だ。こりゃ今夜は眠れないだろうな。
「市場の件、考えてみてください。法律を作らなくてはどうにも機能しないので」
「さっそく検討委員会を立ち上げて、明日からでも作らせます。新たな徴税源にもなりますからね!」
どう使えばいいのか軽く話を聞いただけで分かったようだ。
アホみたいに儲かった人間や組織からたっぷりと税をむしり取ればいい。
集まった金は軍備にも貧民対策にも教育にも使える。
「文字の普及ができたら動くと思います。一番の利点はこの仕組みだとものの値段が急騰したり急落したりしづらいということです。国の富が安定しますし、うまく運用すれば国自体の富の量が増えるという利点もあります」
「大飢饉が起きたりした時は?」
「国が食物庫を解放する時により効果的になります。餓死者がまったく出ない保証は無いですが」
「大豊作が起きた時は?」
「安い価格で国が買い取ればいいでしょう。山があるんでしたら、年間を通じて暗くて乾燥した洞窟があると思います。そこに貯蔵しましょう。ジャガイモが高くなったら国が貯蔵しているものを売って安くすればいいんです」
「戦争が起きたら食料品は暴騰しますよね?」
「暴騰します。ですから値段の幅は上限も下限も国が決めて、守らない人間は厳罰に処さなくてはいけません。最悪の状況だと判断したら市場を数日間閉めることも考えるべきでしょう」
質問の数は真剣さの度合いそのものだ。カラシフなら食いつくと思った。
「たとえばギョクを他の国が買い集めたりしたら・・・」
「我が国の富の総量が増えるということです。勝手に買ってくれるんですから。その時はリーベリ金貨でリーベリや他の国のものをたくさん買えばいいです」
ギョクの売りオペをされたら通貨戦争になるが、ギョクの先物を規制すればいい。
「すぐにどうこうできる話では無いですが・・・面白いですね!」
「まぁ文字の普及が先ですから、早くても十年後くらいでしょうかね」
「いや、早ければ三年後にはできると思いますよ。石板がもっと普及すれば書き言葉もあっという間に普及するでしょう。便利ですからね。我々も絵と数字を使って資源や兵の数を把握しようとしているんですよ。紙とやらができたらもっと便利になると思いますね」
石板を見せてもらった。なるほど。象形文字ってこうやってできたんだろうな。絵記号がなんとなく武具や人や食料を表現しているということが分かる。
「私が知っている一番簡単な書き文字を教えた方が良さそうですね」
象形文字では意思疎通に齟齬が生じやすい。それに市場を作るのであれば文字は必須だ。読み書きそろばんがそろって、初めて商売が成立する。
カタカナだな。
発音と50文字をカラシフは一時間ほどで憶えた。
この世界のインテリはとんでもなく優秀だな。
「私も憶えました」
・・・マジで?さすが諜報部の責任者だけあるな。頭脳も運動能力同等に優秀か。
ジャガイモや麦、人や武器といった単語も教えた瞬間に憶えた。仕事で使っている言葉はあっという間に憶えるか。聞かれた単語を片っ端から黒板に書いていくと、今度は教えていない単語も音を頼りに単語にしていった。教えてすぐに憶えられて応用が効く相手と話すのは面白い。カラシフは外国語の素養があるからまだ分かるが、サーシャもとんでもない能力だ。
「いや・・・これ数字や計算と同じくらい力がありますよ!発音できるものはすべて文字になるじゃないですか!」
言われてみるとそうだ。
なにかがあって当然の世界にいると、無いものを発見した人の感動は分かりづらい。
「今まで諜報員に会うことで情報収取をしていましたが、これなら必要な情報を会わずとも伝えられますね」
「手紙、と呼んでいた」
チャットツールやメールが全盛の時代から来て、手紙の有用性を考えることになるとは。
「距離も時間も超越するのか・・・」
「私が居た世界では数千年前の文字が発見されて解読されていました。石に書かれていたものですが・・・」
二人ともその悠久ともいえる時の長さに驚愕している。
「いや・・・石に刻まれたものというのはそういうものか・・・数千年ものちに伝えられるのか・・・」
「あまりに長大すぎて・・・ちょっと想像がつきません・・・」
前に居た世界でも、文字に神性を見出す人たちというのは一定程度いた。数字にもだ。それほどの魅力と魔力とでも呼べるなにかがあるのだろう。人の一生よりも長く機能する記号なのだ。
夜も深まった。王宮の中庭から虫の音が聞こえてくる。
カラシフと話しているとあっという間に時間が過ぎていくな。
「今日のところは王宮で休んでください。あまりに遅くなりましたし」
「そうさせてもらいます」
カラシフはものすごい興奮状態だ。こりゃ今夜は眠れないだろうな。
「市場の件、考えてみてください。法律を作らなくてはどうにも機能しないので」
「さっそく検討委員会を立ち上げて、明日からでも作らせます。新たな徴税源にもなりますからね!」
どう使えばいいのか軽く話を聞いただけで分かったようだ。
アホみたいに儲かった人間や組織からたっぷりと税をむしり取ればいい。
集まった金は軍備にも貧民対策にも教育にも使える。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる