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38 初陣
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「アラヒトさんお待ちしておりました!こちらへどうぞ!」
「うん」
以前にリーベリの国境を見に行った時に居た将校が俺を待っていた。兵たちが殺気立っているなぁ。
王宮から国境の砦までは街道が作られたおかげで速く移動できるようになった。一部とはいえ国内で高速移動ができるようになったのは大きい。この街道を使っておそらく後詰もやって来るだろう。
「おお、アラヒト!久しぶりだな!」
王様だ。上機嫌だな。
「お久しぶりです」
「今日こそチュノスを叩けるぞ!さすがにお前も止めはしまい!」
「王様が戦うことで兵たちの士気も上がるでしょう」
とは言ってみたものの、殺気だってはいるが士気がイマイチ上がっていない。さっきまでたっぷりとメシを食って酒を飲んでいたのに、いきなりボロ負けした相手と戦争だもんな。そりゃ胸中複雑ですわ。
「アラヒトさん、こちらの幕舎の方へどうぞ」
ムサエフ将軍に望楼近くの幕舎へと案内された。王とは違い落ち着いて見えるな。
「街道も考えものですな。あまり急ぐと馬のひづめが痛んでしまいます」
蹄鉄が必要になるのか。そこまでは考えていなかったな。
「ですが後詰が早く到着しやすくなります。試してみて有用なものだと分かりましたよ」
「伝令!チュノス重装歩兵部隊来ます!」
さて。武器も作戦も機能してくれればいいけれどな。俺もサーシャも鎧なんか着ていない。失敗したらそこで終了だ。
「よし。クロスボウ隊用意!敵の足が鈍ったら各個に撃て!」
何度も試験は繰り返した。あれ以上に鉄鎧を重く厚くすると動けないはず。矢で貫ぬけるはずだ。
落ち着け、俺。とは思っても初陣で新しい武器では胃が重くなる。料理を食べ過ぎたかなぁなどと場にそぐわないことを考えてしまう。
望楼から見える敵兵の動きが遅くなった。粘土と水が効いたのか。前衛が後方から追い立てられているが、足場が悪くて進めない。と同時にクロスボウが発射された。俺は指で小さな穴を作って遠方を覗く。
よっしゃ、クロスボウが効いてるぞ。
「完全にナメてかかって来ていましたね。物見すら来ないまま戦場に来るなど・・・」
「諜報部もチュノスと思われる相手を片っ端から潰していきましたからね。わが国をナメ切った兵など皆殺しにしてやりましょう」
サーシャこええよ。
しかし、戦争かこれ?
遠距離から狙撃して人が崩れ落ちてゆく。命のやりとりをしている実感がまるで無いな。的当ての遊びのような感覚だ。
ん?うおっ!
「チッ!あいつら味方を踏み台にして超えてきたぞ!」
えげつねぇな。だがそれで200m以上の距離を超えて来られるか?
「馬鹿みたいに演習を繰り返してきたんです。負ける要素がありません。連弩用意!射程に入ったら各個に撃て!」
味方を踏み台や盾にしつつ、まだ前進してくる。
が、連弩が使われることは無かった。クロスボウの射程に入った敵は八割方的中させているからだ。単純計算で三秒に二発的中。60丁のクロスボウを三つの隊に分けて20人。一分間に40×20=800本の弓での狙撃だ。すべて的中すれば五分で四千人を戦闘不能にできる。いま攻めてきている敵は五千もいないだろう。いいとこ三千程度だ。
三段撃ち、メチャクチャ効果があるな。
「敵兵、撤退していきます!」
「ちっ、なかなか判断が早いな。開門して追撃用意!特殊兵は大板を渡せ!」
ムサエフの指示通りひとつ足の下駄をはいた部隊が門から出ていき、大板を泥の上に渡してゆく。騎馬隊のための花道だ。
ん?敵陣から一騎だけ来たな。
!
こちらの花道を狙って単騎で来たのか?
「ムサエフ。ワシを止めんよな?」
門の近くで待機していた王から声がかかる。
「王の仕事の時間です。ご武運を!」
「おい、そのこん棒を貸せ。あの将は殺さずに捕える」
王が近くの兵からこん棒を借り、門から飛び出した。
敵の馬が速い。特殊兵など目もくれず門まで一直線に向かってくる。
王も単騎で飛び出した。ぶつかる!
敵将校の剣をかいくぐり、王はこん棒の一撃で敵将を倒した。
「歩兵部隊出ろ!王が倒した敵将を捕縛しろ!」
「騎馬隊と重装歩兵出ろ!ワシに続け!」
歓呼の声が聞こえる。今まで一方的にチュノスにボコられてきていたんだ。兵たちの鬱憤が貯まっていたんだろう。
追撃が始まった。これでしばらくはチュノスも攻めては来ないだろう。
見るべきものは見たな。
「サーシャ、帰ろっか?ウチに帰って寝よう」
「アラヒトさん帰られるんですか?ささやかながら戦勝のお祝いがあるんですが・・・」
なんだかお祝いという気分でも無いなぁ。
「なんだか疲れてしまったので帰ります。明日は王城に行って報告を伺います」
微妙に彼らとテンションがあってないんだよなぁ。
ああ・・・そうか。
「これが私の初陣だったんです。自覚している以上に疲れてしまったようです」
「そうだったんですか。ではうちの兵を護衛に付けます。お気をつけて」
人の殺意って疲れるもんなんだな。
「うん」
以前にリーベリの国境を見に行った時に居た将校が俺を待っていた。兵たちが殺気立っているなぁ。
王宮から国境の砦までは街道が作られたおかげで速く移動できるようになった。一部とはいえ国内で高速移動ができるようになったのは大きい。この街道を使っておそらく後詰もやって来るだろう。
「おお、アラヒト!久しぶりだな!」
王様だ。上機嫌だな。
「お久しぶりです」
「今日こそチュノスを叩けるぞ!さすがにお前も止めはしまい!」
「王様が戦うことで兵たちの士気も上がるでしょう」
とは言ってみたものの、殺気だってはいるが士気がイマイチ上がっていない。さっきまでたっぷりとメシを食って酒を飲んでいたのに、いきなりボロ負けした相手と戦争だもんな。そりゃ胸中複雑ですわ。
「アラヒトさん、こちらの幕舎の方へどうぞ」
ムサエフ将軍に望楼近くの幕舎へと案内された。王とは違い落ち着いて見えるな。
「街道も考えものですな。あまり急ぐと馬のひづめが痛んでしまいます」
蹄鉄が必要になるのか。そこまでは考えていなかったな。
「ですが後詰が早く到着しやすくなります。試してみて有用なものだと分かりましたよ」
「伝令!チュノス重装歩兵部隊来ます!」
さて。武器も作戦も機能してくれればいいけれどな。俺もサーシャも鎧なんか着ていない。失敗したらそこで終了だ。
「よし。クロスボウ隊用意!敵の足が鈍ったら各個に撃て!」
何度も試験は繰り返した。あれ以上に鉄鎧を重く厚くすると動けないはず。矢で貫ぬけるはずだ。
落ち着け、俺。とは思っても初陣で新しい武器では胃が重くなる。料理を食べ過ぎたかなぁなどと場にそぐわないことを考えてしまう。
望楼から見える敵兵の動きが遅くなった。粘土と水が効いたのか。前衛が後方から追い立てられているが、足場が悪くて進めない。と同時にクロスボウが発射された。俺は指で小さな穴を作って遠方を覗く。
よっしゃ、クロスボウが効いてるぞ。
「完全にナメてかかって来ていましたね。物見すら来ないまま戦場に来るなど・・・」
「諜報部もチュノスと思われる相手を片っ端から潰していきましたからね。わが国をナメ切った兵など皆殺しにしてやりましょう」
サーシャこええよ。
しかし、戦争かこれ?
遠距離から狙撃して人が崩れ落ちてゆく。命のやりとりをしている実感がまるで無いな。的当ての遊びのような感覚だ。
ん?うおっ!
「チッ!あいつら味方を踏み台にして超えてきたぞ!」
えげつねぇな。だがそれで200m以上の距離を超えて来られるか?
「馬鹿みたいに演習を繰り返してきたんです。負ける要素がありません。連弩用意!射程に入ったら各個に撃て!」
味方を踏み台や盾にしつつ、まだ前進してくる。
が、連弩が使われることは無かった。クロスボウの射程に入った敵は八割方的中させているからだ。単純計算で三秒に二発的中。60丁のクロスボウを三つの隊に分けて20人。一分間に40×20=800本の弓での狙撃だ。すべて的中すれば五分で四千人を戦闘不能にできる。いま攻めてきている敵は五千もいないだろう。いいとこ三千程度だ。
三段撃ち、メチャクチャ効果があるな。
「敵兵、撤退していきます!」
「ちっ、なかなか判断が早いな。開門して追撃用意!特殊兵は大板を渡せ!」
ムサエフの指示通りひとつ足の下駄をはいた部隊が門から出ていき、大板を泥の上に渡してゆく。騎馬隊のための花道だ。
ん?敵陣から一騎だけ来たな。
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こちらの花道を狙って単騎で来たのか?
「ムサエフ。ワシを止めんよな?」
門の近くで待機していた王から声がかかる。
「王の仕事の時間です。ご武運を!」
「おい、そのこん棒を貸せ。あの将は殺さずに捕える」
王が近くの兵からこん棒を借り、門から飛び出した。
敵の馬が速い。特殊兵など目もくれず門まで一直線に向かってくる。
王も単騎で飛び出した。ぶつかる!
敵将校の剣をかいくぐり、王はこん棒の一撃で敵将を倒した。
「歩兵部隊出ろ!王が倒した敵将を捕縛しろ!」
「騎馬隊と重装歩兵出ろ!ワシに続け!」
歓呼の声が聞こえる。今まで一方的にチュノスにボコられてきていたんだ。兵たちの鬱憤が貯まっていたんだろう。
追撃が始まった。これでしばらくはチュノスも攻めては来ないだろう。
見るべきものは見たな。
「サーシャ、帰ろっか?ウチに帰って寝よう」
「アラヒトさん帰られるんですか?ささやかながら戦勝のお祝いがあるんですが・・・」
なんだかお祝いという気分でも無いなぁ。
「なんだか疲れてしまったので帰ります。明日は王城に行って報告を伺います」
微妙に彼らとテンションがあってないんだよなぁ。
ああ・・・そうか。
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