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43 学校
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下賜された建物は最近没落した貴族の建物だということだった。掃除をして建物を改修すれば100人から200人くらいは暮らしたり学んだりできるだろう。建物はうちに出入りしている技術者たちに修理をお願いし、家具やベッドや衣服に食料、それに黒板やチョークなどは国から下賜された。
「意外と手慣れてるな」
量が量だけに雪が降る前に間に合うかなと思っていた。
「必要な物資は多いですが、事前の会談の時点で準備を始めていたのでしょう」
こういうのはカラシフが好きそうだもんな。
「教師となる人間もこちらにそろっています」
案内された部屋に行くと妙齢の金髪碧眼女性が十人ほど居た。全員女性だが・・・なるほど。年相応の体脂肪がついてしまっているが、恐ろしく強い。まだ現役で諜報活動がやれるんじゃないのかというレベルで強いな。というか、この年で隠遁できるのがこの世界では普通なのか。まだアラフォーじゃないか。子育ても一段落して、またお国のために働けて嬉しいとのことだった。
「来るかな、アイツら」
「来ると思いますよ。預言者様が今年の冬は冷えると言っていましたから」
昼過ぎからはぼちぼちと人が集まり始めた。
臭いので片っ端から風呂に入れて、片っ端から服を洗濯していく。ゴチャゴチャ言うやつもいたが、風呂に入って小奇麗にしたあとに、制服を着せて香油を垂らしてメシを食わせたら文句は出なくなった。
とりあえず第一陣にだけでも話しておくか。
「ここが君たちの家だ。学ぶ場所でもあり、食事ができる場所でもあり、寝る場所でもある。風呂には入ったな?あれは病気予防のために毎日入ってもらう。綺麗であることで気分も良くなるし、自分が選ばれた人間になった気になるだろう?」
何人かは頷いた。
「さて。帰りたい人間はいるか?」
誰も発言しない。とにかくこの冬だけでもここで過ごそうという気はあるようだ。
「ここで学んでここに住むのであれば、ここの規律に従ってもらう。生きる術を犯罪以外になんとか見つけてくれ」
ピンと来てない顔だな。まぁ数字や文字が分かるようになるだけでも、この国では生きていく世界が広がる。犯罪の芽だけでなく、内戦や反乱の芽をこれで摘めればいいけれどな。
なにか遠くから軍馬らしき音がすると思って目線を音の方向に向けたら・・・あれ・・・王様じゃないのか?
「アラヒト!来たぞ!」
護衛を引き連れて来たのはやはりアレクセイ王だ。
「王自ら・・・どのような御用でしょうか?」
「我が臣民を育てる場所と聞いて気になっていてな。なかなかいい顔つきの子どもたちではないか」
子どもたちがザワついている。そりゃいきなり会ったことも無い自国の王様だものな。
「王様!」
前に会った時に生傷があった少年だ。
「王に直接話しかけるとは不敬だぞ!」
王は護衛を手で制した。
「よい。なんだね?」
「王様はこの国一番の剣の使い手だと噂されてました。俺と勝負してください!」
いきなりかいな。
「ふむ。ワシよりもムサエフ将軍の方が強いがな。まぁアラヒトが作った学校とやらの祝いだ。一本勝負してやろう」
王様は教師に二本の木刀を持ってこさせ、少年に好きな方を選ばせた。
「アラヒト。合図を」
なんだこの展開は。まぁ鼻っ柱の強い小僧には大人の暴力を味わってもらった方がいいか。
「始め!」
声を荒げて王へと切りかかる少年の木刀をあっさりとかわし、王は片手で少年の剣を叩き落とした。
「気合いはいい。素質もある。だが基礎も知らなければ修練も足らぬ。ここできちんと学べばワシの直轄軍に入れる程度にはなるかもしれぬのう」
少年の方はなにをされたかも分かっていないみたいだ。
「王様、わざわざのご指導ありがとうございました」
子どもたちがはっとする。目の前に居る人間がペテルグを統べる本物の王だと実感したようだ。
「ありがとうございました!」
「うむ。我が臣民たちよ。なりたいものを決めなさい。将軍でも宰相でも貴族でも商人でも、なんでもいい。よく学び、よく鍛え、よく考えなさい。王以外ならなんでもなれるぞ!」
「わたし、王妃様にはなれますか?」
「はっはっは!なれるかもな!まだ王子もいないがな!」
すっかりにぎやかになってしまった。王様と戦った少年はヒーロー扱いだ。
やいのやいのと王様は子どもたちに懐かれている。
こういう光景を見ていると、この王にはやはり覇道は似つかわしくないな。いかに武人として優れていても、王道こそが相応しいと改めて感じさせられる。
「王様、そろそろ行かなくては・・・」
「うむ。ワシはそろそろ行かなくてはならぬ。皆々健やかに暮らせ。アラヒト。よくぞこういうものを考えあげた。王家がしっかりと支援してゆくゆえ、存分にやれ」
「ありがとうございます」
王は本当に遊びに来ただけだったのか。
「王様、さようならー!」
「また来てくださーい!」
王がにこやかに振り返って手を振った。
騒ぎが収まらないので、手を叩いて大人しくさせる。
「さて。これでここがどういう場所か分かったと思う。王様がふらっと遊びに来て稽古をつけてくれたり、他にも偉い人たちが国をどう治めるのか教えてくれたりするかもしれない場所だ。そこに並んでいる先生たちの言いつけをよく聞いて生活してくれ」
「はい!」
急に王様が来てどうなることやらと思ったが、結果的に子どもたちが得をする場所だと分かってもらえたようだ。
「意外と手慣れてるな」
量が量だけに雪が降る前に間に合うかなと思っていた。
「必要な物資は多いですが、事前の会談の時点で準備を始めていたのでしょう」
こういうのはカラシフが好きそうだもんな。
「教師となる人間もこちらにそろっています」
案内された部屋に行くと妙齢の金髪碧眼女性が十人ほど居た。全員女性だが・・・なるほど。年相応の体脂肪がついてしまっているが、恐ろしく強い。まだ現役で諜報活動がやれるんじゃないのかというレベルで強いな。というか、この年で隠遁できるのがこの世界では普通なのか。まだアラフォーじゃないか。子育ても一段落して、またお国のために働けて嬉しいとのことだった。
「来るかな、アイツら」
「来ると思いますよ。預言者様が今年の冬は冷えると言っていましたから」
昼過ぎからはぼちぼちと人が集まり始めた。
臭いので片っ端から風呂に入れて、片っ端から服を洗濯していく。ゴチャゴチャ言うやつもいたが、風呂に入って小奇麗にしたあとに、制服を着せて香油を垂らしてメシを食わせたら文句は出なくなった。
とりあえず第一陣にだけでも話しておくか。
「ここが君たちの家だ。学ぶ場所でもあり、食事ができる場所でもあり、寝る場所でもある。風呂には入ったな?あれは病気予防のために毎日入ってもらう。綺麗であることで気分も良くなるし、自分が選ばれた人間になった気になるだろう?」
何人かは頷いた。
「さて。帰りたい人間はいるか?」
誰も発言しない。とにかくこの冬だけでもここで過ごそうという気はあるようだ。
「ここで学んでここに住むのであれば、ここの規律に従ってもらう。生きる術を犯罪以外になんとか見つけてくれ」
ピンと来てない顔だな。まぁ数字や文字が分かるようになるだけでも、この国では生きていく世界が広がる。犯罪の芽だけでなく、内戦や反乱の芽をこれで摘めればいいけれどな。
なにか遠くから軍馬らしき音がすると思って目線を音の方向に向けたら・・・あれ・・・王様じゃないのか?
「アラヒト!来たぞ!」
護衛を引き連れて来たのはやはりアレクセイ王だ。
「王自ら・・・どのような御用でしょうか?」
「我が臣民を育てる場所と聞いて気になっていてな。なかなかいい顔つきの子どもたちではないか」
子どもたちがザワついている。そりゃいきなり会ったことも無い自国の王様だものな。
「王様!」
前に会った時に生傷があった少年だ。
「王に直接話しかけるとは不敬だぞ!」
王は護衛を手で制した。
「よい。なんだね?」
「王様はこの国一番の剣の使い手だと噂されてました。俺と勝負してください!」
いきなりかいな。
「ふむ。ワシよりもムサエフ将軍の方が強いがな。まぁアラヒトが作った学校とやらの祝いだ。一本勝負してやろう」
王様は教師に二本の木刀を持ってこさせ、少年に好きな方を選ばせた。
「アラヒト。合図を」
なんだこの展開は。まぁ鼻っ柱の強い小僧には大人の暴力を味わってもらった方がいいか。
「始め!」
声を荒げて王へと切りかかる少年の木刀をあっさりとかわし、王は片手で少年の剣を叩き落とした。
「気合いはいい。素質もある。だが基礎も知らなければ修練も足らぬ。ここできちんと学べばワシの直轄軍に入れる程度にはなるかもしれぬのう」
少年の方はなにをされたかも分かっていないみたいだ。
「王様、わざわざのご指導ありがとうございました」
子どもたちがはっとする。目の前に居る人間がペテルグを統べる本物の王だと実感したようだ。
「ありがとうございました!」
「うむ。我が臣民たちよ。なりたいものを決めなさい。将軍でも宰相でも貴族でも商人でも、なんでもいい。よく学び、よく鍛え、よく考えなさい。王以外ならなんでもなれるぞ!」
「わたし、王妃様にはなれますか?」
「はっはっは!なれるかもな!まだ王子もいないがな!」
すっかりにぎやかになってしまった。王様と戦った少年はヒーロー扱いだ。
やいのやいのと王様は子どもたちに懐かれている。
こういう光景を見ていると、この王にはやはり覇道は似つかわしくないな。いかに武人として優れていても、王道こそが相応しいと改めて感じさせられる。
「王様、そろそろ行かなくては・・・」
「うむ。ワシはそろそろ行かなくてはならぬ。皆々健やかに暮らせ。アラヒト。よくぞこういうものを考えあげた。王家がしっかりと支援してゆくゆえ、存分にやれ」
「ありがとうございます」
王は本当に遊びに来ただけだったのか。
「王様、さようならー!」
「また来てくださーい!」
王がにこやかに振り返って手を振った。
騒ぎが収まらないので、手を叩いて大人しくさせる。
「さて。これでここがどういう場所か分かったと思う。王様がふらっと遊びに来て稽古をつけてくれたり、他にも偉い人たちが国をどう治めるのか教えてくれたりするかもしれない場所だ。そこに並んでいる先生たちの言いつけをよく聞いて生活してくれ」
「はい!」
急に王様が来てどうなることやらと思ったが、結果的に子どもたちが得をする場所だと分かってもらえたようだ。
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