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94 旅路
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初夏の陽気が心地いい。天気は旅日和だが、今日は俺の股間が痛い。昨日はアンナに二度も搾り取られたからなぁ。アンナ兵器モードを楽しんだ後に馬で遠くまで出かけるという選択は間違っていたかもしれない。
「こうやってアラヒト様と二人で移動するというのも久しぶりのような気がしますね」
「そうだっけ?そうかもね」
言われてみればそうかもしれない。冬場の遠乗りは女性たちを引き連れて日帰りで行ったしな。サーシャと二人だけとなると機密に当たる話もしやすい。リザにもどの程度知らせていいものか分からない話だしな。
「軍用の簡易宿舎があるので、そこを経由しながらラドヴィッツ領へと向かいます」
こうも戦争が起きるような世界では、旅行もままならないか。国家や権力者の庇護が無ければ移動すら難しくなる。乗馬服に各種着替え等の荷物を積んで南へと向かう。道も宿も分からないため、すべてサーシャにお任せだ。軍の護衛なしにサーシャの護衛だけで済むようになったということは、多少は国内が安定してきたということでもあるのだろう。
「例の通貨戦争の件、カラシフの手ごたえはどうだった?」
「できればこの冬にはやりたいようです。ですがムサエフ将軍はチュノスとリーベリを同時に叩くこの作戦に乗り気ではありません。収穫が終わってからチュノスを確実に落としたのちにリーベリを叩くというのが将軍の条件です」
二国を同時に叩くのは上策とは言えないか。チュノス王城攻略が長期化する可能性もあるしな。
「サーシャはどう考える?」
「今回のラドヴィッツ領への視察次第かと。ラドヴィッツ領の力次第で勝ち方が変わってきます」
勝ち方。勝つという点に関しては揺るぎない自信があるようだ。
通貨戦争における勝利、というものはいつ決まるのか?それは通貨が信用されなくなった時だ。
ではいつ信用が消えてなくなるのか?
これは断言ができない。ある日突然に通貨が信用されなくなることもあるし、じわじわと流通しなくなることもある。
「ふつうの戦争となにもかも違うからなぁ」
「勝利条件の設定にカラシフ宰相も悩んでいましたよ」
ふむ。勝利条件か。
「リーベリが滅ぶ必要は必ずしも無いな」
「ペテルグに対して不利益な国家とならなければ良いのではないかと」
少し気楽になったな。同じ戦争をするなら人があまり死なないものがいい。
貨幣の適切な流通量はそのまま貨幣そのものへの信頼へと変わる。金貨をベースにしているのだから、貨幣の鋳造量はリーベリが持っている金の総量で変化する。混ぜ物が増えれば増えるほど、リーベリ金貨は勝手に自滅する。
・・・ん?
技術的な側面を忘れていた。ペテルグが貨幣を作らなくてはいけない可能性もあるのか。仮に鋳造権や鋳造技術が手に入らなかった場合は、リーベリ通貨が不安定になるだけであって、ペテルグにとってたいした利益とはならないかもしれない。基軸通貨が消えるのだから、ペテルグが新たな貨幣を鋳造し流通させなくてはいけない。しかも金や銀、流通しているリーベリ金貨以上の信頼度でだ。
「リタはリーベリ通貨周辺の重要人物のところへ行っているんだったな?」
「ええ。金貨の作り方自体は簡単なのですが、金を溶かせるほどの技術がペテルグにはありません。なにやら燃える黒い石で熱しているようなのですが・・・アラヒト様はご存じでしょうか?」
石炭か・・・いや・・・コークスかな?
「燃える石自体は見たことが無いけれど知識としては知っている。温めると毒を発するけれど、ある程度毒が抜けると高熱を発するようになるはずだ。ドワーフたちも知っているんじゃないのかな」
「帰ったらドワーフたちの集落に寄って、話を聞いてみましょうか」
平和とは次の戦争への準備だとはよくも言ったものだ。チュノス滅亡とリーベリの弱体化が進めば、ペテルグは安泰となり俺のハーレム生活も続く。
ムサエフ同様に俺もイマイチ通貨戦争に乗り切れないのは、チュノスがまだ滅びてはいないという点にあるのだろう。
「マハカムに近いチュノスの名家が、トカイ城攻略の時に出てこなかったろ?それってチュノス王家から処分されなかったのか?」
「実際にマハカムと戦争していましたので無かったようです・・・もしやその家を使うおつもりですか?」
「うーん。次の戦争の時に同じようにマハカムとやりあってくれたら、チュノスの主力部隊だけを考えて援軍については考えなくてもいいんだよね。家として領土と立場さえ残っていれば、協力してもらえるんじゃないかな」
王家というものはこの世界では絶対視されないものなのかもしれない。実際にトカイ城を攻める時に協力してくれたワケだしな。上手く行けば二方面の問題がまとめて片付くか。
「それはマハカムとペテルグとの関係次第ですね。マハカムが協力するかどうか・・・」
マハカムに裏切られる可能性もあるか。
二人で考えるにはこの辺が限界だな。通貨戦争については改めてカラシフと、チュノスとの戦争についてはムサエフと、貨幣鋳造技術に関してはドワーフたちと話し合うしかない。
そういえばサーシャから預かっているチュノス王城の図面もまだ見ていなかった。
「この先に見晴らしのいい丘があるので、そこで昼食にしましょう。アンナが作ってくれました」
王家との顔つなぎ、ラドヴィッツ領自体の力の見極め。
今回の招致については王家と話し合ってから応じても良かったかな。いや・・・たぶんそれでは上手くいかないだろう事情があるのか?なんにせよ行ってみないことには分からないか。
「こうやってアラヒト様と二人で移動するというのも久しぶりのような気がしますね」
「そうだっけ?そうかもね」
言われてみればそうかもしれない。冬場の遠乗りは女性たちを引き連れて日帰りで行ったしな。サーシャと二人だけとなると機密に当たる話もしやすい。リザにもどの程度知らせていいものか分からない話だしな。
「軍用の簡易宿舎があるので、そこを経由しながらラドヴィッツ領へと向かいます」
こうも戦争が起きるような世界では、旅行もままならないか。国家や権力者の庇護が無ければ移動すら難しくなる。乗馬服に各種着替え等の荷物を積んで南へと向かう。道も宿も分からないため、すべてサーシャにお任せだ。軍の護衛なしにサーシャの護衛だけで済むようになったということは、多少は国内が安定してきたということでもあるのだろう。
「例の通貨戦争の件、カラシフの手ごたえはどうだった?」
「できればこの冬にはやりたいようです。ですがムサエフ将軍はチュノスとリーベリを同時に叩くこの作戦に乗り気ではありません。収穫が終わってからチュノスを確実に落としたのちにリーベリを叩くというのが将軍の条件です」
二国を同時に叩くのは上策とは言えないか。チュノス王城攻略が長期化する可能性もあるしな。
「サーシャはどう考える?」
「今回のラドヴィッツ領への視察次第かと。ラドヴィッツ領の力次第で勝ち方が変わってきます」
勝ち方。勝つという点に関しては揺るぎない自信があるようだ。
通貨戦争における勝利、というものはいつ決まるのか?それは通貨が信用されなくなった時だ。
ではいつ信用が消えてなくなるのか?
これは断言ができない。ある日突然に通貨が信用されなくなることもあるし、じわじわと流通しなくなることもある。
「ふつうの戦争となにもかも違うからなぁ」
「勝利条件の設定にカラシフ宰相も悩んでいましたよ」
ふむ。勝利条件か。
「リーベリが滅ぶ必要は必ずしも無いな」
「ペテルグに対して不利益な国家とならなければ良いのではないかと」
少し気楽になったな。同じ戦争をするなら人があまり死なないものがいい。
貨幣の適切な流通量はそのまま貨幣そのものへの信頼へと変わる。金貨をベースにしているのだから、貨幣の鋳造量はリーベリが持っている金の総量で変化する。混ぜ物が増えれば増えるほど、リーベリ金貨は勝手に自滅する。
・・・ん?
技術的な側面を忘れていた。ペテルグが貨幣を作らなくてはいけない可能性もあるのか。仮に鋳造権や鋳造技術が手に入らなかった場合は、リーベリ通貨が不安定になるだけであって、ペテルグにとってたいした利益とはならないかもしれない。基軸通貨が消えるのだから、ペテルグが新たな貨幣を鋳造し流通させなくてはいけない。しかも金や銀、流通しているリーベリ金貨以上の信頼度でだ。
「リタはリーベリ通貨周辺の重要人物のところへ行っているんだったな?」
「ええ。金貨の作り方自体は簡単なのですが、金を溶かせるほどの技術がペテルグにはありません。なにやら燃える黒い石で熱しているようなのですが・・・アラヒト様はご存じでしょうか?」
石炭か・・・いや・・・コークスかな?
「燃える石自体は見たことが無いけれど知識としては知っている。温めると毒を発するけれど、ある程度毒が抜けると高熱を発するようになるはずだ。ドワーフたちも知っているんじゃないのかな」
「帰ったらドワーフたちの集落に寄って、話を聞いてみましょうか」
平和とは次の戦争への準備だとはよくも言ったものだ。チュノス滅亡とリーベリの弱体化が進めば、ペテルグは安泰となり俺のハーレム生活も続く。
ムサエフ同様に俺もイマイチ通貨戦争に乗り切れないのは、チュノスがまだ滅びてはいないという点にあるのだろう。
「マハカムに近いチュノスの名家が、トカイ城攻略の時に出てこなかったろ?それってチュノス王家から処分されなかったのか?」
「実際にマハカムと戦争していましたので無かったようです・・・もしやその家を使うおつもりですか?」
「うーん。次の戦争の時に同じようにマハカムとやりあってくれたら、チュノスの主力部隊だけを考えて援軍については考えなくてもいいんだよね。家として領土と立場さえ残っていれば、協力してもらえるんじゃないかな」
王家というものはこの世界では絶対視されないものなのかもしれない。実際にトカイ城を攻める時に協力してくれたワケだしな。上手く行けば二方面の問題がまとめて片付くか。
「それはマハカムとペテルグとの関係次第ですね。マハカムが協力するかどうか・・・」
マハカムに裏切られる可能性もあるか。
二人で考えるにはこの辺が限界だな。通貨戦争については改めてカラシフと、チュノスとの戦争についてはムサエフと、貨幣鋳造技術に関してはドワーフたちと話し合うしかない。
そういえばサーシャから預かっているチュノス王城の図面もまだ見ていなかった。
「この先に見晴らしのいい丘があるので、そこで昼食にしましょう。アンナが作ってくれました」
王家との顔つなぎ、ラドヴィッツ領自体の力の見極め。
今回の招致については王家と話し合ってから応じても良かったかな。いや・・・たぶんそれでは上手くいかないだろう事情があるのか?なんにせよ行ってみないことには分からないか。
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