異世界マッチョ

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7 マッチョさん、街を散策する

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 起床後に軽くストレッチをする。
 ふむ。軽い筋肉痛はあるが、このカンジだとお昼過ぎには痛みも無くなっているだろう。
 宿の食堂へ行って、オレンジジュースと焼き立てのパンをいただいた。昨日買ったゆで卵は部屋で食べよう。これで朝食にタンパク質と炭水化物と脂質を摂取することができる。
 洗濯物も部屋に置いてあるカゴに入れておけば洗ってもらえるそうだ。まだ服が二組しかないので、非常に助かる。
 「ああ、マッチョさんおはようございます。」
 私は宿に帰ってとっとと寝たが、村長は浴場のあとに軽く一杯ひっかけに行ったらしい。
 「お先に朝食いただきました。」
 「では私も。」
 さて、装備ができるまでやる事が無い。もう少し負荷の高い筋トレを試すにしても、筋肉痛を抱えたままでは魔物退治ができないだろう。全身の痛みが無い万全の状態で挑む必要がある。
 痛みが無い状態?
 鎮痛剤とか、あるいはアレなお薬とか。
 いやいやいや。さすがにこれは無い。筋肉痛こそが筋肉の成長を感じられる喜ばしい痛みだ。
 しかし、いちおう確認だけでもしておいたほうがいいか。魔物にやられた痛みで街に戻れなくなるという可能性も捨てきれない。
 「マッチョさん、今日でお別れですね。私だけではなく、村を助けていただいて本当にありがとうございました。街道の魔物もいなくなりましたし、安心して帰れますよ。」
 村長が目の前にいたんだった。
 「私こそありがとうございました。私ひとりではこの街で道に迷ってましたよ。お金までいただきましたし。」
 「さて、私は村の買い物をしてから帰ります。」
 「私も行ってみていいですか?どんなものが売っているか見てみたいです。」
 「それでは準備が出来次第にでも。私は帰り支度もしないといけないので。」
 そうか。私は明日からこの街で冒険者として一人で戦うのだな。
 とりあえず今日は軽い有酸素運動をしよう。街を歩いて色々と知っておいた方がいいだろう。
 その前にゆで卵だ。タンパク質の摂取について私が忘れるようなら、筋肉の方も私のことを忘れてしまう。

 人がたくさん歩いているという点が、私の知っている街とは違うところだ。
 私は地方都市に住んでいたので、ほとんど人が歩いているところを見る機会が無い。自動車で移動するからだ。
 ましてや荷物を背負って歩いている人など、今までほとんど見る機会が無かったのではないだろうか?
 人が歩いている所というのは平日でも活気がある。
 活気があれば人は集まる。人が集まるからモノもサービスも集まる。
 素晴らしい好循環だ。
 しかしこれだけ大きな街でも、パッと見てすぐに筋トレに役立ちそうなものは無かった。丈夫そうなロープも見つけたが、後日使えそうなものと言えばあれくらいかな。
 食事の方もやはり同様だ。タンパク質を含んだ食料もあるにはあるが、物価が高い。宿に頼んで調理場を借りて、自分で食事管理をしてみようか?いや、これも難しいか。冷蔵庫が無いので食材管理の難易度が格段に上がる。その日に買った食料を、その日のうちに食べきらないといけないのだ。しかも魔物退治をした後にもだ。
 しばらくは外食になるなぁ。ふーむ。
 「うーん、じゃぁそこのオス二羽とメスが二羽で。」
 「へーい、お買い上げありがとうございます。」
 考え事をしていたら村長が買い物をしていた。そういえばさっき塩も買っていたな。歩いている人が集まってくるくらい派手に値引いていたっけ。
 「村長、それニワトリですか?」
 「ええ。魔物が寄り付かなくなったのなら、少しずつ畜産を始めようと思いまして。狩りだけで賄えるかどうかも分かりませんし、街での肉の値段の高さも思い知りましたからねぇ。ガンガン鶏を売りさばいて、ガシガシと儲けますよ!」
 やはり村長はデキる男だ。たったあれだけの飲食で、価格調査だけではなくおそらく肉質についても確認していたのだろう。一人で出歩いていた夜もなにかを調べていたかもしれないな。
 「うまく育ってくれたら、私もたくさん鶏肉を食べたいですねぇ。」
 「マッチョさんでしたらいくらでも村の奢りで食べていただきますぞ!上質なモモ肉あたりをどーんと!」
 「いえ、胸肉でお願いします。新鮮なところをできればハムに加工して。」
 好意はありがたいのだが、脂肪の摂取には気を付けなければ。この街の食料事情では脂質が多めになってしまうだろう。
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