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16 マッチョさん、再会する
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城壁から降りて、城門周辺で状況を説明する。私の斧は鞘ごとギルドの人たちが武器屋さんへ持って行ってくれた。防具のほうも相当にダメージを受けたから、きちんと修理するまでは魔物退治もできないな。
「で、固有種もセンパイが倒したと。報告書に書きづらいなぁ・・・我々が働いてなかったみたいじゃないですか・・・」
「いや、固有種にトドメを刺したのはマッチョの方だ。俺ひとりだったら死んでた。俺の剣がほとんど入らなかったからなぁ。」
なんか唖然とされている。私はけっこう凄いことをやってのけたみたいだ。でもまだ実感が無い。
「いや、マッチョさん。軍を代表して礼を言います。あれがいたらウチの部隊が全滅しかねませんでした。」
「まぁそうだな。」
軍隊がいるのに、なぜ一匹に負けるんだろう。
「軍隊の方が強そうじゃないですか。なんで軍隊が全滅しちゃうんですか?」
「あー、だいたい人間にとって悪いことをするから魔物って言うんだが、たまーに魔法を使うタイプもいるんだ。今回の固有種がそうだな。魔法を使うから魔物だ。で、魔法で強化された魔物はそこらのザコとは違って、よほどの鍛錬を積んだ人間の武器でしかダメージを与えられない。軍隊程度の鍛え方じゃ足りねぇんだよ。ありゃ数でボコるための訓練しか受けてないからな。」
へー、そうなんだ。フェイスさんがヤバい目付で笑顔になるわけだ。
「では今回の魔法は身体強化ですか?」
「たぶんな。あのデカさでけっこうなスピードだったぞ。」
今回のってことは、他の魔法を使う魔物もいるのか。
「城門狙いの戦術といい、頭も良かった。だいたい300から500くらいの規模だったか?統率力もあった。たぶんオークキングで認定されると思う。」
「マジでいたんですね、オークキング・・・」
「いた、というか、出たとか産まれたのかもな。その辺は俺から報告しておく。王都への固有種の運搬と正確なオークの数の確認、やってもらえるか?俺もマッチョもこの通りだし、ギルドの人間だけでは手が足りなくてな。」
うん。この報告が終わったら二人そろって病院行きだ。
「それくらいは我々がやりますよ。歩兵がそろそろ追い付いて来る頃ですからね。」
「でも今回は到着まで早かったですね。狼煙を上げて一時間程度だったんじゃないでしょうか。歩兵を切り離して騎兵だけでソロウに向かうなんて、スクルトさんにしてはずいぶんと大胆に思えますけれど・・・」
「物見からの報告が早かったからですね。振動でふつうの魔物災害じゃないって分かりましたし、センパイの運の無さもよく知っているので、たぶんソロウに向かうと思って最速で来ました。」
「強運だろ。オークキングと戦ってデカい怪我もなく死んでねぇんだ・・・」
「お言葉ですが、オークキングと戦っている時点で強運ではないですよ・・・」
フェイスさんって、こういうめぐり合わせの人なのか・・・
歩兵の人たちもソロウに到着した。調査を終えたら街の周辺で一泊して、駐屯所へと戻るらしい。魔物と戦うのもラクではないけれども、軍属の人たちも大変そうだ。スクルトさんはフェイスさんやルリさんと話している。さて、私は話すこともないし、もう病院に行きたい。
「止まれ!」
「怪しいものではありませんぞ。これはなにがあったのですかな?凄い数の魔物の死体ですな。」
聞き覚えのある声だ。
「あ、マッチョさん!ご無沙汰しています!」
やはりタベルナ村の村長さんだ。なぜ封鎖中の街道を抜けて来られたんだろう?
「・・・街道封鎖って言いましたよね?私・・・」
ルリさんが頭を抱えている。
「連絡ミスか、街道封鎖を伝える馬が見落としたかのどちらかですね・・・きちんと伝えたのですが・・・」ギルドの職員も渋い顔をしている。
「はぁ・・・急ぎ対策を練らなくてはいけませんね・・・」
「ルリ、あんまり根詰めるな。あれだけの大物を仕留めたんだから、しばらくソロウは安全だ。他のラクな仕事を優先しろ。俺みたいにな。」
「たしかに、フェイスさんがいない間に気を張り過ぎてましたね・・・」
ルリさんもおつかれさまです。
「なぜ村長さんがここにいるんですか?」
「商売ですよ。うまいこと養鶏ができたので、お約束のハムも樽いっぱいに持ってきましたぞ!」
肉だ。だがさすがに消耗しすぎて食欲が無い。BCAAがあればいいのだが、異世界にそんな都合のいいものは無い。
(おい、肉だぞ肉!)
(しばらく食ってねぇなぁ・・・末端が食えるような値段じゃないからなぁ。)
(マッチョさんいいなぁ、樽いっぱいのハムか・・・)
「村長さん、そちらのお肉はすべてギルドで買わせていただきます。相場の価格で。」
「そうだな。今日はギルドの奢りだ。みんな食え!んで飲め!ご苦労だった!」
歓声が上がる。肉を連呼する声だ。肉を求める声はいい響きだ。
「私がいただくハムも皆さんで食べてください。」
さらに歓声が上がる。今度はハムコールだ。なんて素直な人たちなのだろう。
「うーん、マッチョさんにぜんぶ食べて頂きたかったんですがねぇ。」
この状況で肉を独り占めしたら、あとでなにをされるか分からない。
「激戦だったので、あまり食欲が無いんですよねぇ。」
あと早く病院に行きたい。
「うん!それなら食べやすい料理がありまずぞ!どこか調理場をお借りできますかな?」
「じゃーギルドの調理場を使ってくれ。じゃぁマッチョ行くぞ、祝杯だ。」
「あの、私、お酒は宗教上の理由で飲めないんですが・・・それに病院に行かなくて大丈夫なんですか?」
「戦場の疲れは酒で吹き飛ばすってのが作法だ。飲めないなら水でも茶でもいいから付き合え。医者ならギルドに呼べばいいだろう。」
付き合うしかないのだろうなぁ・・・
「で、固有種もセンパイが倒したと。報告書に書きづらいなぁ・・・我々が働いてなかったみたいじゃないですか・・・」
「いや、固有種にトドメを刺したのはマッチョの方だ。俺ひとりだったら死んでた。俺の剣がほとんど入らなかったからなぁ。」
なんか唖然とされている。私はけっこう凄いことをやってのけたみたいだ。でもまだ実感が無い。
「いや、マッチョさん。軍を代表して礼を言います。あれがいたらウチの部隊が全滅しかねませんでした。」
「まぁそうだな。」
軍隊がいるのに、なぜ一匹に負けるんだろう。
「軍隊の方が強そうじゃないですか。なんで軍隊が全滅しちゃうんですか?」
「あー、だいたい人間にとって悪いことをするから魔物って言うんだが、たまーに魔法を使うタイプもいるんだ。今回の固有種がそうだな。魔法を使うから魔物だ。で、魔法で強化された魔物はそこらのザコとは違って、よほどの鍛錬を積んだ人間の武器でしかダメージを与えられない。軍隊程度の鍛え方じゃ足りねぇんだよ。ありゃ数でボコるための訓練しか受けてないからな。」
へー、そうなんだ。フェイスさんがヤバい目付で笑顔になるわけだ。
「では今回の魔法は身体強化ですか?」
「たぶんな。あのデカさでけっこうなスピードだったぞ。」
今回のってことは、他の魔法を使う魔物もいるのか。
「城門狙いの戦術といい、頭も良かった。だいたい300から500くらいの規模だったか?統率力もあった。たぶんオークキングで認定されると思う。」
「マジでいたんですね、オークキング・・・」
「いた、というか、出たとか産まれたのかもな。その辺は俺から報告しておく。王都への固有種の運搬と正確なオークの数の確認、やってもらえるか?俺もマッチョもこの通りだし、ギルドの人間だけでは手が足りなくてな。」
うん。この報告が終わったら二人そろって病院行きだ。
「それくらいは我々がやりますよ。歩兵がそろそろ追い付いて来る頃ですからね。」
「でも今回は到着まで早かったですね。狼煙を上げて一時間程度だったんじゃないでしょうか。歩兵を切り離して騎兵だけでソロウに向かうなんて、スクルトさんにしてはずいぶんと大胆に思えますけれど・・・」
「物見からの報告が早かったからですね。振動でふつうの魔物災害じゃないって分かりましたし、センパイの運の無さもよく知っているので、たぶんソロウに向かうと思って最速で来ました。」
「強運だろ。オークキングと戦ってデカい怪我もなく死んでねぇんだ・・・」
「お言葉ですが、オークキングと戦っている時点で強運ではないですよ・・・」
フェイスさんって、こういうめぐり合わせの人なのか・・・
歩兵の人たちもソロウに到着した。調査を終えたら街の周辺で一泊して、駐屯所へと戻るらしい。魔物と戦うのもラクではないけれども、軍属の人たちも大変そうだ。スクルトさんはフェイスさんやルリさんと話している。さて、私は話すこともないし、もう病院に行きたい。
「止まれ!」
「怪しいものではありませんぞ。これはなにがあったのですかな?凄い数の魔物の死体ですな。」
聞き覚えのある声だ。
「あ、マッチョさん!ご無沙汰しています!」
やはりタベルナ村の村長さんだ。なぜ封鎖中の街道を抜けて来られたんだろう?
「・・・街道封鎖って言いましたよね?私・・・」
ルリさんが頭を抱えている。
「連絡ミスか、街道封鎖を伝える馬が見落としたかのどちらかですね・・・きちんと伝えたのですが・・・」ギルドの職員も渋い顔をしている。
「はぁ・・・急ぎ対策を練らなくてはいけませんね・・・」
「ルリ、あんまり根詰めるな。あれだけの大物を仕留めたんだから、しばらくソロウは安全だ。他のラクな仕事を優先しろ。俺みたいにな。」
「たしかに、フェイスさんがいない間に気を張り過ぎてましたね・・・」
ルリさんもおつかれさまです。
「なぜ村長さんがここにいるんですか?」
「商売ですよ。うまいこと養鶏ができたので、お約束のハムも樽いっぱいに持ってきましたぞ!」
肉だ。だがさすがに消耗しすぎて食欲が無い。BCAAがあればいいのだが、異世界にそんな都合のいいものは無い。
(おい、肉だぞ肉!)
(しばらく食ってねぇなぁ・・・末端が食えるような値段じゃないからなぁ。)
(マッチョさんいいなぁ、樽いっぱいのハムか・・・)
「村長さん、そちらのお肉はすべてギルドで買わせていただきます。相場の価格で。」
「そうだな。今日はギルドの奢りだ。みんな食え!んで飲め!ご苦労だった!」
歓声が上がる。肉を連呼する声だ。肉を求める声はいい響きだ。
「私がいただくハムも皆さんで食べてください。」
さらに歓声が上がる。今度はハムコールだ。なんて素直な人たちなのだろう。
「うーん、マッチョさんにぜんぶ食べて頂きたかったんですがねぇ。」
この状況で肉を独り占めしたら、あとでなにをされるか分からない。
「激戦だったので、あまり食欲が無いんですよねぇ。」
あと早く病院に行きたい。
「うん!それなら食べやすい料理がありまずぞ!どこか調理場をお借りできますかな?」
「じゃーギルドの調理場を使ってくれ。じゃぁマッチョ行くぞ、祝杯だ。」
「あの、私、お酒は宗教上の理由で飲めないんですが・・・それに病院に行かなくて大丈夫なんですか?」
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