15 / 133
15 マッチョさん、完全に追い込む
しおりを挟む
私の名前とフェイスさんの名前が何度も歓呼されている。
そうか。私が倒したのか。なんだか実感が湧かないな。
呼吸が落ち着かない。心臓の鼓動も静かにならない。
フェイスさんは早くも呼吸が落ち着いてきた。さすがだな。
「アイツら浮かれすぎだな。まだ300近くはいるぞ。まだ終わってねぇ。」
「大丈夫そうですよ。オークたちは軍の方へ向かっていきましたから。フェイスさん、マッチョさん、おつかれさまでした。」ルリさんが城壁から降りて迎えてくれた。
「状況が見たい。誰か肩を貸してくれ。マッチョ、お前も登ってこい。」
「私も誰か手を貸してください。」
完全に追い込み切った。自力で立てる気がしない。
「あ、俺やります!マッチョさん凄かったです!」見知った顔が肩を貸してくれた。
「ふぉっ、重っ!マッチョさん、斧だけでも置いて行ってもらえませんか?」
右手に斧を持ったままだった。少し硬直して手放しづらい。斧を置いて城壁へと向かった。さすがにあれだけ目立つ斧を盗む人間はいないだろう。
「やるな。一点突破から分断して、一気に包囲戦か。練兵も見事だな。」
「スクルトさんあたりですかね?馬の使い方から見て。ほら、あの重装馬兵の使い方とか。」
「あー、スクルトっぽいな。あの動きは。」
城壁に上がると、ルリさんに肩を預けてフェイスさんが話している。ああ、こういう関係だったのか、この二人。なんだか話しかけづらいな。
あれだけ大変そうに見えたオークの集団が、あっという間に蹴散らされていく。数の力でもあるが、軍という組織自体が強いのだろう。完全に組織された人間集団は、意思を持つひとつの生物に見える。統率されていない集団など敵ではないだろう。
「マッチョ、見てるか?魔物災害ってのは、本来はああやって軍隊で倒すもんなんだ。今回は特別にしんどかっただけだ。」
あれを特別にしんどいの一言で片づけるフェイスさんも、少しおかしい人だと思った。
「明日以降はバキバキだな。カラダの痛みが取れたら王都に行くぞ。さすがに今回の件はグランドマスターに報告する必要がある。お前が倒したあれ、たぶんオークキングだ。」
(オークキング?伝説の?)
(マジで存在してたのかよ。子どもを怖がらせるおとぎ話だと思ってた。)
(つーかマッチョさんハンパねぇな。伝説を倒しちゃったよ・・・)
すごくザワついている。強いとは思ったけれども、ケタ外れに強い魔物だったのか。
「あ、終わりましたね。さすが独立遊撃部隊です。」
「騎馬だけ先行させて来たんだろうな。100もいないぞ。三倍を蹴散らしたか。」
立派な鎧を装備した騎士が、馬に乗って南門へと向かってきた。
「開門!独立遊撃部隊隊長、スクルト中将です!」
「開門しろ!周辺警戒を怠るな!」
軍隊が入ってきた。歓声が上がり、手を上げてスクルト中将がそれに応えた。いちだんと歓声が大きくなる。
「お久しぶりです。センパイ。ルリさんもご無沙汰です。」
「スクルトさん、お久しぶりです。」
「おー、スクルト。いい動きだったな。見てたぞ。」
「ははっ!もと将軍にそこまで言われたら恐縮です。ところで城門近くであれだけの数のオークを、センパイが倒したんですか?200近く倒されてましたけれど・・・」
「俺とコイツな。マッチョっていうウチの新人だ。」
「相変わらず無茶しますね・・・」
「本当に・・・見ている方も気が気じゃないですよ。」
「今回は無茶しなくちゃいけなかったからな。しかしまぁいいタイミングで来てくれて助かった。久しぶりに死ぬかと思った。マッチョ、コイツはスクルト。俺の後輩で、お前の兄弟子ってことになるな。」
私はフェイスさんの弟子になっていたのか。
身長175cm程度、体重70㎏、体脂肪率はやはり15%程度というところだろうか。うーん、私も体脂肪率を上げた方がいいのだろうか?あとでじっくりと考えてみたい。
「マッチョです。初めまして、スクルトさん。」
握手のひとつもしたいところだが、追い込み過ぎで手が上がらない。
「スクルトです。現在の階級は中将で、対魔物用の遊撃部隊を率いています。しょうぐ・・・センパイとは剣や戦術の師匠という関係です。」
先輩と後輩。え、さっき将軍とか言ってた?
「フェイスさん、将軍だったんですか?」
「あー、言ってなかった気がするな。俺もルリも元々は軍属だ。んで冒険者になって、ギルドの管理人になった。」
「今回みたいなこともありますからね。ギルドには緊急の時に指揮ができる元軍属の配置が義務付けられているんですよ。」
へー。だからルリさんもあれだけの腕だったのか。で、この高さの城壁からオークを狙撃してたのか。
・・・絶対に怒らせないようにしよう。斧と弓では勝てる気がしない。
そうか。私が倒したのか。なんだか実感が湧かないな。
呼吸が落ち着かない。心臓の鼓動も静かにならない。
フェイスさんは早くも呼吸が落ち着いてきた。さすがだな。
「アイツら浮かれすぎだな。まだ300近くはいるぞ。まだ終わってねぇ。」
「大丈夫そうですよ。オークたちは軍の方へ向かっていきましたから。フェイスさん、マッチョさん、おつかれさまでした。」ルリさんが城壁から降りて迎えてくれた。
「状況が見たい。誰か肩を貸してくれ。マッチョ、お前も登ってこい。」
「私も誰か手を貸してください。」
完全に追い込み切った。自力で立てる気がしない。
「あ、俺やります!マッチョさん凄かったです!」見知った顔が肩を貸してくれた。
「ふぉっ、重っ!マッチョさん、斧だけでも置いて行ってもらえませんか?」
右手に斧を持ったままだった。少し硬直して手放しづらい。斧を置いて城壁へと向かった。さすがにあれだけ目立つ斧を盗む人間はいないだろう。
「やるな。一点突破から分断して、一気に包囲戦か。練兵も見事だな。」
「スクルトさんあたりですかね?馬の使い方から見て。ほら、あの重装馬兵の使い方とか。」
「あー、スクルトっぽいな。あの動きは。」
城壁に上がると、ルリさんに肩を預けてフェイスさんが話している。ああ、こういう関係だったのか、この二人。なんだか話しかけづらいな。
あれだけ大変そうに見えたオークの集団が、あっという間に蹴散らされていく。数の力でもあるが、軍という組織自体が強いのだろう。完全に組織された人間集団は、意思を持つひとつの生物に見える。統率されていない集団など敵ではないだろう。
「マッチョ、見てるか?魔物災害ってのは、本来はああやって軍隊で倒すもんなんだ。今回は特別にしんどかっただけだ。」
あれを特別にしんどいの一言で片づけるフェイスさんも、少しおかしい人だと思った。
「明日以降はバキバキだな。カラダの痛みが取れたら王都に行くぞ。さすがに今回の件はグランドマスターに報告する必要がある。お前が倒したあれ、たぶんオークキングだ。」
(オークキング?伝説の?)
(マジで存在してたのかよ。子どもを怖がらせるおとぎ話だと思ってた。)
(つーかマッチョさんハンパねぇな。伝説を倒しちゃったよ・・・)
すごくザワついている。強いとは思ったけれども、ケタ外れに強い魔物だったのか。
「あ、終わりましたね。さすが独立遊撃部隊です。」
「騎馬だけ先行させて来たんだろうな。100もいないぞ。三倍を蹴散らしたか。」
立派な鎧を装備した騎士が、馬に乗って南門へと向かってきた。
「開門!独立遊撃部隊隊長、スクルト中将です!」
「開門しろ!周辺警戒を怠るな!」
軍隊が入ってきた。歓声が上がり、手を上げてスクルト中将がそれに応えた。いちだんと歓声が大きくなる。
「お久しぶりです。センパイ。ルリさんもご無沙汰です。」
「スクルトさん、お久しぶりです。」
「おー、スクルト。いい動きだったな。見てたぞ。」
「ははっ!もと将軍にそこまで言われたら恐縮です。ところで城門近くであれだけの数のオークを、センパイが倒したんですか?200近く倒されてましたけれど・・・」
「俺とコイツな。マッチョっていうウチの新人だ。」
「相変わらず無茶しますね・・・」
「本当に・・・見ている方も気が気じゃないですよ。」
「今回は無茶しなくちゃいけなかったからな。しかしまぁいいタイミングで来てくれて助かった。久しぶりに死ぬかと思った。マッチョ、コイツはスクルト。俺の後輩で、お前の兄弟子ってことになるな。」
私はフェイスさんの弟子になっていたのか。
身長175cm程度、体重70㎏、体脂肪率はやはり15%程度というところだろうか。うーん、私も体脂肪率を上げた方がいいのだろうか?あとでじっくりと考えてみたい。
「マッチョです。初めまして、スクルトさん。」
握手のひとつもしたいところだが、追い込み過ぎで手が上がらない。
「スクルトです。現在の階級は中将で、対魔物用の遊撃部隊を率いています。しょうぐ・・・センパイとは剣や戦術の師匠という関係です。」
先輩と後輩。え、さっき将軍とか言ってた?
「フェイスさん、将軍だったんですか?」
「あー、言ってなかった気がするな。俺もルリも元々は軍属だ。んで冒険者になって、ギルドの管理人になった。」
「今回みたいなこともありますからね。ギルドには緊急の時に指揮ができる元軍属の配置が義務付けられているんですよ。」
へー。だからルリさんもあれだけの腕だったのか。で、この高さの城壁からオークを狙撃してたのか。
・・・絶対に怒らせないようにしよう。斧と弓では勝てる気がしない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる