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32 マッチョさん、人間王に頼まれる
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冗談のようにマズいプロテインだったが、さすがにこちらからお願いしてもらったものを残すワケにはいかない。ぜんぶ飲み切った。口直しに水が欲しくなる味だ。
「さて、二人とも少し外してくれないか。マッチョに重要な話がある。」
「はい、父上。」
「では失礼します。マッチョさん、後日お話をよろしくお願いします。」
「はい。楽しみにしています。」
わざわざ王宮の人間を外しての会話だ。なんだろう。
「まぁそう固くなるな。ちょっと軍を連れて旅に出てもらいたい。ドワーフ国だ。」
軍を連れての旅などまた剣呑な話だな。リラックスしろというのが無理な話だ。ドワーフ国になぜ軍が必要なのだろうか?
「順を追って話そう。俺とドワーフ王はこれらの機械を通じて交流があるのだが、ドワーフたちとの交流はあまり多くない。まぁ種族が違うのだから交換するもの自体があまり無いということもある。しかし魔物や魔王の脅威が明らかになったのだ。より強い武器や防具はドワーフに頼んで作ってもらうことになる。」
なるほど。武器に防具。それを作ってもらうためにドワーフと話をつけなくてはいけないのか。
「しかし、ドワーフの里に行くにはけっこうな山道を通らなくてはいけなくてな。交流が少なすぎて、街道がほとんど整備されていないままなのだ。魔物も出るし、一般人が通れる道ではない。マッチョには軍を引き連れて、ドワーフ国までの街道整備を頼みたい。まぁ実質的には工兵がやるから、お前が実際に街道を作る必要はない。」
ふむふむ。道に問題があるからドワーフの里まで軍を用いて道を作れと。
「街道整備の話や軍隊が行くことについては、ドワーフ王へ連絡しておく。で、ここからが本題だ。ドワーフ国で野生の牛から畜産に成功したらしい。ドワーフ王を口説いて、その技術者と種牛を我々人間国に持ってきてもらいたい。」
さらに畜産のために人を派遣してほしいと。肉は食べたいが、おそろしく重要な内容だ。
「いくら山道を通るとはいえ、それは私ではなく大臣クラスの外交官の方が行くべきなのではないでしょうか?」
人間国内で余計な敵を作りたくない。ましてや王宮に敵などもってのほかだ。いくら人間王のおぼえがよろしいとは言っても、宮廷での権力闘争などに巻き込まれたら私などひとたまりもなく潰されてしまうだろう。宮廷作法も権謀術策も私は持ち合わていない。特殊な技能を持った人間ということになっているから、ここに居られるのだ。
「ドワーフたちはな、筋肉質な肉体の人間を好むのだ。俺が直接行ければいいのだが、王が直接行くというのも、いろいろと面倒なことでな。ドワーフ王がこちらに来て機械の調子を見るのも、慣例として行っているからやれることであって本来は簡単に来てもらえるものではないのだ。」
なるほど。まるで属国の人間が奉仕に来た、という風に見られるのは一国の王として具合が悪い話だ。
「大臣たちではあまりにカラダが貧相で交渉にすらならないだろう。将軍クラスの人間が行くにしても、交渉に向いているというタイプではないし、お前ほど筋肉質でもない。大きな声では言えないが、あまり賢くないフェイスみたいな人間を想像してもらえればいい。」
賢くないフェイスさんか。ただの戦闘狂だな。あのイった時の目を思い出した。
「で、私が適任であると。大臣や外交官の方々も承知している話なのですよね?それに軍を動かすとなると軍の方からも私になにか圧力があるのではないでしょうか?」
「その辺は心配ない。もともと文官たちはドワーフ国に行きたがらないからな。軍の方も問題ない。お前の強さは知れ渡っているからな。むしろスクルトの中隊が名乗りを上げたぞ。お前とフェイスに助けられたようなものだからな。」
ああ、そういえばフェイスさんが言ってたな。固有種には軍隊が効かないって。
手記の解読作業も途中なのだが、牛が育つまでには時間がかかる。食糧事情というよりもタンパク質事情を早めに解決して、より精強な軍隊を作りたいという気持ちはよく分かる。
しかしこの状況、私はあまりにも王宮に関与しすぎてないだろうか?もめ事に巻き込まれたりしたら、私にはどうする事もできない。
いや、考えすぎか。私もこの世界の人間から見たら戦力のひとつなのだ。役に立っているうちは私に手だしはできないだろう。ややこしそうになったら王都を離れて、また冒険者になればいいだけの話だ。
「それに、ドワーフ達の肉体はマッチョも興味があるんじゃないのか?ソロウ周辺しか知らないのであれば、まだ見たことが無いだろう。デカいぞ。」
なにそれ見たい。
「その仕事、お受けします。」
未知の人種?亜人種?の未知の筋肉だ。
どういうトレーニングをして、どういう発達の仕方をしているのだろう。
昂るんじゃない、大胸筋。落ち着いて一緒に未知の筋肉と出会おう。
「さて、二人とも少し外してくれないか。マッチョに重要な話がある。」
「はい、父上。」
「では失礼します。マッチョさん、後日お話をよろしくお願いします。」
「はい。楽しみにしています。」
わざわざ王宮の人間を外しての会話だ。なんだろう。
「まぁそう固くなるな。ちょっと軍を連れて旅に出てもらいたい。ドワーフ国だ。」
軍を連れての旅などまた剣呑な話だな。リラックスしろというのが無理な話だ。ドワーフ国になぜ軍が必要なのだろうか?
「順を追って話そう。俺とドワーフ王はこれらの機械を通じて交流があるのだが、ドワーフたちとの交流はあまり多くない。まぁ種族が違うのだから交換するもの自体があまり無いということもある。しかし魔物や魔王の脅威が明らかになったのだ。より強い武器や防具はドワーフに頼んで作ってもらうことになる。」
なるほど。武器に防具。それを作ってもらうためにドワーフと話をつけなくてはいけないのか。
「しかし、ドワーフの里に行くにはけっこうな山道を通らなくてはいけなくてな。交流が少なすぎて、街道がほとんど整備されていないままなのだ。魔物も出るし、一般人が通れる道ではない。マッチョには軍を引き連れて、ドワーフ国までの街道整備を頼みたい。まぁ実質的には工兵がやるから、お前が実際に街道を作る必要はない。」
ふむふむ。道に問題があるからドワーフの里まで軍を用いて道を作れと。
「街道整備の話や軍隊が行くことについては、ドワーフ王へ連絡しておく。で、ここからが本題だ。ドワーフ国で野生の牛から畜産に成功したらしい。ドワーフ王を口説いて、その技術者と種牛を我々人間国に持ってきてもらいたい。」
さらに畜産のために人を派遣してほしいと。肉は食べたいが、おそろしく重要な内容だ。
「いくら山道を通るとはいえ、それは私ではなく大臣クラスの外交官の方が行くべきなのではないでしょうか?」
人間国内で余計な敵を作りたくない。ましてや王宮に敵などもってのほかだ。いくら人間王のおぼえがよろしいとは言っても、宮廷での権力闘争などに巻き込まれたら私などひとたまりもなく潰されてしまうだろう。宮廷作法も権謀術策も私は持ち合わていない。特殊な技能を持った人間ということになっているから、ここに居られるのだ。
「ドワーフたちはな、筋肉質な肉体の人間を好むのだ。俺が直接行ければいいのだが、王が直接行くというのも、いろいろと面倒なことでな。ドワーフ王がこちらに来て機械の調子を見るのも、慣例として行っているからやれることであって本来は簡単に来てもらえるものではないのだ。」
なるほど。まるで属国の人間が奉仕に来た、という風に見られるのは一国の王として具合が悪い話だ。
「大臣たちではあまりにカラダが貧相で交渉にすらならないだろう。将軍クラスの人間が行くにしても、交渉に向いているというタイプではないし、お前ほど筋肉質でもない。大きな声では言えないが、あまり賢くないフェイスみたいな人間を想像してもらえればいい。」
賢くないフェイスさんか。ただの戦闘狂だな。あのイった時の目を思い出した。
「で、私が適任であると。大臣や外交官の方々も承知している話なのですよね?それに軍を動かすとなると軍の方からも私になにか圧力があるのではないでしょうか?」
「その辺は心配ない。もともと文官たちはドワーフ国に行きたがらないからな。軍の方も問題ない。お前の強さは知れ渡っているからな。むしろスクルトの中隊が名乗りを上げたぞ。お前とフェイスに助けられたようなものだからな。」
ああ、そういえばフェイスさんが言ってたな。固有種には軍隊が効かないって。
手記の解読作業も途中なのだが、牛が育つまでには時間がかかる。食糧事情というよりもタンパク質事情を早めに解決して、より精強な軍隊を作りたいという気持ちはよく分かる。
しかしこの状況、私はあまりにも王宮に関与しすぎてないだろうか?もめ事に巻き込まれたりしたら、私にはどうする事もできない。
いや、考えすぎか。私もこの世界の人間から見たら戦力のひとつなのだ。役に立っているうちは私に手だしはできないだろう。ややこしそうになったら王都を離れて、また冒険者になればいいだけの話だ。
「それに、ドワーフ達の肉体はマッチョも興味があるんじゃないのか?ソロウ周辺しか知らないのであれば、まだ見たことが無いだろう。デカいぞ。」
なにそれ見たい。
「その仕事、お受けします。」
未知の人種?亜人種?の未知の筋肉だ。
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