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31 マッチョさん、プロテインを飲む
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「父上、こちらにいましたか!」
初めて見る少年だ。私を見て顔色が変わった。
「誰だお前は!ここは王族以外は許可なく入ることができぬ場所だぞ!」
身長140cm、体重40kg、体脂肪率がどうこうというよりも、少年すぎて筋肉が無さすぎる。
「止めぬか。国賓にたいして無礼であろう、アルク。」
・・・国賓って私のことなのだろうか?
「父上がここに連れて来られたのですか?」
「そうだ。王家の宝具の謎を彼が解いてくれたぞ。マッチョ、この子はアルク。私の息子で、この国を継ぐことになる。この部屋もな。」
「マッチョさん失礼しました。アルクと言います。初めまして。」
「アルク君初めまして。マッチョです。」
「アルク様、こちらでしたか。」
また誰かやって来た。王族には見えないな。
「ソフィー、私はそんなマズいものは飲まないぞ!」
「ソフィーまで来たのか。」
「はい。サバスを持ってきました。」
サバス?悪魔でも召喚するのだろうか。
「うむ。きちんと肉体を鍛えたあとには、これを飲まなくてはな。」
サバス。もしかしてプロテインか?人間王が容器を受け取り、液状のものを飲んでいる。
「しっかりと鍛えたあとにこれを飲むことで、王のように立派な肉体になるのですよ。」
「イヤだ!マズいんだものそれ!父上からもソフィーになにか言ってください!」
こんな小さい頃からプロテインを飲むのか。
「アルク君はいくつですか?」
「10才になります。」
まだ小学生じゃないか。
「王様、アルク君にはサバスはまだ早いと思われます。きちんと骨ができてからでないと、あまり効果がありません。」
「ふーむ、そうなのか。ではムリに飲ませることは無いな。」
「やったぁ!」
「王よ、この方は?」
「マッチョだ。城内では国賓に準ずる扱いにしている。」
やっぱり国賓って私のことだったのか。どおりで王城内の道具を簡単に融通してくれるはずだ。
「マッチョ、彼は王宮薬師のソフィー。私の栄養管理や新しい薬の開発をやってくれている。サバスについて説明の必要は無いようだな。」
「初めましてソフィーさん。アルク君の代わりに、私がサバスを飲んでもいいでしょうか?どんな味なのかとても興味があります。」異世界のプロテインだ。こういう状況じゃなければ、まず飲む機会など無い。
「サバスは王室の秘儀です。国賓の方とはいえ王の許しが無ければ私からは出せません。」
「構わんよ。彼はサバスの中身も、我々の秘儀も知っている。私よりも大きなその肉体が示しているだろう。」
大きいと言われて悪い気はしない。
「先ほどはソフィーさんのお仕事に口を出してすみませんでした。ですが、アルク君の肉体ではまだ効果が無いと思います。豆か肉か魚をしっかりと摂取していれば、十分だと思います。」タンパク質の過剰摂取がわずかながら病気になる可能性については黙っておいた。
「そう、なのですか。」
まだ半信半疑のようだ。というか誰だコイツという顔をしている。
「ソフィー、マッチョは異世界人なのだよ。おそらく初代の人間王と似たような世界から来た。宝具の使い方も教えてくれたぞ。」
「世界を変える知恵と能力を持つもの、ですか。本当にそんな人間がいたのですね。」
なんだか過大評価されている。
「私が異世界人だと聞いても信じるのですね。」
「初代の王宮薬師も、初代人間王の時代に王から多くのことを学んだとされています。私は初代人間王が異世界人であったという説を信じます。薬学についても異常に多くの業績を残された方ですからね。マッチョ様が異世界人であるならば、薬や栄養に関するお話を伺いたく存じます。」
「マッチョと呼んでください、ソフィーさん。」
「それではマッチョさんと呼ばせていただきます。」
「私もソフィーさんから、この世界の薬や栄養について教えていただけたら嬉しいです。」
この世界最高の栄養学の権威とお近づきになることが出来た。トレーニングが捗るな。
「マッチョさん。本当に飲むのですか?サバスを。」
わざわざ何度も聞くほどマズいのだろうか?ますます興味が湧いてきた。
「ええ、是非飲ませてください。」
「ではどうぞ。」
手渡された器の中がちらりと見えたが、粉末がダマになっている。飲み口からは薬のような香りがする。がしかし、ここで飲んでおかないと、二度と出会えないだろう。
・・・これはマズい。
本当にマズい。この世界に来てからもっともマズい飲み物だ。
トレーニーの先輩たちから、かつてのプロテインはアホみたいにマズかったと聞いてはいたが、これほどマズいプロテインは飲んだことが無かった。うーん、これ本当に効果があるのだろうか?あまりに味が良くないと効能まで疑ってしまう。
「サバスの味や吸収率については、あとで話し合う必要がありますね。少し改良するだけでも、より効果的になると思いますよ。」
プロテインによる補給が楽しいもので無い、という点がよろしくない。
たとえ至高であるストロベリー味が無いにしても、味と吸収率は他にやりようがあるはずだ。
トレーニングはプロテインも含めて楽しいものでなくてはいけない、と私は思う。
いやしかし、本当にマズいなこれ。
子どもがイヤがるワケだ。
初めて見る少年だ。私を見て顔色が変わった。
「誰だお前は!ここは王族以外は許可なく入ることができぬ場所だぞ!」
身長140cm、体重40kg、体脂肪率がどうこうというよりも、少年すぎて筋肉が無さすぎる。
「止めぬか。国賓にたいして無礼であろう、アルク。」
・・・国賓って私のことなのだろうか?
「父上がここに連れて来られたのですか?」
「そうだ。王家の宝具の謎を彼が解いてくれたぞ。マッチョ、この子はアルク。私の息子で、この国を継ぐことになる。この部屋もな。」
「マッチョさん失礼しました。アルクと言います。初めまして。」
「アルク君初めまして。マッチョです。」
「アルク様、こちらでしたか。」
また誰かやって来た。王族には見えないな。
「ソフィー、私はそんなマズいものは飲まないぞ!」
「ソフィーまで来たのか。」
「はい。サバスを持ってきました。」
サバス?悪魔でも召喚するのだろうか。
「うむ。きちんと肉体を鍛えたあとには、これを飲まなくてはな。」
サバス。もしかしてプロテインか?人間王が容器を受け取り、液状のものを飲んでいる。
「しっかりと鍛えたあとにこれを飲むことで、王のように立派な肉体になるのですよ。」
「イヤだ!マズいんだものそれ!父上からもソフィーになにか言ってください!」
こんな小さい頃からプロテインを飲むのか。
「アルク君はいくつですか?」
「10才になります。」
まだ小学生じゃないか。
「王様、アルク君にはサバスはまだ早いと思われます。きちんと骨ができてからでないと、あまり効果がありません。」
「ふーむ、そうなのか。ではムリに飲ませることは無いな。」
「やったぁ!」
「王よ、この方は?」
「マッチョだ。城内では国賓に準ずる扱いにしている。」
やっぱり国賓って私のことだったのか。どおりで王城内の道具を簡単に融通してくれるはずだ。
「マッチョ、彼は王宮薬師のソフィー。私の栄養管理や新しい薬の開発をやってくれている。サバスについて説明の必要は無いようだな。」
「初めましてソフィーさん。アルク君の代わりに、私がサバスを飲んでもいいでしょうか?どんな味なのかとても興味があります。」異世界のプロテインだ。こういう状況じゃなければ、まず飲む機会など無い。
「サバスは王室の秘儀です。国賓の方とはいえ王の許しが無ければ私からは出せません。」
「構わんよ。彼はサバスの中身も、我々の秘儀も知っている。私よりも大きなその肉体が示しているだろう。」
大きいと言われて悪い気はしない。
「先ほどはソフィーさんのお仕事に口を出してすみませんでした。ですが、アルク君の肉体ではまだ効果が無いと思います。豆か肉か魚をしっかりと摂取していれば、十分だと思います。」タンパク質の過剰摂取がわずかながら病気になる可能性については黙っておいた。
「そう、なのですか。」
まだ半信半疑のようだ。というか誰だコイツという顔をしている。
「ソフィー、マッチョは異世界人なのだよ。おそらく初代の人間王と似たような世界から来た。宝具の使い方も教えてくれたぞ。」
「世界を変える知恵と能力を持つもの、ですか。本当にそんな人間がいたのですね。」
なんだか過大評価されている。
「私が異世界人だと聞いても信じるのですね。」
「初代の王宮薬師も、初代人間王の時代に王から多くのことを学んだとされています。私は初代人間王が異世界人であったという説を信じます。薬学についても異常に多くの業績を残された方ですからね。マッチョ様が異世界人であるならば、薬や栄養に関するお話を伺いたく存じます。」
「マッチョと呼んでください、ソフィーさん。」
「それではマッチョさんと呼ばせていただきます。」
「私もソフィーさんから、この世界の薬や栄養について教えていただけたら嬉しいです。」
この世界最高の栄養学の権威とお近づきになることが出来た。トレーニングが捗るな。
「マッチョさん。本当に飲むのですか?サバスを。」
わざわざ何度も聞くほどマズいのだろうか?ますます興味が湧いてきた。
「ええ、是非飲ませてください。」
「ではどうぞ。」
手渡された器の中がちらりと見えたが、粉末がダマになっている。飲み口からは薬のような香りがする。がしかし、ここで飲んでおかないと、二度と出会えないだろう。
・・・これはマズい。
本当にマズい。この世界に来てからもっともマズい飲み物だ。
トレーニーの先輩たちから、かつてのプロテインはアホみたいにマズかったと聞いてはいたが、これほどマズいプロテインは飲んだことが無かった。うーん、これ本当に効果があるのだろうか?あまりに味が良くないと効能まで疑ってしまう。
「サバスの味や吸収率については、あとで話し合う必要がありますね。少し改良するだけでも、より効果的になると思いますよ。」
プロテインによる補給が楽しいもので無い、という点がよろしくない。
たとえ至高であるストロベリー味が無いにしても、味と吸収率は他にやりようがあるはずだ。
トレーニングはプロテインも含めて楽しいものでなくてはいけない、と私は思う。
いやしかし、本当にマズいなこれ。
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