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35 マッチョさん、ドワーフ王に会う。
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「盛り上がっているところすまんが、ワシらは人間王の使いとしてこちらに来たのじゃ。ドワーフ王に取り次いでもらえないかのう。」
「大親方ー、呼ばれてますよー!」
「作業が終わるまで声をかけるんじゃねぇ!」
「あっ、そうでした・・・すいません・・・」小さい声でドワーフが謝った。
王ではなく、大親方と呼ばれているのか。
「お客人たち、食堂のほうへどうぞ。客人をもてなすようなものは酒と肉くらいしか無いですが。」
「ドワーフ王の仕事が終わるまで、休ませていただこうか、マッチョ君。」
「はい。いただきましょう。」
お酒の方はお断りして、お肉だけいただいた。少し塩気と油が濃いな。私は塩と油を外しながらいただいた。ドロスさんは出されたままの味でムシャムシャ食べて飲んでいる。お酒と合わせるとちょうどいい塩梅なのかもしれない。
「あのー、城外に護衛の方たちがいるので、その人たちにも食事を届けていただけませんか?」
「アルコールは無しで頼む。彼らは哨戒任務中なのでな。」
「お客人。人の里に来て哨戒任務とはずいぶんと無礼な話じゃないですか。」
内政干渉あるいは軍事侵攻の恐れアリと言われても仕方ないか。たしかに穏やかな話じゃない。
「ワシたちが来る前にドワーフ王と人間王とで話はついているはずだ。なによりワシらが街道整理をしている途中でかなりの数のコボルトを追い返したからの。こちらに敵意は無いし、魔物災害の対策の方が優先されるじゃろう。ワシらが魔物を引き連れたようなモンだからのう。城内に入ってきたのが我々二人であるということを誠意として受け取ってほしい。なんならワシらを拘束しても構わん。」
さすがドロスさん、腹が座っている。でも私たちは拘束されちゃうのか。
「うーん、その話は聞いてないんですけれどねぇ。魔物災害が来るとまで言われちゃうと・・・まぁ大親方が判断しますよ。」
しぶしぶ受け入れたが納得はしていないというカンジだ。
最初からちょっと印象がよろしくないぞ。大丈夫なのかなぁ。
ドワーフたちの肉体は頑強そうだが、あまり魅力的な筋肉というカンジではない。
だいたい体脂肪率が20%ほど。BMIも25を超えているというあたりか。筋肉はついているのだが、それと同じくらい脂肪もたっぷりと乗っている。脂質がたっぷりのお肉と、浴びるように飲むお酒で造られた肉体だ。少し人間王に騙された気になってきた。
だが、これくらいの肉体でなければ鉱山労働や鍛治仕事などできないのかもしれない。ずーっと重い道具を振り続け、鍛治仕事に至っては高温の炉や材料と向き合わなくてはいけないのだ。職業的に作られた合理的な肉体なのだろう。濃い塩味もよく汗をかく仕事に必要なのだろう。
「待たせて申し訳なかったな、客人。ドワーフの里長のハイドだ。」
「私はドロス。こちらは大使のマッチョ君だ。」
「初めましてドワーフ王。マッチョです。」
「ドワーフ王ってのは止めてくれないか。見ての通り小さな里でな。大親方とか里長って呼ばれる方が性に合っている。」
「では里長。さっそくじゃが、我々とともに軍が行くことと魔物災害の可能性があることは連絡済みなのか、きちんと確認してもらえるじゃろうか?」
「あー、言ってなかった気がするな。おい、ロイスどうなっている?」
お付きの方に話をしている。ロイスさんか。
「聞いてませんね、里長。大業物への挑戦に夢中だったじゃないですか。」
「あー、スマン。そういうことだ。今から急ぎで人間軍の駐留と哨戒任務に対して許可を出してくれ。それと慰労の食事も出してやってくれ。あ、あとついでにウチの哨戒も強化しておけ。魔物災害とは穏やかな話じゃねぇからな。」
「行ってきます。では私はこれで。」
ロイスさんが仕事をしに行った。ぜんぜん話が通ってないじゃないか。
「スマンな。ちょっと仕事に夢中になってしまっててな。」
「よければ大業物とやらの話を、先に伺えませんかの?」
「大業物ってのは、ドワーフの里長が生涯にひとつだけつくる渾身の武器や防具のことだ。ドワーフの里や自分の人生そのものを表現するものだからな。普段なら客人が来たくらいで怒鳴りつけたりしねぇんだが、モノがモノだ。無作法を許してほしい。」
「ほほう、それは気になりますな。完成の折には拝見してもよろしいですかな?」
「もちろんだ。自慢の作品を見たいなら歓迎するよ。」
そんな大事な仕事の時に来てしまったのか。お邪魔なのではないだろうか。
「ところでなにを作っているのか、聞いてもよろしいのでしょうかの?」
「鎧だ。俺たちは体格的に人間の金属鎧を使うことができないからな。できればドワーフを代表する立派な鎧を後世に残してやりたい。」
たしかに人間よりも骨格が太くて横に大きい。立派な志でものを作っているのだな。
「すごく立派そうな鎧ができそうですね。」
「アンタも鎧にはずいぶんと苦労していそうだな。そのデカさでは鎧も特注品だろう。いい仕上がりだ。武器もいい。っていうか、なんなんだその大斧・・・」
デカいと言われて悪い気はしない。ソロウの武器屋さんもドワーフの里長にこれだけ褒められたら本望だろう。今度手紙を書いて教えてあげよう。
「大親方ー、呼ばれてますよー!」
「作業が終わるまで声をかけるんじゃねぇ!」
「あっ、そうでした・・・すいません・・・」小さい声でドワーフが謝った。
王ではなく、大親方と呼ばれているのか。
「お客人たち、食堂のほうへどうぞ。客人をもてなすようなものは酒と肉くらいしか無いですが。」
「ドワーフ王の仕事が終わるまで、休ませていただこうか、マッチョ君。」
「はい。いただきましょう。」
お酒の方はお断りして、お肉だけいただいた。少し塩気と油が濃いな。私は塩と油を外しながらいただいた。ドロスさんは出されたままの味でムシャムシャ食べて飲んでいる。お酒と合わせるとちょうどいい塩梅なのかもしれない。
「あのー、城外に護衛の方たちがいるので、その人たちにも食事を届けていただけませんか?」
「アルコールは無しで頼む。彼らは哨戒任務中なのでな。」
「お客人。人の里に来て哨戒任務とはずいぶんと無礼な話じゃないですか。」
内政干渉あるいは軍事侵攻の恐れアリと言われても仕方ないか。たしかに穏やかな話じゃない。
「ワシたちが来る前にドワーフ王と人間王とで話はついているはずだ。なによりワシらが街道整理をしている途中でかなりの数のコボルトを追い返したからの。こちらに敵意は無いし、魔物災害の対策の方が優先されるじゃろう。ワシらが魔物を引き連れたようなモンだからのう。城内に入ってきたのが我々二人であるということを誠意として受け取ってほしい。なんならワシらを拘束しても構わん。」
さすがドロスさん、腹が座っている。でも私たちは拘束されちゃうのか。
「うーん、その話は聞いてないんですけれどねぇ。魔物災害が来るとまで言われちゃうと・・・まぁ大親方が判断しますよ。」
しぶしぶ受け入れたが納得はしていないというカンジだ。
最初からちょっと印象がよろしくないぞ。大丈夫なのかなぁ。
ドワーフたちの肉体は頑強そうだが、あまり魅力的な筋肉というカンジではない。
だいたい体脂肪率が20%ほど。BMIも25を超えているというあたりか。筋肉はついているのだが、それと同じくらい脂肪もたっぷりと乗っている。脂質がたっぷりのお肉と、浴びるように飲むお酒で造られた肉体だ。少し人間王に騙された気になってきた。
だが、これくらいの肉体でなければ鉱山労働や鍛治仕事などできないのかもしれない。ずーっと重い道具を振り続け、鍛治仕事に至っては高温の炉や材料と向き合わなくてはいけないのだ。職業的に作られた合理的な肉体なのだろう。濃い塩味もよく汗をかく仕事に必要なのだろう。
「待たせて申し訳なかったな、客人。ドワーフの里長のハイドだ。」
「私はドロス。こちらは大使のマッチョ君だ。」
「初めましてドワーフ王。マッチョです。」
「ドワーフ王ってのは止めてくれないか。見ての通り小さな里でな。大親方とか里長って呼ばれる方が性に合っている。」
「では里長。さっそくじゃが、我々とともに軍が行くことと魔物災害の可能性があることは連絡済みなのか、きちんと確認してもらえるじゃろうか?」
「あー、言ってなかった気がするな。おい、ロイスどうなっている?」
お付きの方に話をしている。ロイスさんか。
「聞いてませんね、里長。大業物への挑戦に夢中だったじゃないですか。」
「あー、スマン。そういうことだ。今から急ぎで人間軍の駐留と哨戒任務に対して許可を出してくれ。それと慰労の食事も出してやってくれ。あ、あとついでにウチの哨戒も強化しておけ。魔物災害とは穏やかな話じゃねぇからな。」
「行ってきます。では私はこれで。」
ロイスさんが仕事をしに行った。ぜんぜん話が通ってないじゃないか。
「スマンな。ちょっと仕事に夢中になってしまっててな。」
「よければ大業物とやらの話を、先に伺えませんかの?」
「大業物ってのは、ドワーフの里長が生涯にひとつだけつくる渾身の武器や防具のことだ。ドワーフの里や自分の人生そのものを表現するものだからな。普段なら客人が来たくらいで怒鳴りつけたりしねぇんだが、モノがモノだ。無作法を許してほしい。」
「ほほう、それは気になりますな。完成の折には拝見してもよろしいですかな?」
「もちろんだ。自慢の作品を見たいなら歓迎するよ。」
そんな大事な仕事の時に来てしまったのか。お邪魔なのではないだろうか。
「ところでなにを作っているのか、聞いてもよろしいのでしょうかの?」
「鎧だ。俺たちは体格的に人間の金属鎧を使うことができないからな。できればドワーフを代表する立派な鎧を後世に残してやりたい。」
たしかに人間よりも骨格が太くて横に大きい。立派な志でものを作っているのだな。
「すごく立派そうな鎧ができそうですね。」
「アンタも鎧にはずいぶんと苦労していそうだな。そのデカさでは鎧も特注品だろう。いい仕上がりだ。武器もいい。っていうか、なんなんだその大斧・・・」
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