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42 マッチョさん、高炉についての記述を発見する
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翻訳の下準備に取りかかった。里長が復活するまでロキさんと話すことはできないだろう。
技術的なテキストが多かったので、どうにも分かりづらい。私は技術文書に精通しているワケではないので、図がついているものから始めようと思う。高炉についての記述があれば是非欲しい。というよりも私専用のトレーニングマシンが欲しい。
初代王の手記の翻訳を始めてから気づいたことがある。時代区分についてだ。
だいたい初代王が生きた時代は三つに分かれている。
一つ目は、初代王が人族を統一して初代人間王になる時代。
二つ目は、初代王が魔王を封印した時代。
三つめは、その後の平和な時代だ。
今回のテキストは一つ目の時代に当たるようだ。人族統一前の群雄割拠の時代。
とりあえず時系列に並べ直して、図がついているものを優先。ナンバリングしてファイルする。王都の手記に比べるとたいした量では無かったので、高炉についての文章は簡単に見つかった。
技術的には今の高炉でさらに高熱に耐えられるレンガを作り、そのレンガを用いた高炉でさらに高熱に耐えられるレンガを作る。その繰り返しで高炉ができるらしい。ドワーフにこう説明しても、分かるものなのだろうか。細かい技術的な話は書いていないが、見逃せない走り書きがあった。
”人族の国にも同じ高炉をドワーフ王が作ってくれた。カンチュウに作ってもらったのはいいが、これを扱える人間などいるのだろうか?”
王都に初代王時代の高炉があるのだろうか?ふーむ。王都のことならドロスさんに聞いてみたら分かるかもしれない。少なくともお手本になるものがあるのだとしたら、高炉の復活まで時間もかからないだろう。一歩だけ私はプライベートトレーニングルームに近づいたようだ。
ドロスさんは一汗かいたあとだったようだ。食堂で若いドワーフたちに囲まれて、お茶を飲みながら談笑している。きちんと手加減をしてくれたようだ。なんだかんだでしっかりと外交を心得ている人なのだな。
「ドロスさん、ちょっとお話いいですか?」
「内密の話かね?」
「いえ、このままで大丈夫です。実は王都に里長が言っていた高炉があるようなのですが、心当たりはありませんか?」
「いや、王都にそのようなものは無いはずじゃ。」
初代王が死んでしまったあとのゴタゴタで、壊れてしまったのだろうか。
「そうですか。カンチュウに作ったという記述があったので、まだ残っているのかと思いました。」
「カンチュウ?初代王の時代の話かね?」
「はい。初代王のメモですから。」
「それは今の王都では無いな。当時の王都はソロウの周辺にあった。ソロウ周辺のことをカンチュウと呼んでいたのじゃよ。いまの王都は初代王が人族を統一してから遷都して名称もカンチュウから持ってきたものなのじゃ。」
へぇー。そういえば手記にはタベルナ村の記述もあったな。初代王が転生した場所も意外とタベルナ周辺だったのかもしれない。
「ソロウに高炉ですか。うーん。フェイスさんあたりなら知っていますかね?」
「いや、もうマッチョ君は知っているはずじゃ。背中に背負っている大斧は誰が作ったのかね?」
!!!
あの武器屋さんに、初代王が作った高炉があるのか!
「あのーお話中に申し訳ないんですが・・・」
若いドワーフが話に入って来た。
「なにかね?」
「そのー、マッチョさんの斧、改めて見せてもらえませんか?」
お安い御用だ。
「どうぞ。」
「ふぉっ、重っ!」
若いドワーフがまじまじと私の大斧を見る。
「これウチの炉じゃ作れませんね。技術的に作れないというよりも、高炉の違いだと思います。」
「コイツが言うなら間違いないですよ!若手で一番の腕ですから!」
そうなのか。では決まりだな。初代王の高炉はソロウにある。
・・・ということは、私は気づかぬうちにこの世界で最高レベルの武器を使っていたことになるのか。
固有種相手でも痛まない武器だ。大切に使おう。
「クッソ。飲み物が効いたはいいが、まだ頭が痛ぇ・・・」
里長が大食堂へやって来た。若いドワーフたちがピリっとした。
「マッチョ、飲み物ありがとうな。ああいう薬があるとはなぁ。人族は相変わらずヘンなものからスゲーものまで作りやがる。」
「今夜もやるかね?」
ドロスさんがくいっと酒を飲む動作をした。
「止めておくよ。アンタ相手に連続式など狂気の沙汰だ。」
いい雰囲気だ。
「大親方。マッチョさんの大斧、しっかり見ましたか?どえらいですよ、これ。」
「いや。デカいなと思ったが、大業物だの魔物災害だのでいっぱいいっぱいだったからなぁ。マッチョ、見せてくれるか?」
「ええ。どうぞ。」
「ふぉっ、重っ!」
大親方が真剣な目つきになった。この世界最高の職人の本気だ。大食堂に緊張感が走る。
「・・・マッチョ、これをどこで手に入れた?」
「ソロウという街の武器屋で買いました。」というか、ほぼ貰ったようなものなのだが。
「・・・そこらの武器屋が作れるようなシロモンじゃねぇぞこれ。ウチでもこれは作れねぇ。」
里長にそこまで言わせる出来なのか。
「どうもソロウのその武器屋さんに、例の高炉があるらしくて。そこで作ったのかもしれません。」
「なにっ!本当かっ!」
「ええ。当時のドワーフ王が人間国に高炉を作ってくれたという記述があります。製法も書いていますが、この説明で分かりますかね?」
私が説明を始めると、ドワーフたちは食い入るように説明を聞き始めた。
「・・・なるほどな。理屈上はそれでイケるはずだ。問題は材料だな。あと燃料も分からねぇ。」
「材料や燃料の記述はありませんでしたね。」
「よし。俺もお前たちと一緒にそのソロウとかいう街へ行くぞ。現物を見られるんなら、俺たちでも作れるだろう。大業物の製作も一時中断だな。高炉が新しく手に入るのであれば、いま以上のものが作れるかもしれねぇ。カイト、お前も来い。いい修行になるはずだ。」
「はい!分かりました!」
ドワーフ王みずからがソロウの武器屋さんに行くのか。
技術的なテキストが多かったので、どうにも分かりづらい。私は技術文書に精通しているワケではないので、図がついているものから始めようと思う。高炉についての記述があれば是非欲しい。というよりも私専用のトレーニングマシンが欲しい。
初代王の手記の翻訳を始めてから気づいたことがある。時代区分についてだ。
だいたい初代王が生きた時代は三つに分かれている。
一つ目は、初代王が人族を統一して初代人間王になる時代。
二つ目は、初代王が魔王を封印した時代。
三つめは、その後の平和な時代だ。
今回のテキストは一つ目の時代に当たるようだ。人族統一前の群雄割拠の時代。
とりあえず時系列に並べ直して、図がついているものを優先。ナンバリングしてファイルする。王都の手記に比べるとたいした量では無かったので、高炉についての文章は簡単に見つかった。
技術的には今の高炉でさらに高熱に耐えられるレンガを作り、そのレンガを用いた高炉でさらに高熱に耐えられるレンガを作る。その繰り返しで高炉ができるらしい。ドワーフにこう説明しても、分かるものなのだろうか。細かい技術的な話は書いていないが、見逃せない走り書きがあった。
”人族の国にも同じ高炉をドワーフ王が作ってくれた。カンチュウに作ってもらったのはいいが、これを扱える人間などいるのだろうか?”
王都に初代王時代の高炉があるのだろうか?ふーむ。王都のことならドロスさんに聞いてみたら分かるかもしれない。少なくともお手本になるものがあるのだとしたら、高炉の復活まで時間もかからないだろう。一歩だけ私はプライベートトレーニングルームに近づいたようだ。
ドロスさんは一汗かいたあとだったようだ。食堂で若いドワーフたちに囲まれて、お茶を飲みながら談笑している。きちんと手加減をしてくれたようだ。なんだかんだでしっかりと外交を心得ている人なのだな。
「ドロスさん、ちょっとお話いいですか?」
「内密の話かね?」
「いえ、このままで大丈夫です。実は王都に里長が言っていた高炉があるようなのですが、心当たりはありませんか?」
「いや、王都にそのようなものは無いはずじゃ。」
初代王が死んでしまったあとのゴタゴタで、壊れてしまったのだろうか。
「そうですか。カンチュウに作ったという記述があったので、まだ残っているのかと思いました。」
「カンチュウ?初代王の時代の話かね?」
「はい。初代王のメモですから。」
「それは今の王都では無いな。当時の王都はソロウの周辺にあった。ソロウ周辺のことをカンチュウと呼んでいたのじゃよ。いまの王都は初代王が人族を統一してから遷都して名称もカンチュウから持ってきたものなのじゃ。」
へぇー。そういえば手記にはタベルナ村の記述もあったな。初代王が転生した場所も意外とタベルナ周辺だったのかもしれない。
「ソロウに高炉ですか。うーん。フェイスさんあたりなら知っていますかね?」
「いや、もうマッチョ君は知っているはずじゃ。背中に背負っている大斧は誰が作ったのかね?」
!!!
あの武器屋さんに、初代王が作った高炉があるのか!
「あのーお話中に申し訳ないんですが・・・」
若いドワーフが話に入って来た。
「なにかね?」
「そのー、マッチョさんの斧、改めて見せてもらえませんか?」
お安い御用だ。
「どうぞ。」
「ふぉっ、重っ!」
若いドワーフがまじまじと私の大斧を見る。
「これウチの炉じゃ作れませんね。技術的に作れないというよりも、高炉の違いだと思います。」
「コイツが言うなら間違いないですよ!若手で一番の腕ですから!」
そうなのか。では決まりだな。初代王の高炉はソロウにある。
・・・ということは、私は気づかぬうちにこの世界で最高レベルの武器を使っていたことになるのか。
固有種相手でも痛まない武器だ。大切に使おう。
「クッソ。飲み物が効いたはいいが、まだ頭が痛ぇ・・・」
里長が大食堂へやって来た。若いドワーフたちがピリっとした。
「マッチョ、飲み物ありがとうな。ああいう薬があるとはなぁ。人族は相変わらずヘンなものからスゲーものまで作りやがる。」
「今夜もやるかね?」
ドロスさんがくいっと酒を飲む動作をした。
「止めておくよ。アンタ相手に連続式など狂気の沙汰だ。」
いい雰囲気だ。
「大親方。マッチョさんの大斧、しっかり見ましたか?どえらいですよ、これ。」
「いや。デカいなと思ったが、大業物だの魔物災害だのでいっぱいいっぱいだったからなぁ。マッチョ、見せてくれるか?」
「ええ。どうぞ。」
「ふぉっ、重っ!」
大親方が真剣な目つきになった。この世界最高の職人の本気だ。大食堂に緊張感が走る。
「・・・マッチョ、これをどこで手に入れた?」
「ソロウという街の武器屋で買いました。」というか、ほぼ貰ったようなものなのだが。
「・・・そこらの武器屋が作れるようなシロモンじゃねぇぞこれ。ウチでもこれは作れねぇ。」
里長にそこまで言わせる出来なのか。
「どうもソロウのその武器屋さんに、例の高炉があるらしくて。そこで作ったのかもしれません。」
「なにっ!本当かっ!」
「ええ。当時のドワーフ王が人間国に高炉を作ってくれたという記述があります。製法も書いていますが、この説明で分かりますかね?」
私が説明を始めると、ドワーフたちは食い入るように説明を聞き始めた。
「・・・なるほどな。理屈上はそれでイケるはずだ。問題は材料だな。あと燃料も分からねぇ。」
「材料や燃料の記述はありませんでしたね。」
「よし。俺もお前たちと一緒にそのソロウとかいう街へ行くぞ。現物を見られるんなら、俺たちでも作れるだろう。大業物の製作も一時中断だな。高炉が新しく手に入るのであれば、いま以上のものが作れるかもしれねぇ。カイト、お前も来い。いい修行になるはずだ。」
「はい!分かりました!」
ドワーフ王みずからがソロウの武器屋さんに行くのか。
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