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43 マッチョさん、精霊の話を聞く
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席を外していたロイスさんも大食堂へやって来た。
「里長。ロキが目を覚ましています。話があるそうです。」
「そうか。すぐ行く。アイツ大丈夫だったのか?」
「ドクターによれば、疲労はあるようなのですが少し話す程度なら問題ないとのことです。」
「そうか。ひとまず良かったな。ドロスたちも来い。」
「では遠慮なく。行こうマッチョ君。」
「はい。」
スクルトさんも大食堂へやって来た。
「マッチョさん、お薬ありがとうございました。まだフラフラしてますが・・・」
「精霊の恩寵を受けたドワーフの方が目を覚ましたそうです。スクルトさんもお話を聞きませんか?」
「興味はあるのですが、かなりの疲労があるのでしょう?大人数で行くのも負担になるでしょうし、あとで話を聞かせてください。」
そうだな。相手の状態がイマイチよく分からない。
疲労か。
だったらさっきの回復薬が効くかもしれないな。里長には効いたのだ。少し作って持っていこう。
「10分だけですよ。どういう理屈なのか分かりませんが、筋肉に損傷が見られます。安静にしておくしかないですね。」
筋肉の疲労ならアミノ酸で早く回復できるはずだ。手持ちのハムや疲労回復ドリンクでどうにかなるかもしれない。
「大親方、僕はデカい魔物を倒したんですよね・・・」
「そうだ。あんまり憶えてないのか?」
「憶えていないというよりも、実感が無いというか、夢の中にいたみたいです。」
精霊の恩寵の副作用なのか、あるいは初めての命がけの戦闘の感想なのか判断がつかないな。
「なにが起きてどうなったのか、憶えている範囲でいいから話してくれ。」
「魔物が僕と僕の牛たちを襲ってきて、僕も倒されました。僕はともかく牛たちを殺そうとする魔物が許せませんでした。ずっと自分の無力に悔しい思いをしていました。そうして倒れていたら、声が聞こえたんです。力を貸してあげるって。だから力を貸してくれってその声にお願いしました。」
これが精霊の声か。
「他になにか声は聞こえたか?」
「声よりもビジョンというか、映像が断片的に頭の中に流れ込んできました。あの映像を思い出そうとするとすごく疲れるので、あとでもう一度確認したいと思いますが、魔王を封じたときのドワーフ王の記憶のようでした。まるで戦い方を教えてくれているようでした。」
「で、そのあと固有種を一撃で倒したのか。他に声は聞こえたか?」
「小さな声だったのでちょっと自信が無いのですが、ごめんなさいと言っているように聞こえました。」
精霊が謝ったのか。なにに対して謝ったのだろう。
「里長、そろそろ・・・」
ドクターに促された。これ以上は話を聞けないか。
「ドクター、引き続き頼む。ドロスたちは聞いておきたい話はあるか?」
「ワシらはロキ君が回復してからで構わん。いいな、マッチョ君。」
「はい。まずはドワーフの方々が納得してからお話を伺いましょう。」
ああそうだ。
「ドクター。私の手持ちにハムと疲労回復用の薬があります。ロキさんに与えても大丈夫でしょうか?」
「筋肉系の損傷だから消化しやすいタンパク質があるのならば助かる。疲労回復薬も私が試してから使おうか。」
「いや、もう俺のカラダで試した。効くぞ。ロキ、ゆっくりでいいから確実に治せ。」
ドワーフ王を被験体として使ってしまっていた。もう少し配慮してもよかったな。
「あの里長・・・」
「なんだ?」
「僕の牛はどうなったのでしょうか?」
「何頭かはもう助かりそうも無かったから、俺たちの手で送ってやった。」
「そうですか・・・ダメそうだったもんな・・・」
さすがに戦勝のお祝いとしてみんなで美味しくいただきましたとは言いづらい。
「ふーむ。映像に謝罪か・・・」
ドロスさんが考え込んでいる。全員で大食堂へ移動して、ロキさんの話を整理し始めた。
「精霊の恩寵に関しては、俺らも知らないことばかりだからな。人間国にあるという初代王の手記になにか書かれているかもしれないが。」
「魔物の身体強化魔法を一撃で打ち破ったのだ。その強さに加えて、さらに肉体上の変化まで起こるとはな。ワシもちらりとしか見られなかったが、あれは人間やドワーフが鍛えてどうにかなるような肉体ではない。マッチョ君をさらにデカくして身体強化魔法をかけたようなものじゃからのう。」
「映像のほうはまだ分かる。精霊がロキに戦い方を教えたということなのだろうからな。問題は謝罪のほうだ。いったいなにに対して謝ったというのだ?」
「ワシもそこが気になる。ロイスさん。この件についてもワシが文章を書くので、いちおう王都へハトを送ってくれんかの。」
「剣聖、私が一足先に帰って王に伝えます。今日には帰る予定でしたので。」
「そうか。その方がいいのう。頼むぞスクルト。」
「いくつか気になることがあるのですが、精霊の恩寵を受けた肉体に大きな反動が来るという話は伝わっているのですか?」
「いや、聞いたことが無いな。」
「ワシも知らん。というよりも、精霊の恩寵についても魔王同様に分かっていないことが多いのじゃよ。せいぜい光って強くなる程度しか伝わっておらんな。」
「それに、なぜ里長ではなくロキさんが選ばれたのでしょう?こういうものって王家の血統が導かれるものなのではないのですか?」
人間王はよく王家の務めという言葉を用いる。勇者の末裔でも無いものに、精霊は力を貸すのだろうか?
「ああ。俺らドワーフはな、王を血統では選ばねぇんだ。単純に鍛治の腕のいい奴か、鉱山発掘の山見の目がいい奴が王になる。ロキが王家の血統だったのかどうかは分からん。ロイス、なにか知っているか?」
「私も知りませんね。そもそも私たちは口伝で歴史や技術を伝えてあまり記録を残さないので。もしかしたらロキは魔王がいた時代の王の血を引いているかもしれませんが、そういうドワーフはロキだけでは無いでしょう。」
ああ、そうだよなぁ。ますます分からない。なぜロキさんが選ばれたのだ?
「しかしなぁ。いちいち戦闘のたびに筋肉がイカれていたら、魔王と戦う以前の話だろう。精霊の恩寵ってのはこんなにも危険なものなのか?」
「うーむ・・・」
みな押し黙ってしまった。
「あのー」
「なんだマッチョ。」
「ロキさんの身体を鍛えればいいのではないでしょうか?そうすれば反動も最小に収まると思います。」
「ああ、それはやってみる価値はあるかもな。」
「ロキさんが回復したら、私がトレーニングの方法を教えますよ。」
「おお、助かるな。ってかロキもお前みたいなカラダになるのか・・・」
私ほどデカくはならないだろうが、無駄にはならないだろう。
ランドクルーザー岡田の言葉を引用するまでもない。筋トレが無駄になることなどほとんど無いのだ。
「里長。ロキが目を覚ましています。話があるそうです。」
「そうか。すぐ行く。アイツ大丈夫だったのか?」
「ドクターによれば、疲労はあるようなのですが少し話す程度なら問題ないとのことです。」
「そうか。ひとまず良かったな。ドロスたちも来い。」
「では遠慮なく。行こうマッチョ君。」
「はい。」
スクルトさんも大食堂へやって来た。
「マッチョさん、お薬ありがとうございました。まだフラフラしてますが・・・」
「精霊の恩寵を受けたドワーフの方が目を覚ましたそうです。スクルトさんもお話を聞きませんか?」
「興味はあるのですが、かなりの疲労があるのでしょう?大人数で行くのも負担になるでしょうし、あとで話を聞かせてください。」
そうだな。相手の状態がイマイチよく分からない。
疲労か。
だったらさっきの回復薬が効くかもしれないな。里長には効いたのだ。少し作って持っていこう。
「10分だけですよ。どういう理屈なのか分かりませんが、筋肉に損傷が見られます。安静にしておくしかないですね。」
筋肉の疲労ならアミノ酸で早く回復できるはずだ。手持ちのハムや疲労回復ドリンクでどうにかなるかもしれない。
「大親方、僕はデカい魔物を倒したんですよね・・・」
「そうだ。あんまり憶えてないのか?」
「憶えていないというよりも、実感が無いというか、夢の中にいたみたいです。」
精霊の恩寵の副作用なのか、あるいは初めての命がけの戦闘の感想なのか判断がつかないな。
「なにが起きてどうなったのか、憶えている範囲でいいから話してくれ。」
「魔物が僕と僕の牛たちを襲ってきて、僕も倒されました。僕はともかく牛たちを殺そうとする魔物が許せませんでした。ずっと自分の無力に悔しい思いをしていました。そうして倒れていたら、声が聞こえたんです。力を貸してあげるって。だから力を貸してくれってその声にお願いしました。」
これが精霊の声か。
「他になにか声は聞こえたか?」
「声よりもビジョンというか、映像が断片的に頭の中に流れ込んできました。あの映像を思い出そうとするとすごく疲れるので、あとでもう一度確認したいと思いますが、魔王を封じたときのドワーフ王の記憶のようでした。まるで戦い方を教えてくれているようでした。」
「で、そのあと固有種を一撃で倒したのか。他に声は聞こえたか?」
「小さな声だったのでちょっと自信が無いのですが、ごめんなさいと言っているように聞こえました。」
精霊が謝ったのか。なにに対して謝ったのだろう。
「里長、そろそろ・・・」
ドクターに促された。これ以上は話を聞けないか。
「ドクター、引き続き頼む。ドロスたちは聞いておきたい話はあるか?」
「ワシらはロキ君が回復してからで構わん。いいな、マッチョ君。」
「はい。まずはドワーフの方々が納得してからお話を伺いましょう。」
ああそうだ。
「ドクター。私の手持ちにハムと疲労回復用の薬があります。ロキさんに与えても大丈夫でしょうか?」
「筋肉系の損傷だから消化しやすいタンパク質があるのならば助かる。疲労回復薬も私が試してから使おうか。」
「いや、もう俺のカラダで試した。効くぞ。ロキ、ゆっくりでいいから確実に治せ。」
ドワーフ王を被験体として使ってしまっていた。もう少し配慮してもよかったな。
「あの里長・・・」
「なんだ?」
「僕の牛はどうなったのでしょうか?」
「何頭かはもう助かりそうも無かったから、俺たちの手で送ってやった。」
「そうですか・・・ダメそうだったもんな・・・」
さすがに戦勝のお祝いとしてみんなで美味しくいただきましたとは言いづらい。
「ふーむ。映像に謝罪か・・・」
ドロスさんが考え込んでいる。全員で大食堂へ移動して、ロキさんの話を整理し始めた。
「精霊の恩寵に関しては、俺らも知らないことばかりだからな。人間国にあるという初代王の手記になにか書かれているかもしれないが。」
「魔物の身体強化魔法を一撃で打ち破ったのだ。その強さに加えて、さらに肉体上の変化まで起こるとはな。ワシもちらりとしか見られなかったが、あれは人間やドワーフが鍛えてどうにかなるような肉体ではない。マッチョ君をさらにデカくして身体強化魔法をかけたようなものじゃからのう。」
「映像のほうはまだ分かる。精霊がロキに戦い方を教えたということなのだろうからな。問題は謝罪のほうだ。いったいなにに対して謝ったというのだ?」
「ワシもそこが気になる。ロイスさん。この件についてもワシが文章を書くので、いちおう王都へハトを送ってくれんかの。」
「剣聖、私が一足先に帰って王に伝えます。今日には帰る予定でしたので。」
「そうか。その方がいいのう。頼むぞスクルト。」
「いくつか気になることがあるのですが、精霊の恩寵を受けた肉体に大きな反動が来るという話は伝わっているのですか?」
「いや、聞いたことが無いな。」
「ワシも知らん。というよりも、精霊の恩寵についても魔王同様に分かっていないことが多いのじゃよ。せいぜい光って強くなる程度しか伝わっておらんな。」
「それに、なぜ里長ではなくロキさんが選ばれたのでしょう?こういうものって王家の血統が導かれるものなのではないのですか?」
人間王はよく王家の務めという言葉を用いる。勇者の末裔でも無いものに、精霊は力を貸すのだろうか?
「ああ。俺らドワーフはな、王を血統では選ばねぇんだ。単純に鍛治の腕のいい奴か、鉱山発掘の山見の目がいい奴が王になる。ロキが王家の血統だったのかどうかは分からん。ロイス、なにか知っているか?」
「私も知りませんね。そもそも私たちは口伝で歴史や技術を伝えてあまり記録を残さないので。もしかしたらロキは魔王がいた時代の王の血を引いているかもしれませんが、そういうドワーフはロキだけでは無いでしょう。」
ああ、そうだよなぁ。ますます分からない。なぜロキさんが選ばれたのだ?
「しかしなぁ。いちいち戦闘のたびに筋肉がイカれていたら、魔王と戦う以前の話だろう。精霊の恩寵ってのはこんなにも危険なものなのか?」
「うーむ・・・」
みな押し黙ってしまった。
「あのー」
「なんだマッチョ。」
「ロキさんの身体を鍛えればいいのではないでしょうか?そうすれば反動も最小に収まると思います。」
「ああ、それはやってみる価値はあるかもな。」
「ロキさんが回復したら、私がトレーニングの方法を教えますよ。」
「おお、助かるな。ってかロキもお前みたいなカラダになるのか・・・」
私ほどデカくはならないだろうが、無駄にはならないだろう。
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