ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

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36話 試されるシラヌイ

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 僕とシラヌイが戻ると、ドレカー達が盛大に出迎えてくれた。
 皆口々に讃えてくれるのはいいのだけど、いいのだけど……っ!

「よーう聞こえてたぜ兄ちゃん! その娘と添い遂げるんだって?」
「あなたも迎えに行って、キスしてまぁ! 見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうわぁ!」

 ……妖怪達って目と耳いいのかよ、僕達のやり取り全部筒抜けになっていやがった!
 シラヌイともども顔を真っ赤にして、同時に顔を隠す。僕達は気が高ぶりすぎて、随分浮ついていたみたいだ。

「こんな大勢の前で「添い遂げる」なんて叫んでしまうなんて……」
「何がおかえりよ、何が受け入れるよ……頭イカレてんじゃないの私……!」
「いいではないか! それこそが愛というものだよ二人とも!」

 ドレカーは僕らの前に躍り出ると、腹の立つミュージカルを始めた。

「高鳴る鼓動 ほとばしる情動 この衝動は何だろう?」
『まさに愛!』
「高ぶる想い 燃える魂 この感情は何だろう?」
『まさしく愛!』
「その通り! 包み隠さず解放だ 抑圧したら心がはじけてしまいそう♪」
「待ってくれキャプテン! シラヌイはサキュバスだ!」
「それがどうした!」
「ディックは人間 淫魔のエサだな 果たしてこれは許されるんだな?」
「当然だろう! 人が悪魔に恋をする 文句ある奴どこにいる?」
『NO!』
「悪魔が人に恋をする これを否定する奴どこにいる?」
『NO!』
「真なる愛に種族差なんざ関係ねぇ! 好きになったから恋をする それでいいだろ!」
『Yes!』
「愛に正解などありはしない 恋した者が幸せならば それこそ正解の愛なのだ♪」
『育め愛を若人よ! 皆で祝福するよ 新たな幸せを!』

「というわけで、おめでとう二人とも! 我々一同、宇宙一の祝福を差し上げよう!」
「……当旅館では式場レンタルも致しております、ご予約ならばお早めに」

 クミンの締めが入ったところで、僕らは我に返った。

「……人をおちょくって楽しんでんじゃないわよぉ!」
「全員そこに直れ! ぶった切ってやる!」

 僕とシラヌイは妖怪達を追い掛け回し、面白半分にからかう連中を制裁しまくった。

  ◇◇◇

「いやー、まさか宇宙一ボコボコにされるとは。ちょっとやりすぎたかなぁはっはっは」
「……旦那様、皆様の盾になられてご立派です……」

 ドレカーは僕らの攻撃の集中砲火を受け、ぼろぼろになっていた。
 全部仲間を守るため、身を挺して守った結果なのだけど……よく生きてるなこいつ。

「人をからかうからですよ先輩」
「いやすまない! シラヌイが恋を自覚してくれたのが嬉しくてね、ついつい宇宙一のミュージカルを披露してしまったよ」
「あたい達も楽しかったよ。けどめでたい事は皆で祝ったほうがいいんだぜ、なぁマサラ」
「だな。シラヌイは昔から人を寄せ付けなくて、独りで居る所しか見た事ないんだな」
「あたいらは嬉しいんだよ、あんたが大事な人見つけてくれたのがさ」

 そう言われてしまうと弱いな。シラヌイをもっと大切にしたくなる。
 一目見た時から寂しそうな女性だと感じていた、シラヌイの寂しさを埋められたらいいな。僕はそう思った。

「さてさて、楽しい時間はここまでにして、本題に入ろうか」

 ドレカーが案内したのは、魔導具を浸した湖だ。
 魔導具は淡く輝き、光の粒子を散らしている。最初に見た時よりも、魔力が十全に行き渡っているようだ。

「うむ、魔力が完全に戻ったようだな。お待たせしたね二人とも、魔導具の完全復活だ!」
「……これでフェイスに立ち向かう武器が出来たんだな……」

 聖剣エンディミオンも魔導具の一種だと聞いた。あいつの持つチートアイテムに対抗できる武器が手に入れば……!

「逸る気持ちは分かるが、まだ使う事は出来ないよ。これを使えるようになるには、適合者である君が試練を受けなければならない」
「試練か。前から聞いていたけど、それって何をすればいいんだ?」
「今から魔導具に聞けばいい。全ての魔導具には意思があってね、尋ねれば答えてくれるはずだよ。そして試練を乗り越えたら、改めて私の依頼を受けて欲しい。魔導具を手にした君なら宇宙一簡単に出来る依頼だよ」
「その依頼っていうのはなんなんだ?」
「ダイダラボッチの完全討伐だ」

 僕とシラヌイは目を見合わせた。

「ダイダラボッチの完全討伐? この魔導具を使えば、巨人を倒せるんですか?」
「無論。なぜならダイダラボッチは、魔導具が核となって動いているゴーレムだからね」
『魔導具が核!?』

 あの巨人も魔導具が関係しているのか? 確かに、不死身の肉体や敵を変異させる力とか、エンディミオンに共通した能力はある。

「ダイダラボッチと幾度も交える中で、幾度か禍々しい光を放つ杖が出てきた事がある。奴はその杖を核にして再生していてね、調べた所、その杖は魔導具の一種である事がわかったんだ。いく度か破壊を試みたが、どうも魔導具は魔導具でなければ止められないらしい」
「……私をこの姿にした巨人を倒すには、同じ魔導具の力が不可欠なのです……」

 ダイダラボッチに抱いていた疑問が一気に晴れた気がした。魔導具が原因なら、確かに全ての説明がつく。

「この魔導具なら、魔導具が産んだ魔物を倒せるのか……? この魔導具の正体を、あんたは知っているのか?」
「当然だろう。私は宇宙一博識な男、イン・ドレカーだからな。魔導具全書と呼ばれる本がある、それには今まで見つかった魔導具が記載されていてね、君達が持ち込んだ魔導具の事が載っていたのだよ」

 そんな物があるのか。もしエンディミオンの事が載っていたら教えてもらいたいな。

「この魔導具の名はハヌマーン。アンチ魔導具の力を秘めた、全魔導具の中で一番弱く、一番脅威となる武具だ」
「先輩、ちょっと矛盾があるような気がするのですけど……どんな力なんです?」
「ハヌマーンは魔導具の力を一切無効にし、魔導具の所有者と生み出した化け物に対し絶大なダメージを与える能力を持っている。だが通常の武器や相手に対しては、そこらの安物武器と変わらない性能しか発揮できない。つまり魔導具を相手にした時のみ力を発揮する、非常に極端な武器なのだよ」
「確かに、凄く振り切った武器だな……」

 まさにアンチ魔導具と呼ぶべき武具。これが使えれば、フェイスの厄介な能力、コピーと無効化を気にせず戦える。不死の力も破れるはずだ。

「ハヌマーンの試練を乗り越え、ダイダラボッチを討伐して欲しい。改めて、私から依頼しよう」
「分かった。僕にしかダイダラボッチを倒せないなら、なんとしても乗り越えよう」

 フェイスと戦う前の予行練習にもなる。魔導具ハヌマーン、お前の力を僕によこせ。
 シラヌイと頷きあい、ハヌマーンに手を翳す。すると魔導具が輝き、頭の中に声が響き始めた。

『汝、我が見込みし適合者か。待っていた、汚れなき者と固き絆を結びし汝が来るのを』

 これがハヌマーンの意志? 荘厳な語り口調で僕達に語り掛けてくる。

『汝、わが前に最も大事とする絆を差し出せ。絆を捧げば、我が力を与えよう。絆が我を超えれば、より昇華せし力を与えよう。我は籠手、我は具足。一つで二つは足りえぬが、二つで一つ足りうる武具なり。真の絆を結ぶなら、我に奪われる事はない』

 ハヌマーンの声はここで止まった。抽象的な言い方だったけど、意味は伝わったよ。

「シラヌイを差し出せという事か」
「そのようね。でも生贄とは違うみたい。私が何かを乗り越えれば、より大きな力を与える。そんなところかしらね」
「間違いないな。僕が乗り越えるべき試練は、「君の帰りを待つ」って事になるのかな」

 シラヌイをハヌマーンに捧げ、彼女が戻ってくるのを信じて待つ。確かに、僕が行くよりも絆を試される試練だ。
 口ぶりからして、無事に戻ってこれない可能性もある。だけど僕は、不思議と不安はなかった。

「そう言う事なら、さっさと行ってくる。あんたはここで待ってなさい」
「早めに戻ってきてくれよ」
「当たり前でしょう。私を誰だと思ってるわけ? 魔王四天王にしてあんたの……あんたの恋人なんだから。好きになった奴との約束を破るわけがないじゃない」

 シラヌイは迷うことなくハヌマーンへ向かい、そして叫んだ。

「魔導具ハヌマーン! 適合者ディックと絆を結んだサキュバス、シラヌイよ。あんたの試練に挑むべく、この私をささげましょう!」
『……了承した』

 絆を結んだ相手と認識されたのだろう、シラヌイの姿が消えた。
 僕にできる事はただ待つだけ。でも彼女なら絶対戻ってくる。そんな確信があった。
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