ようこそ!アニマル商店街へ~愛犬べぇの今日思ったこと~

歩く、歩く。

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17人目(後編)商店街のお祭り

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「迷子かぁ、こんな人ごみじゃあはぐれてもしょうがないよね。べぇ……どうしよっか」
「どうしましょうかね」

 私と萌香さんは考え込みました。
 サル吉さんが見つけた男の子は、ご両親とはぐれてしまったそうです。
 迷子は嫌ですよね。私達は電子リードがあるのでどこまで散歩しに行っても必ず戻ってこれますが、人間に首輪をつけるわけにはいきませんし。
 ちなみに男の子はと言いますと。

「おーほほほ! さぁぷるぷるなさい、もっともーっとぷるぷるなさーい!」
「お餅だー、ねぇ見て、凄くお餅だよ」
「そうだね、お餅だね」

 モチさんがあやしてくれているので泣き止んでいます。見事な手腕です。普段駄菓子屋に来ているお子さんを相手にしているから、お手の物なのでしょう。

「ねーねー、なんで行っちゃダメなの? クロも遊びたい!」
「あんたの体格でとびかかったらケガするでしょうが。力加減出来ないんだから我慢なさい」

 ちゃこさんさんはクロさんを抑え込んでいます。ハスキー犬のパワーは私以上、加えてクロさんの無茶加減を考えるとお子さんの相手は不向きです。

「ともかく、迷子ならとっとと迷子センターに放り込んだ方がいいでしょ」
「迷子センター、どこにありましたっけ」
「……どこかしらね。そこのギャルに案内させるしかないわね」

 それもそうですね。という事で萌香さんのズボンを引っ張ります。萌香さんははっとしたように手を叩き、

「そっか、迷子センターに連れて行けばいいんだ。ちょっと遠いけど……ま、散歩がてらに行けばいいか。教えてくれてありがとね」
「ちょっと、こいつに教えたのは私よ」
「まぁまぁ。私達の声は分からないのですから」

 こんな時、人間と会話できないのが悔やまれますね。私達動物は動物同士でしか会話できませんから。

「お父さんとお母さんの写真とかない? なければ服装とか教えてくれると嬉しいな。もしかしたら途中で会えるかもしれないし」
「写真はないけど、お母さんは麦わら帽子を被ってるよ。あと白いワンピースを着てた」
「ふむふむ……道中それっぽい人が居たら声かけてみようかな」
「僕はここで見張っているよ、もしかしたらここに戻ってくるかもしれないからね」
「よろしくお願いします」
「と言うか動けないでしょうが」
「わーいお散歩だー!」
「あんたは空気読みなさい!」

 公園をサル吉さんに任せ、男の子を連れて賑やかに迷子センターへ。ちょっとしたお散歩ですね、賑やかな商店街を歩くのは楽しいです。

「んー……なんだかなぁ」
「ちゃこさんさん?」
「私が提案したのに、あんたの案みたいになってるのがなんか癪なのよ。私の方が立場が上なんだから、私の手柄にしないとなんか嫌」
「勝ち負けを競う場ではないと思うのですけど」
「私が恰好つかないのよ!」

 格好悪い決め台詞です。猫パンチが嫌なので心の中にとどめておきます。

「よし、迷子センターに着くまでに親を見つけてやる。そうすりゃ私の手柄に」
「いい加減にしなさい、今は優劣をつけるような場面ではありませんわよ。ですが、この子のご両親を探すのは賛成ですわ。私、空から探してみますわ」

 モチさんは颯爽と飛んでいきます。空を飛べるというのは便利ですよね。
 私も匂いで探しましょう。どうやら、ご主人様のラーメンを食べたようですしね。匂いで分かります。
 と言っても警察犬ではありませんから、上手くやれるかわかりませんが。

「やぁべぇ。お祭りの散歩かい?」

 ぬっ、と目の前に大きな影が現れました。ソニックバスターさんです。
 ソニックバスターさんも休憩の最中なんでしょうか、ご主人様と一緒に散歩をされていたようです。大きなお馬さんの登場に男の子は驚き、萌香さんの背中に隠れました。

「おおっと、驚かせてしまったか。どうしたんだ、そこの子供」
「実は迷子でして。迷子センターに連れて行きながらご両親も探している所なんです」
「なるほど。いつも思うけど、べぇってお犬良しだな。結構損するタイプの犬だろ」
「別に損はしていませんけど」
「わーいでっかい馬だー! あそぼあそぼ!」

「クロさん、話の腰を折らないでください。それと足元をぐるぐる回っては危ないですよ。ソニックバスターさん体重が550kgもあるんですから」
「いんや、最近ちょっと減って548kgになったんだ」
「大差ないじゃないのよ」
「何言ってるんだ、競走馬のマイナス2kgは大きいんだぞ」
「あんたもう引退してんでしょうが」

 賑やかにお話をしたためでしょうか、男の子がソニックバスターさんに歩み寄ります。そしたらクロさんがぐいぐいと背中を押して、男の子を近づけさせます。

「そんな所に居ないで、出てきて出てきて!」
「なんで押してくるの? 大きい、怖い……」
「大丈夫だよ、ソニックバスターは大人しい馬だから。そうだ!」

 萌香さんは馬主さんとお話をされ、男の子をソニックバスターさんに乗せました。男の子は大喜びです。

「凄い高い! 本当に乗っていいの?」
「ま、サービスって事でいいよ。その代わり萌香ちゃん、さっきの話よろしく頼むね」
「任せてください、店長に餃子一皿つけるよう伝えときますから」
「バイトの分際で店の商品で買収してるわよこいつ。いいの? 店主の許可得ないで」
「したたかな所も萌香さんのいい所ですから」
「餃子一皿で買収される方もされる方だけど。安すぎるでしょうが」
「クロも餃子食べたいなー」
「ダメですよクロさん。犬に餃子は毒です」
「いい具合にカオスな会話だな。賑やかなのは嫌いじゃないけどね」

 ソニックバスターさんを先頭に、かっぽかっぽと行進します。道中、ソニックバスターさんも探してくれますが、麦わら帽子にワンピース姿の女性は中々見つかりません。
 そう思った時、ふと鼻にご主人様のラーメンの匂いがかすめました。

「子供を呼ぶ声も聞こえるわね、そう遠くないわよ」
「こっちー! こっちに来てくださいな! 見つけましたわ、麦わら帽子にワンピースの方!」

 同時にモチさんの鳴き声も聞こえてきます。ここからなら、迷子センターに行くよりも近いです。

「ソニックバスターさん、お願いします」
「任せておいて。さぁ、つかまっててよ!」
「うわぁっ!」
「ちょっとべぇ!? 待ってよもう!」

 子供を乗せて、ソニックバスターさんが走ります。私は先頭を走ってソニックバスターさんを案内し、モチさんの所へ急ぎます。
 モチさんは上空を旋回し、居場所を教えてくれています。匂いもありますから、迷う事はありません。

「居た! 白のワンピースに麦わら帽子、あの二人ね!」
「見つかってよかったです」

 男の子の言った通りの服装の女性が、男性と一緒に居ました。
 私達の登場にお二人とも驚いた様子でしたが、迷子のお子さんを見るなり、喜んだ顔になります。

「お母さん! お父さん!」
「よかった、探したのよ! ……なんかすごい大所帯になってるけど、何があったのこれ」
「凄いな、この商店街は馬が迷子を運んでくれるのか? って、ソニックバスターか! 俺ファンだったんだよ」
「ふふ、これは思わぬ出会いがあったものだね。手伝いをしてみるものだ」

 ソニックバスターさんがお父様に頬を摺り寄せます。遅れてようやく萌香さんも到着しました。

「はぁはぁ……皆足早すぎるよ。あ、お父さんお母さん見つかったんだ。凄いじゃない皆! そっか、この子の両親を見つけたから走っていったんだね」
「本当にありがとうございました。この子が見つからなくてどうしたらいいのかと」
「いえいえ、皆が頑張ってくれましたから。カッコいいじゃん、見直したよー」

 萌香さんは私達を撫でてくれました。自分達の力で人助けができたから、喜びもひとしおです。
 これで一件落着ですね。

「おーーーい、みんなーーー、きこえるかーーー」

 風に乗ってきゅーきゅーと鳴き声が聞こえました。サル吉さんの声です。

「今更遅いっての。何を伝えようとしてるんだか」
「全く、これだからナマケモノは嫌なんですわ」
「もーすぐー、きゅーけーじかーん、おーわーるーよー」

 私達ははっとしました。確かに、迷子の相手をしてから相当時間が経っています。急いで戻らなければ。

「ちょっとべぇ、福引っ張らないでってもうこんな時間!? 急がないと、でも遠い……遅刻だよ~」
「そういう事なら、任せてよ。さぁ、乗って!」

 ソニックバスターさんが「乗れ」と嘶きました。萌香さんを背負い、あっという間に公園へ走っていきます。
 私達も追いかけますが、あまりの速さに置いてかれてしまいそうです。

「ちょっと! 私の足じゃ追いつかないって!」
「情けないですわねぇ、私は余裕ですわよー」
「あはは! 追いかけっこだー待て待てー!」
「萌香さん、振り落とされないといいのですけれども」

 どうにか規定時刻には間に合いましたが、ソニックバスターさんが派手に乗り込んだので、公園は一時騒然となりました。
 ですが飛び入りでソニックバスターさんも参加されまして、ふれあい広場は大盛況となりました。
 こうして私達のお仕事は、大成功で終了となったのでした。

  ◇◇◇

「おかえりべぇ、ちゃこ。今日は頑張ってくれたな」
「萌香さんもお疲れ様。大変だったでしょう?」
「いえいえ! 皆のおかげですごく楽しい一日でした」

 お仕事を終えてお家に戻ると、ご主人様と里琴さんが迎えてくれました。
 ご主人様も忙しかったようで、ちょっとお疲れの様子です。

「ふふーん、どうでした里琴さん。店長とのお仕事大変だったんじゃないですかー?」
「ううん、私も楽しかったから大丈夫」
「そっかー。将来やるかもしれない仕事ですからね、慣れといた方がいいですよー」
「こら、大人をからかうな」

 ご主人様が顔を赤くしながら萌香さんにチョップします。里琴さんもちょっと照れくさそうです。

「おっと、大将。もう閉店かい?」
「ソニックバスターの。ええ、今日はもう閉めようかと」
「ありゃあ、それじゃあ後日また来るか。餃子の無料サービス、楽しみにしてるよ」

「無料サービス? 何のことですか?」
「あー、実はね店長、迷子の親を探すのにソニックバスターを借りちゃって。その代金替わりに餃子を一皿無料でサービスするって約束しちゃったんだ」
「お前勝手に何の約束してんだよ!」

「おいおい大将、こっちはソニックバスターだけじゃなくて、べぇ達の暴走の後始末もしたんだぜ? それ考えたら餃子一皿くらい安いものだとおもうけどな」
「萌香ちゃん、本当に何をしたの?」
「お前、後で説教な。はぁ……うちのバイトが迷惑かけたみたいですみません。お詫びに餃子だけでなく、ラーメンもサービスしますよ」
「あちゃー……大活躍の代償は大きかったか」

 ご主人様達はお店の中に入っていきます。皆さんを見送ってから、私達も反省会です。

「今日は楽しかったね! 色んな人と遊べてすごく楽しかった!」
「うふん、私のぷるぷるさに沢山の方が魅了されましたわ。私ってばなんて罪づくりなアヒルなのでしょうか」
「結局、一日木にぶら下がっているだけの時間だった。何のために連れていかれたのだろうか、これがわからない……」

「皆さん思い思いに楽しめたみたいですね。私も楽しかったです。ちょっと疲れましたけど」
「私もよ。やっぱお祭りは疲れるわ……でも、悪くはなかったかな」

 ちゃこさんさんは私によりかかります。彼女も一生懸命働きましたからね、くたくたになったみたいです。

「毎日は勘弁だけど、たまにならまぁ、やってもらってもいいかな」
「私もそう思います」

 騒がしくも楽しい思い出が作れる、お祭りという行事。人間にとっても、動物にとっても、心が満たされるイベントです。
 来年もまた、素敵な思い出が作れるといいですね。
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