67 / 207
1部
67話 削がれゆく心
しおりを挟む
ラコ村への襲撃は日を追うごとに増え、陰湿になっていった。
連日で襲ってきたり、雑魚と強者を交互に嗾けてきたり、はたまた時間を空け、気が緩んだ瞬間を見計らってやってきたりと、緩急を付けてハローを翻弄し続けた。
ハローは悉く野盗どもを跳ねのけたが、いつ敵が来るか分からない緊張感で精神を削り続けた。
雑魚と強者が不規則に出てくるから、どの敵に対しても全力で対峙しなければならない。敵が来なくとも、気を抜いた頃にやってくるから、休む間もない。
親玉を探ろうにも、生け捕りにした奴らは皆自害してしまう。まるで軍隊のような統率力だ。
ナルガ達からは、「自分達に頼れ」と言われているが、その優しさがハローの負担になってしまう。自分が休んだばかりに、彼らの身に危機が及んだら、元も子もない。
何よりも、此度の件は自分が招いてしまった事。全責任はハローにある。だから、全部自分が背負わなければならない。
自分のせいで誰かが犠牲になってはならない。キグナス島の悲劇を繰り返してはいけない、第二のマックとミレイユを出すわけにはいかない、エドウィンと……ナルガを失うわけには、いかない。
ハローはいつしか、寝る時間すら削っていた。心が疲弊していく内に、次第に「ナルガの正体が、本当にばれてしまったのではないか」と思うようになり始めた。
エドウィンは野盗のブラフだと断じたけど、もしもブラフじゃなかったら? 本当にナルガの正体が割れていて、誰しもが彼女を亡き者にしようと、画策しているんじゃないか?
疲労や焦りが余計な空想を生み、視野を狭めていく。ハローは毎日、気が済まらない日々を過ごした。
「今日も寝ないのか?」
「大丈夫だよ、少しだけ休むから」
心配するナルガに対し、ハローは笑顔で答えた。
とはいえ、笑顔に元気はない。夜分なのに見回りへ出ようとするハローに、ナルガは眉間に皺を寄せた。
「今日は寝ろ、もう何日まともに眠っていない? お前が倒れたらどうするんだ」
「本当に平気だから! 俺が招いた事態なんだ、俺が片付けなくちゃ、二の轍を踏むわけにはいかないから……」
ナルガは嘆息し、ハローの腕を引いた。
「悪い癖だな、一人で抱え込むんじゃない。私をただの農婦だと思うな、魔王四天王のナルガだぞ。お前を守るなど造作もない」
「………」
「目の前で苦悩されては、こちらも居心地が悪いんだ。だから守らせろ、な?」
一瞬、ハローは力を抜いた。このままナルガの好意に甘えようと、口にしようとした。
途端だった。村人の悲鳴が聞こえ、ハローは飛び出した。
闇夜に乗じて野盗が来たのだ。まるでハローが休もうとしたのを見計らったかのようなタイミングだった。
「くそ、誰だ……一体、誰がこんな事を!」
ハローには、ひと時の休息すら許されない。ただただ彼は、消耗を強いられていた。
連日で襲ってきたり、雑魚と強者を交互に嗾けてきたり、はたまた時間を空け、気が緩んだ瞬間を見計らってやってきたりと、緩急を付けてハローを翻弄し続けた。
ハローは悉く野盗どもを跳ねのけたが、いつ敵が来るか分からない緊張感で精神を削り続けた。
雑魚と強者が不規則に出てくるから、どの敵に対しても全力で対峙しなければならない。敵が来なくとも、気を抜いた頃にやってくるから、休む間もない。
親玉を探ろうにも、生け捕りにした奴らは皆自害してしまう。まるで軍隊のような統率力だ。
ナルガ達からは、「自分達に頼れ」と言われているが、その優しさがハローの負担になってしまう。自分が休んだばかりに、彼らの身に危機が及んだら、元も子もない。
何よりも、此度の件は自分が招いてしまった事。全責任はハローにある。だから、全部自分が背負わなければならない。
自分のせいで誰かが犠牲になってはならない。キグナス島の悲劇を繰り返してはいけない、第二のマックとミレイユを出すわけにはいかない、エドウィンと……ナルガを失うわけには、いかない。
ハローはいつしか、寝る時間すら削っていた。心が疲弊していく内に、次第に「ナルガの正体が、本当にばれてしまったのではないか」と思うようになり始めた。
エドウィンは野盗のブラフだと断じたけど、もしもブラフじゃなかったら? 本当にナルガの正体が割れていて、誰しもが彼女を亡き者にしようと、画策しているんじゃないか?
疲労や焦りが余計な空想を生み、視野を狭めていく。ハローは毎日、気が済まらない日々を過ごした。
「今日も寝ないのか?」
「大丈夫だよ、少しだけ休むから」
心配するナルガに対し、ハローは笑顔で答えた。
とはいえ、笑顔に元気はない。夜分なのに見回りへ出ようとするハローに、ナルガは眉間に皺を寄せた。
「今日は寝ろ、もう何日まともに眠っていない? お前が倒れたらどうするんだ」
「本当に平気だから! 俺が招いた事態なんだ、俺が片付けなくちゃ、二の轍を踏むわけにはいかないから……」
ナルガは嘆息し、ハローの腕を引いた。
「悪い癖だな、一人で抱え込むんじゃない。私をただの農婦だと思うな、魔王四天王のナルガだぞ。お前を守るなど造作もない」
「………」
「目の前で苦悩されては、こちらも居心地が悪いんだ。だから守らせろ、な?」
一瞬、ハローは力を抜いた。このままナルガの好意に甘えようと、口にしようとした。
途端だった。村人の悲鳴が聞こえ、ハローは飛び出した。
闇夜に乗じて野盗が来たのだ。まるでハローが休もうとしたのを見計らったかのようなタイミングだった。
「くそ、誰だ……一体、誰がこんな事を!」
ハローには、ひと時の休息すら許されない。ただただ彼は、消耗を強いられていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる