68 / 207
1部
68話 翻弄される
しおりを挟む
最近のハローの様子には、エドウィンも頭を抱えていた。
余計な事を言っちまった、失言だ。「お前が狙いだ」と言ってしまえば、ハローがああなるのは目に見えていただろうに。
かといって、黙っていてもハローは自分で気づくだろう。あいつはそこまで、馬鹿じゃない。
「……援護、求めてみるか?」
オクトの顔を思い浮かべたが、今彼女は遠征中で、国外に出てしまっている。それ以前に、勇者は国内最大の戦力で、動くには国王からの下知が必要だ。
たかが辺境の村のために、国王が頷くわけがない。彼女は当てにできないだろう。
「エドウィン様、失礼します」
「ミネバ、またジジイからの使いか?」
「ええ……実は教会周辺にまた、野盗が出てきていて」
「ちっ、ラコ村だけじゃなくて周辺の村落にも襲ってくるのが厄介だ。あいつが休まる暇がない。……そいつはナルガに任せるぞ」
「分かりました、後ほど、伝えに行きます。……一体、誰なのでしょうか。ここまで大規模な行動がとれる人なんて」
「僕が知りたいくらいだ。ハローは幾人もの賊を潰してきたから、恨みを買うのは分かる。でもな、これまでの奴らを振り返っても、高度な作戦が立てられるような頭を持つ奴が思い当たらないんだよ」
ただ、高度と言っても粗が目立つ作戦だ。何しろ相手は突撃するばかりで、自ら戦力を減らしていく一方なのだ。
普通ならば撤退を織り交ぜる等、戦力を温存しながら立ち回る。にも拘らず頭から特攻するのみの戦法を繰り返すなんて、賢い策とは言い難かった。
「あいつらの最終的な目標は、ハローの殺害だ。でも今のままだと、ハローを殺す前に自分達の戦力が底を尽く。作戦が稚拙でちぐはぐなんだ。そいつが余計に犯人像を曇らせちまうんだよ」
エドウィンはガリガリと頭を掻いた。
……これもウルチの策である。ハローと同様に、ウルチはエドウィンにも警戒を怠らなかった。
確かにウルチならば、配下を撤退させるなど、被害を最小限に抑える策を立てる。しかしあまりに整いすぎた作戦は、エドウィンに犯人を特定させるヒントを与えかねない。
だから、あえて粗さを交えている。「ウルチ・マサガネが使わない手」をあえて取る事で、自身の生存を匂わせないようにしていた。
「ハローを少しでも休ませてやらないと、じゃないとあいつ自身が潰れちまう」
「ですが、出来るでしょうか。ナルガ様がお傍に居るのにあの状態では」
「そこなんだよ、ナルガの声すら届かないくらい焦ってやがるんだ。キグナス島の時みたいにな」
エドウィンの脳裏に、過去の地獄が蘇る。今のハローは、キグナス島で戦っていた時と瓜二つだ。俺がやらねばと、一人で全部を背負い込んで、自分で自分を追い詰めて……そんなハローをエドウィンは、ただ見ているしか出来なかった。
「……あの時と同じで、いいわけねぇだろが」
「エドウィン様、どちらへ?」
「ハローの所だよ。周辺の護衛くらい、一日だけナルガに全部任せちまえ。ふんじばってでもあいつをベッドに寝かせてやる、嫌がったらぶん殴って、首根っこ掴んで引き摺ってやる! 普段人に頼ってるくせに、変な所で意地張るんじゃないよあの馬鹿野郎」
「お友達思いですね」
「ちがわい、全部あの馬鹿が悪いんだ」
ハローはお前が守ると決めただろうが、エドウィン・ワイズナー。もう二度とあいつを見殺しになんかするものか。
あいつは絶対、僕が助けてやるんだよ。
余計な事を言っちまった、失言だ。「お前が狙いだ」と言ってしまえば、ハローがああなるのは目に見えていただろうに。
かといって、黙っていてもハローは自分で気づくだろう。あいつはそこまで、馬鹿じゃない。
「……援護、求めてみるか?」
オクトの顔を思い浮かべたが、今彼女は遠征中で、国外に出てしまっている。それ以前に、勇者は国内最大の戦力で、動くには国王からの下知が必要だ。
たかが辺境の村のために、国王が頷くわけがない。彼女は当てにできないだろう。
「エドウィン様、失礼します」
「ミネバ、またジジイからの使いか?」
「ええ……実は教会周辺にまた、野盗が出てきていて」
「ちっ、ラコ村だけじゃなくて周辺の村落にも襲ってくるのが厄介だ。あいつが休まる暇がない。……そいつはナルガに任せるぞ」
「分かりました、後ほど、伝えに行きます。……一体、誰なのでしょうか。ここまで大規模な行動がとれる人なんて」
「僕が知りたいくらいだ。ハローは幾人もの賊を潰してきたから、恨みを買うのは分かる。でもな、これまでの奴らを振り返っても、高度な作戦が立てられるような頭を持つ奴が思い当たらないんだよ」
ただ、高度と言っても粗が目立つ作戦だ。何しろ相手は突撃するばかりで、自ら戦力を減らしていく一方なのだ。
普通ならば撤退を織り交ぜる等、戦力を温存しながら立ち回る。にも拘らず頭から特攻するのみの戦法を繰り返すなんて、賢い策とは言い難かった。
「あいつらの最終的な目標は、ハローの殺害だ。でも今のままだと、ハローを殺す前に自分達の戦力が底を尽く。作戦が稚拙でちぐはぐなんだ。そいつが余計に犯人像を曇らせちまうんだよ」
エドウィンはガリガリと頭を掻いた。
……これもウルチの策である。ハローと同様に、ウルチはエドウィンにも警戒を怠らなかった。
確かにウルチならば、配下を撤退させるなど、被害を最小限に抑える策を立てる。しかしあまりに整いすぎた作戦は、エドウィンに犯人を特定させるヒントを与えかねない。
だから、あえて粗さを交えている。「ウルチ・マサガネが使わない手」をあえて取る事で、自身の生存を匂わせないようにしていた。
「ハローを少しでも休ませてやらないと、じゃないとあいつ自身が潰れちまう」
「ですが、出来るでしょうか。ナルガ様がお傍に居るのにあの状態では」
「そこなんだよ、ナルガの声すら届かないくらい焦ってやがるんだ。キグナス島の時みたいにな」
エドウィンの脳裏に、過去の地獄が蘇る。今のハローは、キグナス島で戦っていた時と瓜二つだ。俺がやらねばと、一人で全部を背負い込んで、自分で自分を追い詰めて……そんなハローをエドウィンは、ただ見ているしか出来なかった。
「……あの時と同じで、いいわけねぇだろが」
「エドウィン様、どちらへ?」
「ハローの所だよ。周辺の護衛くらい、一日だけナルガに全部任せちまえ。ふんじばってでもあいつをベッドに寝かせてやる、嫌がったらぶん殴って、首根っこ掴んで引き摺ってやる! 普段人に頼ってるくせに、変な所で意地張るんじゃないよあの馬鹿野郎」
「お友達思いですね」
「ちがわい、全部あの馬鹿が悪いんだ」
ハローはお前が守ると決めただろうが、エドウィン・ワイズナー。もう二度とあいつを見殺しになんかするものか。
あいつは絶対、僕が助けてやるんだよ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる