アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

文字の大きさ
136 / 207
2部

136話 迫られる選択

しおりを挟む
 遅れながら、三人はリナルドを追いかけた。
 リナルドは村の入り口で、ナルガとミネバに保護されていた。ハローはほっとし、手を伸ばしたが、リナルドは払いのけてしまった。

「……あのね、ハロー。お願いがあるの。僕を、殺して」
「何を言い出すんだよ、いきなり」
「殺して! そうすればハローを助けられるんだ。全部思い出したんだ、お姉ちゃんが、教えてくれたんだ……」

 リナルドは聖剣を指さした。
 やはり姉との接触が、記憶を蘇らせたのだ。

「落ち着いて。思い出した事を、話してくれるかい?」

 リナルドの話は舌足らずだったが、オクトが手記の情報を補足してくれたため、ハロー達は彼の生い立ちを知る事が出来た。
 リナルドは一地方を治める裕福な家に生まれた。しかし彼が生まれた途端父親が急死し没落、落ち延びる先々で多くの不幸に見舞われ、リナルド達は明日をも知れない日々を送り続けた。
 その生活の中で、母親は次第に狂い始めた。リナルドに憎しみを向け、暴力を振るわれるようになった。
 姉のシェリーが庇ってくれたが、母親の虐待と、傷だらけになる姉の姿に、リナルドは心を痛め続けた。

「それでね、雪の日にね……お母さんは僕とお姉ちゃんを、恐い人達に預けたんだ」
「人売り、だな」

 食うに困った母親は、姉弟を売った。人売り達から動物のように扱われた二人は、ある人物に買い取られた。その人物こそ、剣を打った錬金術師である。
 奴は二人の他に幾人もの子供を買い、凄惨な人体実験を続けた。恐怖の日々の中で、リナルドはアルター化した者達の末路を見続けてしまった。

 アルターは剣の魔力が自我を持って暴れる現象。その魔力の核となっているのが、剣に封じられた子供だ。
 核となる子供は人体改造によって、無尽蔵の魔力を有している。怪物を構成する魔力は子供から供給されており、子供が居る限り怪物は不死である。加えてアルターは魔力で構成されているため、実体を持たない霊体のような存在だ。

 アルターはこの性質により、世界の事象全てから外れているため、聖剣ですら一切の傷を負わない無敵の存在なのだ。

「ですが、魔剣にはほんの僅かにリナルド君の魔力が残っています。いわば怪物と同質の存在ですので、傷を付けられます」
「けどこんなもんでまともに戦えるわけがない。根本を解決するには、核をやらないとダメだろ。つまり……」

 エドウィンの結論に誰もが口を閉ざした。
 アルター化を止めるには、核である子供を殺す他ない。

「僕が居たら、怪物はずっと出てきちゃうんだ。でも僕を殺せば、もう出なくなる。ハローが危ない目に遭わずに済むんだよ」

 リナルドはぽろぽろと泣き出した。

「僕ね、ハローが大好き。ナルガも大好き。いっぱい優しくしてくれて、美味しい物も食べさせてくれて、二人と一緒に居る時は、凄く幸せなんだ。でも……僕が居るとハローは殺されちゃうし、ハローが死んじゃったらナルガも悲しくなるし……お姉ちゃんが閉じ込められてるのに、僕だけが幸せになるなんてできない……僕が居るせいで、いっぱいの人が、不幸になっちゃうんだ……でも僕が死んだら皆、無事でいられるんだ……だから、殺して……お願い……僕が死ねばハローもナルガも、助かるから」
「馬鹿を言うな! リナルドを殺して解決など!」

「けどリナルドの言い分も合ってる。実際にハローは死にかけたんだ。村の事を考えれば、人身御供もやむなしだろ」
「エドウィン様! いくらなんでも酷すぎます!」
「なら他に方法があるのか? アルターはハローよりも強い、戦い続けてもハローが殺されるだけだ。ハローかリナルド、どっちかしか選べないのなら僕は、ハローを取る。それだけだ」

「ですが選択肢があまりにも……重すぎます」

 誰もが困惑し、答えが出てこない。そんな中、皆の姿を見ていたハローは。

「リナルド、馬乗るか?」

 リナルドに手を差し伸べ、こう言った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...