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48話 日本製二足歩行重機の躍動

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 サヨリヒメの住処にクェーサーが運び込まれると、彼は持ちうる機能全てを使って活躍した。
 職員達が記録を取るための拠点はキャンプパックを使い、クェーサー手ずから施設をくみ上げた。小さな発電機も備えた簡易施設が出来上がり、御堂達バックアップ班がスムーズに作業できるようになった。
 林業の専門家にも協力してもらい、クェーサーの里山整備が始まった。

「よっしゃ! 救! クェーサー! アテンドパックに換装するぞ!」
『了解だ姐さん!』

 白瀬達作業班が換装作業に入った。バックパックの交換は非常に簡単な手順で済むため、僅か2分で次の作業へ入る事が出来る。
 アテンドパックから小型クェーサーが飛び出し、草刈りや枝打ちを開始する。クェーサー本体から無尽蔵に供給されるエネルギーによって、疲れ知らずのクェーサー達が見る間に里山を整備していく。
 御堂の手を借りて、クェーサーはどの区画をどのように整備するのか、緻密に計算していた。人間では成しえない驚異的な効率作業である。

『そろそろ間伐を行うべきかと』
「分かった、ツールパックに換装よろしく!」
「あいよ!」

 今度は電動のこぎりやハンマー等を搭載したバックパックに換装し、余計な木々を伐採していく。6メートルの巨人は人よりも手早く、スムーズに木を刈り取っていった。

 大型二足歩行ロボットの働きぶりに専門家たちは脱帽していた。重機よりもスピーディに行動出来て、場所も問わず移動出来て、更には1台でいくつもの重機の代わりを果たす汎用性も兼ね備えている。作業用重機としてこの上ない程の力を発揮していた。
 撮影を担当している麻山は、クェーサーの活躍にほうとため息を吐いた。

「凄いなぁ、映画の撮影をしてるみたいだ」
「確かにね。映像の世界がこうして現実になるとは、僕が若い頃には想像もできなかったよ」
「先輩! 疲れてない、大丈夫?」
『今んとこ大丈夫だ、水素の残量も余裕がある。てかよ、パワーショベル運転するより遥かに楽だぜ。全然疲れてこない』
『救に合わせてOSを書き換えていますので。パイロットの負担を最小限に抑えています』

 搭乗者によって性能が変わる柔軟性も大きな武器である。救はスポーツドリンクを飲み、駆動系をチェックした。

「まだまだ動けそうだな。あやかし達のおかげだぜ」
『パーツ類の見直しもされていますので、以前よりも駆動系の剛性が向上しています。各部をユニット化して構造を単純にしましたので、整備性も改善しています。これならば連続しての作業も可能かと』
「聞けば聞く程いい機体になったもんだぜ、ロボットアニメの主役になった気分だ」
『私は兵器ではありません、あくまでも、重機です』
「そうだな。さて! もうひと頑張りしますかね!」

 救と共に、クェーサーは里山の掃除をし続けた。
 時間にしてほんの1時間半にして、里山は見違える程に整備されていた。
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