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49話 心を持ったロボット

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「おお……おぉぉぉぉ……! これは、なんと……!」

 美しく整備された里山を見上げ、サヨリヒメは言葉を失っていた。
 まるで昔にタイムスリップしたかのようだ。こんなに綺麗な里山は、この数十年見なかった光景である。
 里山のあやかし達も驚き、喜んでいる。クェーサーの活躍により、彼らの住む場所は大幅に改善されたのだ。
 専門家たちもクェーサーを称賛していた。林業に革命をもたらすと言われ、羽山も鼻高々だ。

「まだ試作段階ですが、製品化の暁には是非ご検討ください」

 すかさず犬養が営業に入る。これほどの成果を見せつけられては、専門家も前向きにならざるを得ない。
 試運転をさせてみても、クェーサーによるアシストもあって操縦しやすく、誰もがすぐさま運転できるようになってしまう。経験のない者でも、熟練者と同等の操縦技能を発揮できるのだ。

「画期的だ、アニメが現実になったみたいですよ、これは欲しいですね」
「このロボットがあれば、森林整備もより効率よく行える。日本の問題のひとつが、大きく解決できるはずです」

 皆口を揃えて、最高の感想を言ってくれた。道具として見られているのに変わりないが、クェーサーは少しだけ嬉しく思った。
 小型機に意識を移し、サヨリヒメに歩み寄る。彼女はクェーサーに抱き着き、

「ありがとのぅ、わらわの住まいがこんなにも美しくなるとは……!」
「機械として出来る事をしたまでです。所詮私は、ロボットですから」
「ロボットにこんな事は出来ぬよ。あれを見るがよい」

 サヨリヒメが示した場所には、稲荷を始めとしたあやかし達が居た。
 彼らは口々に「ありがとう」と感謝を伝え続けている。戸惑いながらもクェーサーは手を振り、歓声にこたえた。

「よかったじゃねぇか、喜んでもらえて」
「君が考え、立案した計画だ。誇りに思うべきだよ」

 救と御堂が肩を叩き、労ってくれる。サヨリヒメもクェーサーを見つめ、

「ただのロボットに、こんな真似は出来ぬよ。相手を思いやり、考えられる心を持たねば、これほどの事は成し遂げられぬ。おぬしは単なる機械じゃない、クェーサーと言う、大切な一つの命じゃ」
「……心があるからこその、結果ですか」

 クェーサーの発案は、人とあやかし双方を喜ばせていた。
 自分の活躍で、多くの者達に感謝される。機械として当たり前の事なのに、温かい気持ちになる。
 クェーサーが居れば、里山に住むあやかし達のために、人も働きかけやすくなる。そうなればより人とあやかしは密接になり、救や御堂のような、二種族の共存の証がより増えていくだろう。

 人と、あやかしの架け橋か……。

 以前サヨリヒメが言ってくれた言葉が、クェーサーを励ましていた。自分が生まれた意味が、少しだけ、見えてきた気がする。
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