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47話 私にできる事はないのか、否

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「皆の衆、今日は楽しかったぞ」

 夕方ごろ、宴を終えた面々を羽山工業に戻し、サヨリヒメは礼を言った。
 社員達は余韻に浸り、また機会があればあやかしと会いたいと口々に伝えてくれている。サヨリヒメには何よりな感想だ。
 人とあやかしは共に過ごしている、それが父上に伝わればよいのだが……。

「運転まで任せてごめんね、サヨリヒメ君」
「良いのじゃ、羽山達に楽しんでもらえてわらわも嬉しいぞ。ではわらわはバスを返しに行かねばならんのでな、先に暇をいただくぞ」
「その辺は神通力でどうにもならないんだな」

 今日一杯のレンタルなので日をまたぐと延滞金がかかるのだ。
 バスで去っていくサヨリヒメを見送り、クェーサーは彼女の住処がある方角を見つめた。
 サヨリヒメの口ぶりからして、カムスサは話が通じるような相手ではないだろう。もしも人間を招いた事が気取られれば、彼女の身に何が起こるだろう。

 カムスサからサヨリヒメを守るためには、人間が来た事を隠すのではだめだ。カムスサにとって人間が有益な存在だと認めさせるべきだ。

 手はある、クェーサーの持つ機能を使えば、カムスサに人間の有用性を示せる。
 未だ、自分の存在について疑問を感じ続けている。サヨリヒメに力を尽くしても、機械としてしか見られないのも承知の上だ。
 道具としてでも彼女の役に立てるのであれば、迷いながらでも目の前の困難に立ち向かってみせよう。

「社長、私を使ってサヨリヒメの住処を整備する事は出来ますか」
「クェーサーがかい?」
「バックパックの実地試験はまだですし、性能を計るよい機会かと。荒れた里山の整備が出来れば、私の有用性をより宣伝できるはずです」
「成程。林業にも活用できると証明できれば、販路を広げられるかもしれないね」
「となれば僕が各方面に連絡を入れておきましょう。撮影機材も用意しなければ」

 羽山と犬養はすぐさま行動に移ってくれた。社員の意見を否定せずに受け入れてくれる理想の上司である。

「里山の整備に有効なパックとなると、電ノコとか搭載したツールパックか?」
「アテンドパックじゃないかい? 森の密集具合を考えると、小型クェーサーで散った方が効率的なはずだよ」
「作業の拠点になるテントも必要だろうし、キャンプパックも欲しくなるな」
「いっそ全部持ってくのはどうかなぁ、トラックに積めば持ち運べるよ」
「バックパックの換装だけであらゆる場面に対応できる……売り文句の汎用性を宣伝するいい機会だね」

 社員達も思い思いに意見を出し合い、瞬く間に計画の算段がついて行く。このフレキシブルな社風が羽山工業の強みだ。

「よし、サヨリヒメの許可を取ったら実行しよう。それでいいねクェーサー君」
「ありがとうございます」

 サヨリヒメのためならば、道具扱いだろうと構わない。カムスサから彼女を守るんだ。
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