「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

文字の大きさ
38 / 93

38話 超が付く激務で振り回してやった

しおりを挟む
 ガレオン軍を引き連れ、二時間ほど村や街を回ってみたが、どこも酷い有様だ。
 地方に行くほど領民はやせ細り、土地は荒れ果てている。ライフラインも壊滅的で、汚れた水を生命線にしている所ばかりだ。

 ガレオン領とは比べ物にならないくらい貧しい場所だ。視察を回る度にセレヴィは胸を痛め、唇を嚙み締めた。
 でももう大丈夫、ここはもう、ガレオン領なのだから。

「奴隷ども! 俺が貴様らの主であるガレオン・ドゥ・アスタロトだ! 貴様らはこの俺の支配下にある、俺の命は絶対だ! 貴様らがどれだけ反抗しようと無駄、無駄! 無駄!! 一切の抵抗は認めん! 今すぐに俺に従え!」

 村人を集めるなり、ガレオンは高笑いしながら宣言した。当然村人達は反抗の意を示すも、弱り切った彼らに抵抗する力はない。
 ガレオンに従うしかない。村人達は絶望から項垂れ、暴君の言葉を聞くしかなかった。

「おい! 衰弱の激しい奴らを治療しろ。あばら家の補修も急げ」
『はっ!』

 ガレオン軍は速やかに行動へ移った。見る間に村が立て直され、弱っていた村人にきちんとした医療が施された。
 村人達はぽかんとしている。ガレオン自らも村長宅の改修に乗り出し、瞬く間にリフォームしてしまった。……正直、そこらの大工が転職を決意する程度の腕前である。

「貴様らには最低限の住処と医療をくれてやる、明日から土地の開拓に入れ! 働きに応じた報酬も払ってやるから馬車馬のように働け、必要な資材は俺から提供する」

 グングニルから運ばれた農具や種、浄水器具が並び、村人達は驚くばかりだ。
 事前にグングニルには、地方のライフラインを整備するための資材を山と積みこんである。あとはガレオンの一声で配給されるようになっていたのだ。

「何を、企んでいるんだ。俺達からこれ以上、何を搾り取ろうとしているんだ」
「ふん、貴様らは俺の財産だ。俺は得た財を手放すのが何よりも嫌いなんだよ。だからまずは力を蓄えろ、土地を肥やせ! 充分な潤いを得たら俺に変換しろ。こいつは投資だ、将来俺が益を得るためのな。それまでは免税してやる、精々感謝するんだな」

 それからは恒例の労働契約だが、破格の条件に村人は驚くばかり。ガレオン領が相当潤っているからこそ出来るバックアップだ。領地を徒に広げるのではなく、足元をしっかり盤石にしてから次の領地を得ているため、こうした芸当が可能になるのである。
 どうだ元シトリー領民、これがガレオンだ。

 他の魔王領において、ガレオンは悪い評判が広まっている。魔王達が領民達の不満を逸らすためと、ガレオン領へ亡命するのを防ぐため、ネガティブキャンペーンを行っているためだ。
 期待値がどん底だっただけに、村人達からの評価はうなぎ登りだ。将来的にはこの村からも高めの税金を徴収する事になるが、その頃にはそんなのも痛くないくらいに栄えているはずだ。
 それからガレオンは村人達から話を聞いて回り、村が抱えている問題や現状を聞き出した。それらの対応にも速やかに指示を飛ばし、即日解決していった。

「よし次だ! まだ行けるな?」
「問題ありません」

 セレヴィも音を上げずにガレオンを支え、彼の指示を的確にこなしていく。忙しいのだが、不思議と疲れは感じない。困窮している人を救いたいのはセレヴィも同じだ、休む間すら惜しく感じるほど、仕事にのめりこんでいた。
 午前中だけで実に領地の半分を回り、財力に任せたごり押しで問題を解決していく様は痛快その物だ。

「次の街の視察後に休憩をとる、炊き出しの用意をさせておけ」
「既に手を回しました」
「ふん、流石に俺の思考を読めるようになったな、重畳だ。セレヴィも休める時に休んでおけ、終業時間までに全部回らないといけないからな」
「承知しています」

 夕刻を過ぎての活動は部下に必要以上の負担をかける。何としても部下達を定時で終わらせるため、ガレオンは人の倍以上の仕事をこなしていた。
 町に到着した後も、いつも通りに民へ高圧的な態度からの手厚い待遇を与えていく。前にどうして高圧的な態度を取るのか聞いた事があるのだが。

『威厳のない魔王に誰がついて来ると思っている』

 そう答えられた。要は演出というわけだ。この演出のおかげで後に与える待遇がより際立っているから、結果的に綺麗な飴と鞭の構図が出来上がっているのである。ガレオン流の人心掌握術というわけだ。
 なんて感心していると、いつの間にかガレオンがコック服に着替え、エプロンを掛けていた。バンダナを巻いて気合十分である。

「あの、何を?」
「奴隷の人数が多いからな、俺直々に飯炊きしてやる」
「料理、出来るんですか?」
「俺を誰だと思っている? ガレオンだぞ」

 マイ包丁まで持ち出して本気である。その腕前はというと……凄まじかった。
 グングニルから炊き出しに来た調理師達が霞むレベルの腕前だ。華麗に肉を捌き、的確に野菜をカットし、手際よくナンを生地から作っていく。スパイスもガレオン自身で配合した特製である。
 出来上がったのは、絶品のカレー。魔王自ら作り、振る舞う逸品に街人は驚き、大喜びだ。

「セレヴィも食べておけ、午後もきついからな」
「は、はい」

 二人並んでの食事にドキドキしつつ食べてみると、これが美味い。悔しいが、セレヴィの料理よりも遥かに美味かった。
 ……つーかこいつ出来ない事ないんかい。
 完璧超人すぎて隙が無さすぎる。新月の弱体化だって実質無いような物だし、一体天はガレオンに何物を与えている。彼は一体、何を持っていないというんだ。

「俺はお前の品も嫌いではない。興が乗った時にでも作れ」
「ですが、これ以上の物となりますと」
「俺にとってはこれ以上の品になる。例え焦げ付いていようと構わんぞ」
「ちゃんとした物を用意します」

 これまた見事な飴と鞭である。ガレオンに料理を振る舞う約束をしてしまい、セレヴィは戸惑うも、心のどこかでは喜び張り切っていた。
 絶対美味いと言わせてやる。自信はないけど。

「仕事は楽しいか?」
「はい。こうまでスムーズに進むと、とても楽しいです」
「普通ならこうはならん。こうなる事を見越して、二十年に渡り基礎固めに励んできた結果だ。ガレオン領には、魔界の六割を賄えるくらいの力を蓄えておいた。事前の段取りをしていたからこそ、これだけの速度で進められるんだ」

「確かに……開拓のための財源と人員確保、資材の搬入経路。これらを確保しないと、急拡大に対応できません」
「俺の目指す魔界征服は、全土を支配すればゴールというわけではない。奴隷どもが安定して生活できて、誰も死なん環境を整えて初めて成功になる。闇雲に領土を広げるだけじゃ、飢える奴が出るだけだ。そんなもの、本当の支配とは言えんだろう」
「とても大きな夢ですね」
「夢じゃない、計画だ。夢は覚めて消えるが、計画は現実に残り続ける。でもって計画は実現させねば意味がない。そうだろう?」

 何があろうと断行する。ガレオンからそんな決意が伝わってきた。
 ガレオンなら本当に実現できるだろうからワクワクしてくる。誰にも出来ない事を容易に成し遂げそうだからこそ、彼に多くの人が付いてきてくれるのだ。

「それに想定よりもずっと早く事が進んでいる。優秀な秘書が居るおかげだな」
「……! あ、ありがとう、ございます……!」

 時折、不意打ち気味に褒めてくるのはずるい。余計に頑張ろうって思ってしまうじゃないか。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...