「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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44話 新人奴隷に魔王の威厳を見せつけてやる

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 翌日、セレヴィは有休を返上して出勤していた。
 ノアに啖呵を切った以上、休んでなんかいられない。彼女に認めさせるためにも、より一層力を入れて励むとしよう。
 出勤前にノアの顔を見ようと医務室へ行くと、何故かガレオンが居た。医務室はカーテンが仕切られていて、セレヴィは首を傾げた。

「病衣のままうろつかれるのも迷惑だからな、俺の財産を守った褒美として、服を与えてやった。しかし大した奴だ、異種族を見るなど初めてだろうに、身を挺して守るとはな」
「ノアを褒めてくれてありがとう。私が教えた事なんだ。例え肌の色が違えども、守らねばならない命に変わりはないと。それよりガレオン、どんな仕事でも回してくれ。必ず成果を上げてみせるから」
「言わずとも上げているだろう。ま、無理しない程度にな」

 ガレオンからの信頼を感じる。セレヴィが目を細くするなり、医務室から「みぎゃー!」と悲鳴が上がり、ノアが飛び出してきた。

「魔王ガレオン! なんだこの服は! これが捕虜の着る服かっ!」
「捕虜に粗末な物を渡しては俺の面子に関わるんだよ」

 ノアに与えらえたのは、えんじ色のカジュアルなドレスだ。嬉しそうにスカートを揺らし、ガレオンに詰め寄っていく。

「私は誇り高きリティシア王国の騎士だっ、こんな可愛いくて高級そうな服なんか着た事ないからとりあえずありがとう! でも捕虜として扱うならもっと粗末な服を用意しろっ! なんか申し訳なくて強く出れなくなるだろっ! あと言い忘れてたけどよくもセレヴィを大事にしてくれたな、絶対にお前からセレヴィ様を取り返してやるからなっwww」

「文章を整えろ。にしても、どっかの誰かさんも同じような事を言っていたな」
「まぜっかえさないでくれ……それよりノア、笑いながら怒るな。どっちかにしろ」

 上等な服をもらって嬉しい反面、くれた相手がセレヴィをたぶらかした魔王だから素直に感謝できないのだろう。
 それとガレオンが恐いから言葉がしっちゃかめっちゃかになっているようである。

「旅の中で、お前の噂は聞いたぞガレオン。なんでも、魔界でも最悪の魔王だそうじゃないかっ。領民に圧政を強いて搾取し、まるで道具のように扱う悪魔のような男だとっ。実際、この土地に住まう人々を見せてもらったが……皆酷く困窮していたっ。こんな、ろくでもない行政しか出来ない奴を私は信用できないっ」
「だったらどうする?」
「うぎっ……ともかく! 私が剣を取り戻した暁には覚悟しておけよ、今はこの服に免じて見逃してやるが、必ずノア・ラモードとセレヴィ様がお前を倒し、圧政から民を救ってみせるからなっ。だから……首を洗っ……て……待ってりょよ……!」

 ガレオンと話しているだけでこの怯えよう、虚勢すら長続きしない雑魚っぷりである。発言も小物臭が漂っていた。

「暫くは客として扱ってやる、俺達について来て見学するがいい。望むなら簡単な手伝いくらいさせてやってもいいぞ」
「お前の命令なんか聞くもんか!「(ギロリ)」ごめんなさい何でもしますので命だけはお助けを(滝汗)」

 ひと睨みされた瞬間土下座するノアであった。雑魚ここに極まれり。

「ノア君! 主様の靴を舐めるのは私の役割だぞ!」
「んな役割ないから引っ込んでろ堕天使」

 どっからともなく現れたルシファーのせいで余計に場がとっ散らかる。とりあえずドエム馬鹿は外に放り投げておいた。

「情緒不安定で心配だが……ともかくノア、私を見ていてくれ。お前が慕うセレヴィとして恥じない姿を見せてやるぞ」
「はいっ。不詳ノア、しかと見定めさせていただきますっ」
「その前に朝飯食ってこい、まだ時間はあるからな」

 お言葉に甘えて、ノアと朝食を共にする。そこでも彼女は美味しい食事に感激しっぱなしだった。

  ◇◇◇

 出張三日目は街道の整備と鉄道の配備に取り掛かる。
 線路を敷くにも、土地や町々の状況を踏まえた上で計画を立てなければならない。荒れ果てた街道の整備も容易ではない。それをたった一日で済ませようと言うのだから、無茶苦茶な話だ。

 でもその無茶を実現するのがガレオンだ。

 まずは街道の整備から手を付ける。シトリー領の街道は民の安全が全く確保できておらず、魔物の巣は出来放題だし、道はガタガタで馬車もまともに走れない。全くの未舗装状態で、これでは領内の物流も滞ってしまうだろう。
 ガレオンはまず主要都市と生産地域を繋ぐ街道から整備を始めた。現場に赴き、作業員から意見をもらいつつ、的確な計画表を作っていく。

 それと同時並行で鉄道の計画も進めていた。どの土地をどう切り拓くか、必要な物資はどのくらいか、緻密に計算して発注・手配し続けている。
 セレヴィはガレオンと現場の中継役に回り、彼の仕事を支えていた。ガトリングのように打ち出される魔王の指示を正確に振り分け、現場がスムーズに動けるよう働きかける。ノアが傍に居るからか、セレヴィは普段以上の力を発揮していた。

 瞬く間に街道が整えられ、線路工事も迅速に始まっていく。生産地域と都市部を繋げられれば、今後の開拓がより楽になる。物流は血液のようなものだ、滞れば途端に領地は死んでしまう。
 急速な事業展開だと人手不足が付いて回るが、衰弱していた民達も数日中に回復する目途が立っており、領内で必要な人手を確保できる。働き手が増えれば経済も回るようになるし、より開拓も加速するだろう。

 セレヴィは時折、ノアの様子を見ていた。ノアは目まぐるしく動くセレヴィに舌を巻いており、ついて行くのも一苦労なようだ。

 無理もない、ガレオンは一日で数ヶ月分の仕事をこなしている。しかも一度に十個の案件を同時並列で片付けているし、とんでもない処理能力だ。
 全く、受け止めるこっちの身にもなってほしいものだ。

 ガレオンはあえてセレヴィを考慮せずに動いている、彼女ならついて来れると信用しているからだ。彼に応えようとセレヴィは力を発揮し、ガレオンもより加速する。
 ガレオンや作業員達と幾度も協議し、時には計画を練り直して、最適な青写真を描いた。

「ガレオン領にて開発中の新機種ですが、四台が稼働可能だそうです。いかがしましょう」
「予定より一台多いな、殊勝な事だ。全機搬入させろ」
「かしこまりました。では手配をしておきます」

 アレを運用できれば、シトリー領の民達は凄まじい衝撃を受けるだろう。まだ魔界のどこにも運用されていない、最先端技術の結晶だ。
 セレヴィも見せられた時には驚いたものだ。四台でも運用できれば、ガレオン領はより発展するし、シトリー領の開拓も爆発的に進む。それだけ画期的な代物だ。

 ガレオンはセレヴィが立てた秒単位のスケジュールを倍の速度で消化し、僅か数時間で領内全域の工事計画を完成させてしまった。来週には全ての計画が実現しているはずだ。
 おかげで午後の予定を作り直さねばならない。スケジュールを書き換えながら、ノアを見てみた。

 彼女は目を丸くし、あんぐりと口を開けている。ガレオンの辣腕ぶりに驚きを隠せないようだ。
 それがなんだか嬉しくて、セレヴィは上機嫌にスキップした。
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