もしも北欧神話のワルキューレが、男子高校生の担任の先生になったら。

歩く、歩く。

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エピローグ

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 ある休日の、昼下がり。浩二は墓地に向かっていた。
 沢山の花を用意して、線香を持って。大切な幼馴染の所へ、遊びに来ていた。
 高校に入学してから、色々な事があった。結衣が居なくなってから、心の時計はずっと止まっていたが、最近ようやく動くようになった。

 ずっと抱えていた憎しみは、すぐに解決できる物ではない。だけど今は、背中を押してくれる人のおかげで、その感情を素直に受け入れられる。
 だから、もう一度話したくなった。あの時のように、面と向かって話せはしないけど、聞いてもらいたい話が、沢山あるから。
 ゆっくりと歩き、結衣の墓所へ着くと、そこには先客が居た。
 浩二の背中を押してくれた先生、ばるきりーさんが。

「居たんだ、先生」
「む、浩二」

 ばるきりーさんは、にこやかに迎えた。結衣の墓には、ばるきりーさんが持ってきたであろう花が、墓石が埋まるくらいに山ほど供えられていた。

「すごいなこれ。全部先生が?」
「うむ。今月の給料を全額つぎ込んだ。仇を取れた事のお祝いにな」
「おいおい、贅沢すぎるだろ」

 相変わらずどこか振り切れている。けど、ばるきりーさんらしい。
 浩二は花を供え、手を合わせた。ばるきりーさんも隣に跪いた。

「ありがとな、先生」
「急にどうした」

「色々さ。改めて、お礼が言いたくなったんだ。天木の事、俺の事、他にも沢山、先生は助けてくれただろ。それが、嬉しかったんだ。これだけ親身になってくれた人は、初めてだったから。それに……天木にもう一度合わせてくれた。もう、感謝以外何も出来ないよ」

「気にするな。私はただ、そうしたかっただけだ」
「先生だから?」
「それもある。だがそれ以上に、ばるきりーさん個人としてやりたいと感じた。ようは、ただのお節介さ」

 ばるきりーさんは微笑み、そう答えた。

「礼を言うなら、天木結衣にするといい。君を大きく変えてくれたのは、紛れもなく彼女だ。ここまでのいい女、そうそう居ないだろう」
「……そうだな、いい女、だよ」

 浩二は昔を懐かしみ、話をした。

「内気で、弱っちそうに見えるけど、実際は芯の強い奴だったんだ。けどその芯の強さが、かえって心に負担をかけてたんだろうな」
「かもしれん」

 ばるきりーさんは立ち上がった。

「しかしそれは、君にも言える事だぞ、浩二。君も芯は強いが、そのせいで心に負担をかけやすい。今は平気でも、これから先、心を乱すような事柄はいくらでも起こるだろう。社会で生きるのは、理不尽の繰り返しだからな。
 だからこそ、人は教師を求めるのだろうな。生き辛く、苦しい事ばかりだからこそ、心の支えとなる存在が必要だ。教師は心の支えとして、非常に大きな存在感を持っている。故に人は、心のよりどころとして、教師を欲するのだろう」

「そうかもしれないな。で、何が言いたいんだ?」
「私は君の拠り所だ。そう言いたいだけだ。私は君の教師だ。何があろうと、私はずっと、君の味方だ。今後も君は、いくつもの障害にあたる事だろう、心が折れるような事にも、遭い続けるだろう。
 そんな事が続いて、辛くなったら、いつでも私を頼ってくれ。君の心は、私が守る。君はこれからもずっと、私の生徒なのだからな」
「……そうさせてもらうよ」

 浩二は、小さな笑顔を向けた。
 そう、壁を乗り越えても、また次の壁が待ち構えている。浩二の物語はここで終わりではない、これからもずっと、命がある限りいつまでも続いていく。
 その中で辛くなる事も、苦しくなる事もあるだろう。挫折を味わい、涙が流れる時もあるだろう。そうして心が悲鳴を上げたら、躊躇わず、この先生に頼っていこう。

 神話の世界から飛び出してきた、おかしいけれど、最高の先生を。
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