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第五話 不発

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 朝、起きて真っ先にしたことは、SNSのチェックだった。
 昨日の夜、結局できたのは4発言のみ。
 最後は寝落ちしてしまった。

 なんか反応ないだろうか、と寝ぼけまなこをこすりこすりスマートフォン立ち上げるが、案の定、誰も何も返事をくれないし、いいねもない。

 くっそぉ……誰からも無反応~~~~。
 わかっていたけどね!!

 起き上がりながら、おはよーツイートなるものをしてみるけれど、なしのつぶてだろうなとも思ってる。やさぐれてやる。くぅ。

 最初に洗濯機に洗濯物を投げ込んで回した後は、朝ご飯の支度と弁当の準備だ。
 学校に行く前に部屋の片づけや掃除を軽くしてから家を出た。

 多分、母は、朝は起きてこないと思う。
 いつ起きて、いつ寝ているのかわからないけれど、朝より夕方以降の方が調子がいい時があるみたいで。

 朝に置いておいたご飯が、帰ってきた時にまだおいてあったりとかもよくあるし。とりあえず、母の分のご飯は置いておくが。

 学校に行きながらも、スマートフォンとにらめっこをしていた。


 元々、アイドルとかに興味がないのにこんなアカウントを作っていること自体に問題がありそうだ。
 それなら本当にニッキーを好きな人を真似するところから始めようか。
 とりあえず、同じくニッキーファンぽい人を片っ端からフォローして、ニッキー関係のハッシュタグもチェックする。

 そういえば、ニッキーってどんな人なんだろう。

 ここまでしてようやくそんな基本のことを考えた。

 プロフィールは一応わかっている。しかし、その周囲というか、どういう活動をしているのかとか経歴があまりわかっていないかもしれない。
 まず、ニッキーが所属しているマンダリンというアイドルグループを調べるが、男性にもアイドルっているのね、って思うレベルで芸能人に興味がなかったため、その活動内容の多彩さに驚く。

 大体、アイドルって何してんの? 歌を歌ってるやつ?と思ったら、それはアイドル歌手というやつだそうで。他にもドラマに出たり、舞台に出たりする役者さんだったり、ダンスが得意ならミュージカルとかもしているらしい。
 いわゆるなんでも屋か?
 じゃあ、アイドルってなんなのさ、と思ってそちらを調べれば、子供じゃないのと思うレベルの子もいて。そういうのはチャイドル、ジュニアアイドルというそうな。
 児童労働違反とかないのかしらとか、本人たちからすれば失礼かもしれないことを考えながらも調べるのを終えた。
 かしこさが1あがったかもしれない。

 ニッキーのファンは当たり前だけれど、女性が多い。
 集めたニッキーのファンコレクションから、彼女たちの情報を分析して。
 発言内容やプロフィールからすると、どうも高校生女子が一番人数が多そうだ。
 自分もそのうちの一人かとすれば、ニッキーのファンとして想定されているターゲット層に自分も一応あてはまっているのだろう。

 学校に着いてからも、数学のノートの裏側に必死になって、どういうプロフィールだったら、同じニッキーのファンが安心して自分をフォローバックを貰えるかを考えていた。
 なぜ数学のノートを使っていたかというと、唯一ノート提出がないから。
 ノート提出がある科目だったら、こんな落書きをしてたら評価点が下げられてしまう。

「まず、アイコンとヘッダーをいい感じにするところからかなぁ」

 はぁ、とため息をつく。
 いい感じとはどんな感じ、と自分でツッコミを入れたくなるけれど。
 プロフィール欄というところを開くと一番目立つといっていい場所にあるそれがヘッダーとアイコンだ。
 ここを安心、信頼、という感じにすれば、こんな私に対しても「お友達になってもいい!」と思ってくれないかなぁ、と。
 中の人、陰キャだけどね。騙されてくれ。

 そして、今日の学校生活はいつも以上に陰キャ爆発してた。
 授業中はさすがに真面目に授業を聞いていたけれど、休み時間も昼食中もずっとスマホとにらめっこで。
 自分からフォローをしていた人にフォローをしてもらった時には、ガッツポーズをとってしまった。
 フォローをすればフォローを返してもらえるかもしれないということがなんとなくわかってきた。

 バイトに行こうとしながら、そんなことを考えつつ歩いていたから、声を掛けられたのも気づかなかった。

「そこのお嬢さん……ねえ、ちょっと、無視しないで!」

 つん、と肩を突かれて、ようやく自分が呼ばれているということが分かった。
 
「マドカさん!?」

 なんでいるの!?
 思わず周囲を見回したら、マドカさんの後ろに黒い、またなんか高そうな車がありました。
 昨日の車とは違うけど、貴方、この車どこから持ってきたの?

「どうしたんです?」

 警戒しながら返事をしたら、車に乗れ、というかのように車を指さされて、おいでおいでされた。
 同じ制服を着ている人達が、じろじろ見ながら通り過ぎていくけれど、その視線が痛い。

「今日、バイトなんですけど!」
「それ、何時から?」
「……5時です」
「じゃあ、急いで用事済ませれば間に合うよ。乗って」

 人の話聞いてます?
 しかし借金を抱えている身からすれば、貸主の命令を断れる状況ではなかった。
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