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第十話 マドカさんて何者?
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家に帰って着替えていたら、スマートフォンから着信音がした。
「あー、ニッキー情報か」
見ればもうさすがに慣れたマドカさんからのメールだ。マメに入ってくるニッキー情報をざっくりと確認をする。
ただそれをツイートするだけでも、それなりにリツイートが稼げるお宝だと気づいた。
その有用さに気づく人が増えたのか、フォローしてくれる人もぼちぼち増えてきたけれど、それだけではなんか弱いんだよなぁ。
私という人間に対する属性が弱いというか、もう一つ何か欲しいところだ。
こんな考え方ができるようになったのも成長だろうか。
小田さんのおかげで、前よりフォローバック率が高くはなったのだけれど。
しかし、なんでこんなにニッキーの情報が早いんだろ。
マドカさんって、ニッキーのマネージャーとかかなぁ?
でも、そうなるとあの笹原って名刺はなんなんだろう。
いや、マドカの方が本名ではない可能性が高いのか……ほんとにスポーツ用品売ってるのかな……想像つかないんだけど。
今日は早く寝ないと。だって明日はお休み。土曜日はマドカさんに報告をする日なのだから。
◇◇◇
待ち合わせた11時に最初に二人で入った喫茶店に顔を出すと、マドカさんはもういた。
テーブルの上でパソコンを開いて、いかにも仕事してますというのが明らかだった。いったいどれくらい前からいたんだろうか。
「こ、こんにちは」
こわごわ横に立って声をかけてみたが。
「うん……ちょい待って」
顔の表情を動かすのも面倒というくらいにおざなりで返事された。
腹がたったから、スパゲティナポリタンとオレンジジュースを豪勢に頼んでやろう。どうせ支払いはマドカさんだし。
マドカさんは一瞬ちらっとオーダーする私を見たが、何も言わなかった。
母を相手している時とのこの態度の差。完璧舐められてるなと思う。相手が小娘だと思って!
しかし、見てる分にはマドカさんイケメンだよな~と思わず観察していよう。見るだけなら害はないし。
何か悩み事でもあるのか、難しい顔で液晶画面とにらめっこをした後、マドカさんはパソコンをしまった。
大人って大変なのね、と思わされた。
「ところで、志保さん。ちゃんとパソコン使ってる?」
開口一番、いきなり訊かれた。挨拶くらいしようね? と思うが。
「あー、あんまり使い方がよくわからなくて」
思わず目が泳ぐ。
「だと思った。どうせWi-Fiの設定もしてないでしょ。」
パソコンを入れた袋の中にはご丁寧に使用説明書とかも入っていたのだけれど、取り出すこともなく袋の中に入れたまま投げっぱなしになっている。宝の持ち腐れもいいところだ。
「今度はそれの設定と、使い方を教えるから持ってきて」
「え……」
「絶対、そっちの方が色々と作業できるからね。作業を楽にする手法は積極的に学んで、取り入れていかないと時代に取り残されて結果負けるよ?」
露骨に嫌そうな顔をしてしまったけれど、じろっと睨まれて諭されてしまったのだが……。あのう、私は何と戦っているんでしょうか。
「動画は、スマートフォンでもできるけれど、パソコンで編集作業をした方がいいだろうし。たいていのものはそう。キーボード使える方が早い」
だからなんでマドカさんはいつもいつも私に動画をやらせようとするんだろう。
向いてるとでも思っているのかなぁ。
「私のスマホでも動画撮れます?」
最低の機能しかついてないと思うんだけれど?
そんな鮮明な画像撮れないよ? それに私の腕なら常時ピンぼけるよ?
私がそう言いながら、自分のスマートフォンをずいっと突きつけたら、少し寄り目でそれを見てたけれど、おんぼろな古そうな機種と判断したのか、カメラの準備も必要そうだな、と言いやがったよ、もう。
かろうじてガラケーではなかったのだけれどね。
「でも、動画の編集とかも、無理ですよ!」
有名な動画クリエイターとかの24時間密着動画とかのだとずーっとずーっと編集作業しかしていなくて画がつまらないという話をきいたけど……。それくらい大変なお仕事なんだなと思うし。
私がその立場になっても、そんな時間作れない。
「ああ、そんなのはやりよう。例えばゆっくりとか言われる動画なら時間かかるけれど、そういうのじゃなければ、撮ったものを即出しも可能だしね。ライブ配信とかもあるしね」
頭を使いなさい、頭を、と言われて、うう、と黙り込む。
しかし、私のライブ配信なんかより、猫の動画見る方がよほど楽しいと思うけどなあ。
少し話が落ち着いて、私のところにスパゲティが届く。
フォークを中に刺しこんでくるくる巻きながら聞きたかったことを訊いてみた。
「そういえば、マドカさんて本名、笹原さんなんですか?」
「え? 違うよ」
「じゃあ、こないだの名刺、偽物ってことですか!?」
「ああ、あれか。名刺は本物だよ。でも名前は偽物。いや、偽物っていうのも違うんだけれど……ビジネスネームって知ってる? 仕事で使う便宜上の名前。作家のペンネームや、お水の人達の源氏名みたいなものだね」
「じゃあ、偽名ってこと!? 万が一母がマドカさんに連絡取ろうとしたらどうするんですか!?」
嘘ついてたってばれちゃうじゃん。
「いや、この会社に笹原で問い合わせてくれれば、ちゃんと俺に繋がるよ。でも、マドカの連絡先の方が早くて確実だから、そっち使ってね」
「じゃあ、笹原さんで仕事もしているってことですか?」
「そういうことだね」
なんかややこしいな。
でも、なんで笹原という名前で仕事してるんだろう。本名がものすごくレア苗字で他の人が読めないとか、呼ばれると笑っちゃうような名前だったりするんだろうか。
思わず、そんな失礼なことを想いながら、マドカさんをじろじろ見てたら。
「なんか変なこと考えてない?」
そう即座に看破されたのだけれど。
……マドカさんって本当は何者なんだろう……?
「あー、ニッキー情報か」
見ればもうさすがに慣れたマドカさんからのメールだ。マメに入ってくるニッキー情報をざっくりと確認をする。
ただそれをツイートするだけでも、それなりにリツイートが稼げるお宝だと気づいた。
その有用さに気づく人が増えたのか、フォローしてくれる人もぼちぼち増えてきたけれど、それだけではなんか弱いんだよなぁ。
私という人間に対する属性が弱いというか、もう一つ何か欲しいところだ。
こんな考え方ができるようになったのも成長だろうか。
小田さんのおかげで、前よりフォローバック率が高くはなったのだけれど。
しかし、なんでこんなにニッキーの情報が早いんだろ。
マドカさんって、ニッキーのマネージャーとかかなぁ?
でも、そうなるとあの笹原って名刺はなんなんだろう。
いや、マドカの方が本名ではない可能性が高いのか……ほんとにスポーツ用品売ってるのかな……想像つかないんだけど。
今日は早く寝ないと。だって明日はお休み。土曜日はマドカさんに報告をする日なのだから。
◇◇◇
待ち合わせた11時に最初に二人で入った喫茶店に顔を出すと、マドカさんはもういた。
テーブルの上でパソコンを開いて、いかにも仕事してますというのが明らかだった。いったいどれくらい前からいたんだろうか。
「こ、こんにちは」
こわごわ横に立って声をかけてみたが。
「うん……ちょい待って」
顔の表情を動かすのも面倒というくらいにおざなりで返事された。
腹がたったから、スパゲティナポリタンとオレンジジュースを豪勢に頼んでやろう。どうせ支払いはマドカさんだし。
マドカさんは一瞬ちらっとオーダーする私を見たが、何も言わなかった。
母を相手している時とのこの態度の差。完璧舐められてるなと思う。相手が小娘だと思って!
しかし、見てる分にはマドカさんイケメンだよな~と思わず観察していよう。見るだけなら害はないし。
何か悩み事でもあるのか、難しい顔で液晶画面とにらめっこをした後、マドカさんはパソコンをしまった。
大人って大変なのね、と思わされた。
「ところで、志保さん。ちゃんとパソコン使ってる?」
開口一番、いきなり訊かれた。挨拶くらいしようね? と思うが。
「あー、あんまり使い方がよくわからなくて」
思わず目が泳ぐ。
「だと思った。どうせWi-Fiの設定もしてないでしょ。」
パソコンを入れた袋の中にはご丁寧に使用説明書とかも入っていたのだけれど、取り出すこともなく袋の中に入れたまま投げっぱなしになっている。宝の持ち腐れもいいところだ。
「今度はそれの設定と、使い方を教えるから持ってきて」
「え……」
「絶対、そっちの方が色々と作業できるからね。作業を楽にする手法は積極的に学んで、取り入れていかないと時代に取り残されて結果負けるよ?」
露骨に嫌そうな顔をしてしまったけれど、じろっと睨まれて諭されてしまったのだが……。あのう、私は何と戦っているんでしょうか。
「動画は、スマートフォンでもできるけれど、パソコンで編集作業をした方がいいだろうし。たいていのものはそう。キーボード使える方が早い」
だからなんでマドカさんはいつもいつも私に動画をやらせようとするんだろう。
向いてるとでも思っているのかなぁ。
「私のスマホでも動画撮れます?」
最低の機能しかついてないと思うんだけれど?
そんな鮮明な画像撮れないよ? それに私の腕なら常時ピンぼけるよ?
私がそう言いながら、自分のスマートフォンをずいっと突きつけたら、少し寄り目でそれを見てたけれど、おんぼろな古そうな機種と判断したのか、カメラの準備も必要そうだな、と言いやがったよ、もう。
かろうじてガラケーではなかったのだけれどね。
「でも、動画の編集とかも、無理ですよ!」
有名な動画クリエイターとかの24時間密着動画とかのだとずーっとずーっと編集作業しかしていなくて画がつまらないという話をきいたけど……。それくらい大変なお仕事なんだなと思うし。
私がその立場になっても、そんな時間作れない。
「ああ、そんなのはやりよう。例えばゆっくりとか言われる動画なら時間かかるけれど、そういうのじゃなければ、撮ったものを即出しも可能だしね。ライブ配信とかもあるしね」
頭を使いなさい、頭を、と言われて、うう、と黙り込む。
しかし、私のライブ配信なんかより、猫の動画見る方がよほど楽しいと思うけどなあ。
少し話が落ち着いて、私のところにスパゲティが届く。
フォークを中に刺しこんでくるくる巻きながら聞きたかったことを訊いてみた。
「そういえば、マドカさんて本名、笹原さんなんですか?」
「え? 違うよ」
「じゃあ、こないだの名刺、偽物ってことですか!?」
「ああ、あれか。名刺は本物だよ。でも名前は偽物。いや、偽物っていうのも違うんだけれど……ビジネスネームって知ってる? 仕事で使う便宜上の名前。作家のペンネームや、お水の人達の源氏名みたいなものだね」
「じゃあ、偽名ってこと!? 万が一母がマドカさんに連絡取ろうとしたらどうするんですか!?」
嘘ついてたってばれちゃうじゃん。
「いや、この会社に笹原で問い合わせてくれれば、ちゃんと俺に繋がるよ。でも、マドカの連絡先の方が早くて確実だから、そっち使ってね」
「じゃあ、笹原さんで仕事もしているってことですか?」
「そういうことだね」
なんかややこしいな。
でも、なんで笹原という名前で仕事してるんだろう。本名がものすごくレア苗字で他の人が読めないとか、呼ばれると笑っちゃうような名前だったりするんだろうか。
思わず、そんな失礼なことを想いながら、マドカさんをじろじろ見てたら。
「なんか変なこと考えてない?」
そう即座に看破されたのだけれど。
……マドカさんって本当は何者なんだろう……?
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