kings field 蜂蜜とエリクサー

祥々奈々

文字の大きさ
71 / 109

エタニティ教会

しおりを挟む
 「私はエタニティ(永遠)教会の巫女でアリア・テイラーと申します」 法曹の巫女は名乗った、銅色の髪に緑色の瞳、澄んだ白い肌が神秘的だ。
 「私達は・・・・・・怪しい者ではないといっても信じては貰えないだろうな」
 「いいえ、おおよそ分かります、貴方たちもこの世界とは別の世界からお出でになったのではありませんか?」
 アリアが肩にかけていた小銃を差し出した。
 「これは・・・・・・日本軍のものか!?」手に取ると銃身に菊紋が刻んである、九九式短小銃と呼ばれるものだ。
 ボルトを引いて弾倉を確認すると空だ、弾は七.七ミリ、連合軍にはない口径。
 「弾は数発残っています、以前にこちらに渡ってきたホシジロ・シン様より譲り受けたものです」
 「!」「やはり日本人か」
 「その方は何処に?」クロワが上体を起こしている、すかさずフレディが背中を支えた。
 「既に亡くなりました、神殿と魔王イーヴァン様を守るために異世界の武器で自爆なされました」
 「自爆?異世界に来てまで自爆とはジャップは余程死にたいらしい」
 「羨ましいぜ、道理で親近感を覚えるわけだ」
 「そちらのお二人はお怪我をなさっているご様子、よければ教会で手当を、お薬の用意がございます」
 「本当か!?治せるのか」
 「はい、その傷をつけたものは見えなかったのではありませんか?」
 「あの化け物を知っているのか」
 「それはイザナギアリ、冥界の神殿と地下迷路に巣くう魔獣です、あの針で獲物を刺し殺して中身を吸い取る恐ろしい山の使徒です、最後は紙のようになった皮だけしか残りません」
 「ゾッとするな、俺達はまだ運が良かったのだな」
 「他にも危険な使徒はいます、ここは早く移動した方が良いと思います」
 「しかし、夜の森は危険じゃないか、朝までまって移動しよう」
 「いいえ、どちらにしても太陽の光はありませんから」
 アリアが松明を向けたのは洞窟の奥だった。

 洞窟は迷路だ、幾重にも分岐する道を登り下る、方向感覚が早々に消失していた、同じような岩肌が続く、大きさもあまり変化はない。
 「どこまで続くのだ、鍾乳洞ではないようだが人力で掘ったものなのか」
 「言い伝えでは、古の時この世界を支配していたのは竜であったそうです、この山は竜たちの墓であり偉大なる竜の王が眠る場所が神殿であるとされています」
 「というとはここは竜の腹の中なんだな」
 「はい、この洞窟は朽ちて積み重なった骨の中です、何千、何億の星の下を過ごした神々の躯」
 前を行くアリアは得体のしれない四人の男に対しても怯える素振りも警戒するところもない、よほどこの世界は道徳に満ちているか、それとも対応する力を持っているかだ、油断できないとマットは警戒レベルを大にする。
 途中で何度かの休憩を挟み、着いたところは山の中腹に縦横五十メートル程度の開けた台地、山際に白い石を組んだ教会と住居があった。
 扉を潜ると中央に見えるのが祭壇か、翼のある神は竜というより鳥に見える。
 「さあ、どうぞお入りください」
 蝋燭が照らす灯が白い、そして白色電球のように明るい、灯具を除くと石のような青い玉が燃えている、そして温かい。
 通された部屋にはベッドとテーブルもあった、山小屋のような雰囲気だ、生活感がある、先日まで誰かが暮らしていたようだ。
 「ここは山で暮らす方々の避難小屋の役割も兼ねています、結構利用する方が多いのですよ」
 巫女は笑った、慣れているから恐れなかった?今は巫女以外に人気はない。
 「まずは治療です、患部を洗って化膿部分を取り除きましょう、そのあとエリクサーを使用します」
 桶に清水と清潔なタオルが用意された。
 「エリクサー?こちらの薬か」
 「はい、とても良く効きます、だいたいの疾病や怪我は完治できます、エタニティ(永遠)の由来にもなっているものです」
 傷口は太い鉛筆ぐらいの穴がポッカリと開いている、吸い込むためなのだろう貫通はしていない、グレイの方は一部組織が融解して腐敗臭を放っている。
 「溶解液が残っているようです、少し痛みますが吸い出します」
 アリアは注射器のようなものを傷口に押し当てるとポンプを引いた「ぐくっ!!」グレイが痛みに顔をしかめる、腐った組織が吸い出された。
 「クロワ様の方は大丈夫ですね」
 アリアは一度部屋を出ると数分で戻ってきた、盆の上には金色の小瓶が乗せられていた」
 「それがエリクサーというものか」
 「そうです、人類の起源を源とするもの、ですがこの世界でももはや遺物、その伝承は失われつつあります」
 「貴方も伝承者?」
 「エタニティ教会は各地にあり伝承者の巫女が在籍する教会も数か所ですが残っています」
 小瓶の栓を開けると良く磨かれたティーポットのような容器に移すと二人の傷口に少しずつ流し込んでいく、傷口に触れると蝋燭を落としたように瘡蓋となって傷口を塞いでいく、痛みはないようだ、二人は自分の足を不思議そうに見つめている。
 「後はこちらを飲用してください、毒ではありませんからご安心を」
 言うとアリアはティーポットにあった残りをショットグラスに移して自分の口に運び飲み干して見せた。
 「わかった、頂くとしよう」
 「興味深い、何から創られているのでしょう」
 「クロワ様!」フレディは呑ませることを躊躇している。
 「大丈夫さ、いずれにしてもこのままでは敗血症になる、神は裏切らない」
 二人は小瓶の中身を飲み干した。
 「・・・・・・」クロワは空になった小瓶を少し酔ったような目で見つめている。
 「美味いな」グレイは感嘆した。
 「大丈夫ですよ、これは人間用ですから、拒絶反応は起きません」
 「人間用?さっき魔王とかいったな、別種なのだな」
 「この世界には人間族、魔人族、エルフ族、そして神獣がいると言われています」
 「言われているとは未確認ということですね」クロワの顔に血色が戻っている。
 「ふふっ、神獣は見たことないです」笑った顔がかわいい。
 「ちょっと期待しちまったぜ、神が顕在化しているなら会ってみたかったな」
 「でも魔人とエルフは本当です、証拠に私はエルフ族です」
 髪をかき上げると耳が長い 「こう見えて皆さんの三倍は生きています」
 「!?」四人は目を見張った。
 
 「私も転移者です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...