kings field 蜂蜜とエリクサー

祥々奈々

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待ち伏せ

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 ドコドコドコッ、グワーンッ、グワーンッ 蒸気機関とは違う機械音!
 これはデルとルイスの時の!そう思った瞬間に殺気を額に感じて伏せた!!
 パアァンッ キュンッ 発射音と同時に空中を何かが切り裂いていった、銃弾だと直ぐに理解した。
 五百メートルを狙撃する帰還者、奴らがここにいる。
 「エミー殿!どうした!?」監視台にソムレイが登ってきた。
 「伏せろ!銃に狙われている!」
 こちらからは相手を確認出来ない、これでは圧倒的に不利だ。
 「城壁の上を走って森へ飛び降りる、行くぞ!」
 「承知!」
 「背を低くして走れ!!」
 ダッ パアァンッ 直ぐに銃撃音が来た、バキャンッ 城壁に着弾して石榑が舞う、正確な射撃だ、足を止めれば撃たれる。
 森が迫る、二人は積まれた石を蹴って高木の枝に取りつくと柵の死角へと身を隠す。
 それ以降銃声が聞こえる事はなかったが代わりに何かの乗り物の音が大きくなる!追ってきている。
 「無事か?サムレイ」「ああ、怪我はない」
 「どこから撃っていたのだ、見えなかったぞ」
 「異世界の武器だ、射程は五百メートルを超える、エロースたちが危ない、ここでくい止める、貴方はこれ以上付き合う必要はない、このまま逃げろ!」
 「冗談は止してくれ、女一人を窮地に残して逃げるなど末代までの恥じゃ」
 「師父と同じ事をいう、貴方は日ノ本の人か?」
 「平たく言えばそうだが、琉球という島の出身だ、身内に日ノ本のいるのか、世界は狭いな」
 「分かった、しかし相手の銃は桁違いに正確で速い、相対したら止まるな、正中を外して動き続けろ、闘ってはいけない、足止め出来ればそれでいい」
 「承知した」
 二人は木から降りると再び大門の方向へ走った、帰還者たちをこちらに惹き付けなければならない、街道を行かれたら追いつかれる。
 エミーは後ろを振り返らず俊足を飛ばす、サムレイをあっという間に置き去りにした。
 「はっ、速すぎる、何て足だ!」流石に息が上がる。
 ドォコココココッ ガチャン ドゴコココココッ 機械音が大門を出た。
 パアッンッ パアァンッ 連続した発射音、木々の間から眩い光が見えた、篝火などではないもっと白い光が動いている、速い、馬並みの速度だ。
 「こっちに来る!?」
 咄嗟に脇の藪に飛び込んで身を隠すと、直ぐに白い光の主が横切った、小さな鉄の馬車だ、ただし馬がいない、荷台だけで動いていた。
 男が二人乗っている、見たことのない服装だ、マスケット銃に似た細長い銃を担いでいた、さっき狙ってきたのはあれに違いない。
 エミーはどうした?まさかやられたのか!?不安が頭を過った。
 「あれは人じゃない」
 「い゛っ!?」いつの間にかエミーが後ろにいた!心臓に悪い。
 「いつの間に!?なぜ気配がない、あれだけ走って息も乱れないとは・・・・・・」
 「あの皮膚の下には別な生き物がいる、恐らく蛇だ」
 エミーの指が首元に伸びる、三点脈拍。
 「音が大きくなると早く動く、蒸気機関と似ているが違うものだ、なら馬のようにジャンプして障害物を躱すことはできないだろう、戻ってくる前に道を塞ぐ」
 石を道に投げ入れた。

 「アダム・ワン、これ以上は無駄だ、戻ろう」
 「ああ、逃げられたな」
 「大した野郎だ、狙撃も避けた、外したわけじゃない」
 「野郎?違うな、あれは女だった」
 水平対向二気筒ディーゼルエンジンのサイドカー、このエンジンはオリーブオイルでも走行が可能だ、出力は半分以下だが石油の概念がない世界では仕方がない、馬よりいくらかはマシだ。
 「ただの人間にしては早すぎる」
 「魔人の系譜だろう、我々のターゲット、アリアの仇だ」
 「アリア・・・・・・誰だ、誰の事だ?」
 「魔人に殺された・・・・・・」
 「そうだったか、アリアの仇を取って、そして空へ帰ろう」
「空はいい、海は見下ろしてこそだ、水の中では生きられない」
ガリガリッ バックギアはあるが狭い道での切り替えしは苦手だ、やはり整備されていない道での機動力は馬に分がある。
ドゴココココッ アダム・ワンとアダム・ツウは来た道を折り返した。

「ちっ!!」
暫く戻った所で再びブレーキ、ライトが照らしたのは道を塞いだ岩と枝、女を見失った場所の近く、どけるには手間がかかりそうだ。
「頭のキレる野郎だ」
「女だよ」
アダム・ツウは銃を降ろすと障害物を退けるためにサイドカーを降りて枝に手をかけた。
ドスッ 「!?」 障害物の中から銀鱗が伸びてその身体を貫いていた。
「なっ、なんだ・・・・・・これ!?」
刀は正確に肺から心臓を貫いて背中に抜けている、即死でもおかしくない。
ゴボッ 逆流した血が口から溢れた、藪の中に光る目に見覚えがある。
その手がガシッと刃を掴んだ 「!?」以外過ぎる反応だ。
「おっ、お前は・・・・・・アリア!」
アダム・ツウの異変にワンが気付く。
「どうしたアダム・ツウ?」
血だらけの顔が振り向きながら仰け反るとバタリと倒れた、その一瞬、銀鱗が藪の中に吸い込まれるのが見えた!待ち伏せだ!!
即座に腰のサブマシンガンを抜くと パパパパパンッ 一連射を藪に打ち込む、バオッ 白い影が飛び出す! 人ではない獣か大型の鳥に見えた。
「!?」
あの女だ、逃げるどころか襲うことを狙っていたのか!
残像に向かって反射的に銃を振った、ガインッ ババンッ 「ぐおっ!!」
しかし!女の刀とサブマシンガンがぶつかり薬室の弾が爆発した!
白い影が地面を転がり止まった、暴発した破片でダメージを負ったか、胸のあたりが赤い。
驚いたことにサブマシンガンは銃身が切断されていた、刀で鉄を切っただと?             
止めを刺したいが銃がない、サバイバルナイフを抜いてゆっくりと動かない女に近づくとようやく顔が見えた「!?」「アリア?」
霞みのかかった記憶の中で唯一はっきりとしたもの、始祖たるアールヴの女、アリア。
守ることが出来なかった、悲しい悔恨の記憶。
「そんな・・・・・・馬鹿な!」
ガサッ ダッ 「シッ」 気配に振り向くと拳が飛んできていた!バキィッ「ガッ!!」金槌で殴られたような衝撃でよろめき膝をつく。
ズシャッ もう一人いた!分厚い体格の魔獣がアリアを担いでいる。
「まっ、待て!」「アリアッ!!」
ダッダッダッ ザザザッ 魔獣が森へとアリアを連れ去っていく!
「駄目だ!アリア!アリアーッ!!」
アダム・ワンの叫びは暗い森に吸い込まれ思い人には届かなかった。

エミーの奇襲は嵌ったに見えた、障害物に置いたガレキや樹木の影から気配を消した刺突、それから飛び出しての斬撃は猫科の猛獣を思わせた、二人目も殺ったに見えた時、敵が持った銃が爆発した!運悪く暴発はエミー側に破片を吹き飛ばし意図せぬ反撃を貰うことになってしまった。
担いだ身体は見た目通りの軽い、森の中でも難なく背負ったまま走ることが出来た。
「エミー!!」呼びかけても返事はない、その身体もダラリと力なく伸びてしまっている。
月明りの下に小川を見つけた、岩を背もたれにしてエミーを降ろすと首から胸にかけての服が破れて出血している、処置が必要だ。
「失礼するぞ」ボタンに手をかけて胸前を開けさせる、外見どおり薄く脂肪のない筋肉、どうしてあれほど早い動きが可能なのか不思議だ、更に女性にあるはずの双丘がまるでない。
そんなことより傷だ、服を突き破った銃の破片が幾つも突き刺さっている。
手で掴める大きなものを取り除く、ステゴロ試合から真っすぐ逃げてきたサムレイは何も持っていない、エミーの腰バッグを探ると綺麗な布と何かの小瓶があった。
「なんだ、これは?」薬なのか酒なのか分からない、とりあえず布を借りて傷を洗った。
「!」銃創だ、破片だけではなく弾丸が食い込んでいる、深さは分からない、摘出は無理だ。
馬車で逃げたエロースたちと合流したいが・・・・・・ニースまで担いでいては到底持たないだろう。
思案に暮れたサムレイの脇で、緑の瞳が薄く開き始めた。
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