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オアシス
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カツミとシープ、マンティコア一族の脱走者、歳は十五歳、カツミはセカンドと呼ばれる雑兵クラスの男の子、シープはファーストと呼ばれるエリートクラスの女の子だがカツミの怪我はシープを庇ってのものだという。
複数の切り傷、追手の三人は二人に対して実力が相当に上だった、殺すだけなら一撃で良かったはずだ、弄び嬲った。
バカな連中だ、自分の強さをひけらかす様な事をしなければエミーに命を取られることはなかった。
部屋にいたシープは緊張の糸が切れてグッタリとしていたが、エミーの姿を見てビクリと身体を強張らせる。
自分たちを嬲った三人をいとも簡単に葬った、森の悪魔が再び目の前に現れた。
「一つ言っておく、私達の事については詮索しないで、知ってもいい事はないわ」
「分かりました・・・・・・エミー・・・さん」
「君たちは今後どうしたい?何処か当てがあるの」
「・・・・・・」
シープは疑り深い、処置を受けて寝ているカツミの前に立ち塞がる、その目の奥から警戒の色が消えることはなかった。
「君たちを如何にかしても私にメリットが無い事は分かるだろう、知りたいのは今後も追撃の手が伸びるのかだ、あるなら迎撃が必要だ」
「私たちを放り出せば済むことです」
「私ならそうする、でも彼女は絶対にしないわ」
「彼女?双子なのね、あっ、ごめん、聞かない約束だった」
「違う、他人の空似よ」
「そう・・・・・・なんだ」上目遣いの目は疑いに満ちている。
「君たちも暴力を生業にしてきたものなら分かるだろう」
氷雪のような気配に打ち付けられる、悪魔がその気になれば自分たちの生涯は今この瞬間に終わる、話さなければ殺される、選択肢は無かった。
「王都で仲間と先生たちと合流することになっているの・・・・・・生き残っていればだけど」
「期限と場所は?」
「分からない、行けば先生の方から接触してくるはず」
「先生の正体を知っているのか」
「私は・・・・・・知らない、カツミは知っていると思う」
「思う、か、いいだろう、王都まで送るわ」
「えっ!?」
「追撃は必ずある、その責任の一端は私にもあると言える、私と来るなら君たちを守る」
「何故、どうして私たちのために!?」
「貴方たちは期待できるから・・・・・・いえ、私の都合ね」
「?」
「こっちの話、私と来るなら最大限の安全を保障するわ、出発は今週中になる、それまでにカツミを歩けるようにして」
黄金の液体が入った小瓶をテーブルに置いた。
関わった多くの人と再び会う、共感することで多くの感情を貰うことができる。
それぞれに複雑な色、人には様々な感情が生きている。
自分の望みは何なのか、物心が付くまで分からなかった、他人にあるものが自分には無い事を知った。
その羨望は心を静かに焼く、悲しくも辛くもない絶望があった、エミーの心の世界には乾いて凍てつく荒野が広がっている、そんな荒寥とした景色の中にあるオアシスのような場所、幸せな人と出会い共感することでのみ永久凍土を溶かすことができる。
そこは何処よりも心地よい、もっとオアシスを広げたい、暖かな春の風で満たしたなら自分にも人を愛する心が生れるだろうか。
それはどんな気持ちで感覚なのだろう、共感しただけでは全てを理解することは出来ない、そこはフローラやカーニャたちが住まう場所だ。
そこは彼の地よりも遠い場所、永遠の憧れ。
手に入れたオアシスを何より失いたくはない、そのためならどんな代償でも払おう、毒蜂に堕ちてでも守る。
さざ波の音が聞こえる、ゆっくりと揺れるベッドが心地よい、ああ、そうだ、儂がいる場所はこうでなければ!地面が揺れていないと酔ってしまう、揺れているからこそ正常を保てる、船乗りとはそういうものだ。
木の匂いが新しい、新造船?・・・・・・儂は・・・・・・
ミューウッ 目の前で鳴き声がした、胸の上が僅かに重い。
ザリザリと鼻の頭を舐められている、なんだ、よせ、くすぐったい、無意識に手が伸びた。
ガブッ 「あ痛ぁ!」鼻の頭を齧られた。
覚醒した視界にあの黒猫がいた。
「あんたよっぽど好かれたねぇ、ここまで追ってきているとは思わなかったよ、どうやってここまで来たんだか」
「!?」窓のない船室にいたのは浅黒い骨太の女、おおよそ海とは関係なさそうに見える。
女の腕の中に灰色の猫が丸まっている。
「あんたは誰だ?ここは何処なんだ、何故儂は・・・・・・」
「覚えていないのかい、あんた多分丘の崖から落ちたんじゃないか、この子猫たちがあたしたちを案内してくれなきゃ死んでたよ」
「あっ!」思い出した、そうだ、この黒猫を抱いたまま足を滑らせた、滑落したのか。
「思い出したようだね」「あたしは短槍のエルザ、冒険者さ」
エルザと名乗った女がカップにお湯を注いでくれる。
「世話になった、儂はフェン・ウィックと申す者じゃ、少し前まで船乗りじゃったが今は無職じゃ」
「んっ、船乗りだって!?その割には日焼けしていないねぇ」
「ああ、儂はエンジニアじゃったからの、ずっと船室の籠っとったんじゃ」
「ほう、どんな船に乗っていたんだい?」
「最後はランドルトン公爵様の船じゃわい、ブラック・ローズといってな、でかくて足の速い最新鋭の軍艦じゃった、まあ、一度も戦うことは無かったがの」
ミャウッ ミャアアッ 黒と灰の二匹がフェンのベッドからエルザに向かって訴えるように鳴いた。
「おや、子猫ちゃんたちも一緒に行くってのかい?」
ミャーウッ 小さな肉球が探るように空を握った。
数日後、ブラックコーラル号は煙突から黒い煙を吐いて大海を走っていた。
複数の切り傷、追手の三人は二人に対して実力が相当に上だった、殺すだけなら一撃で良かったはずだ、弄び嬲った。
バカな連中だ、自分の強さをひけらかす様な事をしなければエミーに命を取られることはなかった。
部屋にいたシープは緊張の糸が切れてグッタリとしていたが、エミーの姿を見てビクリと身体を強張らせる。
自分たちを嬲った三人をいとも簡単に葬った、森の悪魔が再び目の前に現れた。
「一つ言っておく、私達の事については詮索しないで、知ってもいい事はないわ」
「分かりました・・・・・・エミー・・・さん」
「君たちは今後どうしたい?何処か当てがあるの」
「・・・・・・」
シープは疑り深い、処置を受けて寝ているカツミの前に立ち塞がる、その目の奥から警戒の色が消えることはなかった。
「君たちを如何にかしても私にメリットが無い事は分かるだろう、知りたいのは今後も追撃の手が伸びるのかだ、あるなら迎撃が必要だ」
「私たちを放り出せば済むことです」
「私ならそうする、でも彼女は絶対にしないわ」
「彼女?双子なのね、あっ、ごめん、聞かない約束だった」
「違う、他人の空似よ」
「そう・・・・・・なんだ」上目遣いの目は疑いに満ちている。
「君たちも暴力を生業にしてきたものなら分かるだろう」
氷雪のような気配に打ち付けられる、悪魔がその気になれば自分たちの生涯は今この瞬間に終わる、話さなければ殺される、選択肢は無かった。
「王都で仲間と先生たちと合流することになっているの・・・・・・生き残っていればだけど」
「期限と場所は?」
「分からない、行けば先生の方から接触してくるはず」
「先生の正体を知っているのか」
「私は・・・・・・知らない、カツミは知っていると思う」
「思う、か、いいだろう、王都まで送るわ」
「えっ!?」
「追撃は必ずある、その責任の一端は私にもあると言える、私と来るなら君たちを守る」
「何故、どうして私たちのために!?」
「貴方たちは期待できるから・・・・・・いえ、私の都合ね」
「?」
「こっちの話、私と来るなら最大限の安全を保障するわ、出発は今週中になる、それまでにカツミを歩けるようにして」
黄金の液体が入った小瓶をテーブルに置いた。
関わった多くの人と再び会う、共感することで多くの感情を貰うことができる。
それぞれに複雑な色、人には様々な感情が生きている。
自分の望みは何なのか、物心が付くまで分からなかった、他人にあるものが自分には無い事を知った。
その羨望は心を静かに焼く、悲しくも辛くもない絶望があった、エミーの心の世界には乾いて凍てつく荒野が広がっている、そんな荒寥とした景色の中にあるオアシスのような場所、幸せな人と出会い共感することでのみ永久凍土を溶かすことができる。
そこは何処よりも心地よい、もっとオアシスを広げたい、暖かな春の風で満たしたなら自分にも人を愛する心が生れるだろうか。
それはどんな気持ちで感覚なのだろう、共感しただけでは全てを理解することは出来ない、そこはフローラやカーニャたちが住まう場所だ。
そこは彼の地よりも遠い場所、永遠の憧れ。
手に入れたオアシスを何より失いたくはない、そのためならどんな代償でも払おう、毒蜂に堕ちてでも守る。
さざ波の音が聞こえる、ゆっくりと揺れるベッドが心地よい、ああ、そうだ、儂がいる場所はこうでなければ!地面が揺れていないと酔ってしまう、揺れているからこそ正常を保てる、船乗りとはそういうものだ。
木の匂いが新しい、新造船?・・・・・・儂は・・・・・・
ミューウッ 目の前で鳴き声がした、胸の上が僅かに重い。
ザリザリと鼻の頭を舐められている、なんだ、よせ、くすぐったい、無意識に手が伸びた。
ガブッ 「あ痛ぁ!」鼻の頭を齧られた。
覚醒した視界にあの黒猫がいた。
「あんたよっぽど好かれたねぇ、ここまで追ってきているとは思わなかったよ、どうやってここまで来たんだか」
「!?」窓のない船室にいたのは浅黒い骨太の女、おおよそ海とは関係なさそうに見える。
女の腕の中に灰色の猫が丸まっている。
「あんたは誰だ?ここは何処なんだ、何故儂は・・・・・・」
「覚えていないのかい、あんた多分丘の崖から落ちたんじゃないか、この子猫たちがあたしたちを案内してくれなきゃ死んでたよ」
「あっ!」思い出した、そうだ、この黒猫を抱いたまま足を滑らせた、滑落したのか。
「思い出したようだね」「あたしは短槍のエルザ、冒険者さ」
エルザと名乗った女がカップにお湯を注いでくれる。
「世話になった、儂はフェン・ウィックと申す者じゃ、少し前まで船乗りじゃったが今は無職じゃ」
「んっ、船乗りだって!?その割には日焼けしていないねぇ」
「ああ、儂はエンジニアじゃったからの、ずっと船室の籠っとったんじゃ」
「ほう、どんな船に乗っていたんだい?」
「最後はランドルトン公爵様の船じゃわい、ブラック・ローズといってな、でかくて足の速い最新鋭の軍艦じゃった、まあ、一度も戦うことは無かったがの」
ミャウッ ミャアアッ 黒と灰の二匹がフェンのベッドからエルザに向かって訴えるように鳴いた。
「おや、子猫ちゃんたちも一緒に行くってのかい?」
ミャーウッ 小さな肉球が探るように空を握った。
数日後、ブラックコーラル号は煙突から黒い煙を吐いて大海を走っていた。
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