青春聖戦 ２４年の思い出

第３０話 終わらぬ地獄

合宿２日目。


またしても外野を端から端まで走っている。


健太とエルドもフラフラとしているが懸命に祐輝の後を追っている。


高田コーチからの地獄の特訓は終わらない。




「じゃあ時間内に戻って来れたら終わりなー！　頑張ってください！！」




練習に参加できるチャンスだ。


昨日の感じなら参加できるかもしれない。


捕球姿勢が３セットから２セットになった。


祐輝はピッチャーの練習がしたくてこの長野県まで来たのに陸上部の様な練習ばかりだ。


死ぬ気で走った。


とにかく必死に。


そして健太達より５メートル以上も差をつけて戻ってきた。





「はあ･･･はあ･･･」





エルドは倒れ込みまたしても休憩所へ戻っていった。


根性のなさに高田コーチも呆れて何も言わない。


それに比べて祐輝の根性は常軌を逸している。


だからいい。


だからこそいじめ甲斐があるというものだ。




「オッケーお疲れ様でーすっ！！　じゃあ健太。　練習参加してくださーいっ！！！」
「え･･･」
「は、はい！！」
「祐輝は手を抜いて走ったのでもう一度でございます！！」





手なんて抜いていなかった。


健太の方が遅かったのに健太は合格して先輩達と全体練習に戻った。


先輩達から拍手で向かえられている。


祐輝はその場に残りまた走り始めた。





「さあやる気出していきましょー！！！」
「はあ･･･はあ･･･」
「お前の全力はそんなもんじゃないよなー。」





何時間も走り続けた。


もはや暑さも感じないほどに。


蝉の鳴き声が無情にも響いている。


気が遠くなる様なランニング地獄に先輩達が白球を追いかける活き活きとした声も聞こえなくなってきた。


一体いつまで続くのか。


それから既に３時間。


終わる事のないランニングは続いていた。




「はあ･･･はあ･･･し、死ぬ･･･」
「死ぬ？　そう言っている間は死にませーん！！　じゃあ休憩するか。　捕球姿勢で。」
「ぐ･･･」





１日の練習の中で先輩達は守備練習やバッティング練習をしている。


何故かその中に健太までいる。


エルドは冷たいタオルを顔にかけて寝ている。


それなのにどうして自分だけが外野の端で捕球姿勢なんてしているのか。


疲労も限界に来ている祐輝はいよいよ苛立ち始めた。





「うううう！！！！！！」
「はいはいまだ続くよー！」
「うわあああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「いいねえ元気出てきたねえ！　じゃあ走るか！」
「なんで俺だけなんですか･･･」
「ああ今の言い方ムカついたー。　今日１日走っていてください！！！」





少し反抗しただけで高田コーチは怒り、その場を後にした。


寝ているエルドの隣でタバコを吸っている。


祐輝は思った。


そんなに悪い事をしたのか･･･


死ぬ気でやっていたのに健太の方が先に全体練習に行くなんて納得できない。


高田コーチはタバコを吸い終えると全体練習の様子を見ていた。


祐輝が外野で走っているのにまるで興味を示さない。


それでも祐輝は走り続けた。


なんと丸一日。


ひぐらしが練習の終わりを告げるかの様に泣き始めて太陽は役目を終えて降りていく。




「はーいお疲れー！！！！」
「はあ･･･もう何が起きているのかもわからない･･･疲れているのかも･･･」
「じゃあ飯食うか！！！」




その晩を大量の白米を食べて食後に捕球姿勢を行った。


風呂に入って宿舎で横たわるとまるで一瞬で時間が経ったかの様に目覚ましが鳴った。


いよいよ最終日。


全体練習に入れるかどうか。


最終日は帰りのバスがあるので６時までの練習が３時で終わってしまう。


時間はない。