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第32話 最高の癒やしは我が家
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地獄の合宿から1日。
目を覚ますと昼が過ぎていた。
体は激痛だ。
全身が筋肉痛で動かない。
「あらやっと起きた。」
「母ちゃん・・・」
「大変だったんだねえ。 なんか少し大人になった気がするね。」
「気のせいだよ。」
「お風呂湧いてるから入りなさい。」
疲れを癒やすために風呂に入る。
合宿から戻り新宿のバスターミナルに向かえにいった真美は放心状態の祐輝を見て合宿の過酷さを悟った。
風呂に入ると何も食べずに眠ってしまった祐輝のために一夜明けてから帰りを祝った。
「好きな物食べなさい。 何がいい?」
「焼き肉かな。」
「わかった。 じゃあ行こ。 千尋ー!」
「なーにー?」
「焼き肉行くよー。」
「はーい!」
祐輝には2つ歳が下の妹がいる。
名前は千尋。
天真爛漫だが物覚えが良くて父親の祐一には可愛がられていた。
しかし祐輝が祐一と断絶関係になり、6階で真美と暮らすとなった時に千尋も共に来た。
直ぐ上の7階に祐一はいるのに顔を合わせる事もなかった。
焼き肉には3人で行く。
そして焼き肉屋で真美は息子の最初の成長を見た。
丁寧に手を合わせてから食べ始めた。
「あら。」
「こうしないと高田コーチがね・・・」
「知らないコーチね。」
「合宿にしか来ない人。 マジでキツかった・・・」
「そう。 息子を鍛えてくれた事にお礼しないと。」
次に真美が驚いたのは祐輝の食べる量だった。
焼き肉屋で祐輝はタン塩やカルビにハラミやホルモンといった一通りのメニューを食べながらも白米を5杯も食べたのだ。
自然と食べられた。
胃袋が大きくなり、食べられる限界量が増えていた。
「これは食費で破産だ・・・」
「母ちゃんビビンバと冷麺も頼んでいい?」
「好きなだけ食べなさい。」
息子の成長は真美にとって何よりも嬉しい事だ。
しかしそれは同時に真美の経済を圧迫する事にもつながる。
必死にパートをして何とかやっていけている。
世の中のシングルマザーに比べれば真美は家賃もかからないし音を上げる事はできない。
とても強い女性だ。
その強い遺伝子は息子の祐輝が確かに受け継いでいる。
高田コーチの地獄の特訓を耐え抜いた。
経済的にこそ余裕のなかった親子だったが互いに想い合っていた。
しかし中学生という思春期や反抗期が到来する年齢の祐輝には素直に言葉にできる事ができなかった。
「ああ美味かった。」
「感謝してる?」
「うん。」
「野球頑張りなさいよ?」
「わかってるようるさいな。」
男の子の思春期とはこんなものだ。
母親に頼る事が恥ずかしいと思ってしまう。
それも仕方ない。
祐輝は感謝しているのだ。
そのためにエースを目指している。
「はあ・・・一言ありがとうって言ってもらいたいだけなのに・・・」
足早に家へと歩く祐輝の背中を見て悲しそうにする真美。
真美を見て心配そうに寄り添う小学4年生の千尋。
優しく頭をなでて家へと帰っていく。
中学生の少年が言葉ではなく形で母に感謝を伝えようとしている。
家に帰ると祐輝は合宿での日々を思い出す。
「もう二度とやりたくない・・・でも良い経験だった。 エースかあ。 まだ全然わからないや。」
試合の経験も少ない。
夏休みも終盤に差し掛かっている。
しかし夏休みに最後のイベントがある。
それは練習試合だ。
新宿の中にある落合という街の少年達で構成されている。
落合キングスというチームだ。
なんとこのキングスは関東大会3位の実力を持つ強豪だ。
1年生の祐輝はその試合に出られるかはわからない。
しかし見て損をする事はない試合になる。
合宿から帰ったその週末にある練習試合に向けて祐輝は床につく。
明日からまたナインズは練習が再開する。
来るキングスとの一戦へ。
目を覚ますと昼が過ぎていた。
体は激痛だ。
全身が筋肉痛で動かない。
「あらやっと起きた。」
「母ちゃん・・・」
「大変だったんだねえ。 なんか少し大人になった気がするね。」
「気のせいだよ。」
「お風呂湧いてるから入りなさい。」
疲れを癒やすために風呂に入る。
合宿から戻り新宿のバスターミナルに向かえにいった真美は放心状態の祐輝を見て合宿の過酷さを悟った。
風呂に入ると何も食べずに眠ってしまった祐輝のために一夜明けてから帰りを祝った。
「好きな物食べなさい。 何がいい?」
「焼き肉かな。」
「わかった。 じゃあ行こ。 千尋ー!」
「なーにー?」
「焼き肉行くよー。」
「はーい!」
祐輝には2つ歳が下の妹がいる。
名前は千尋。
天真爛漫だが物覚えが良くて父親の祐一には可愛がられていた。
しかし祐輝が祐一と断絶関係になり、6階で真美と暮らすとなった時に千尋も共に来た。
直ぐ上の7階に祐一はいるのに顔を合わせる事もなかった。
焼き肉には3人で行く。
そして焼き肉屋で真美は息子の最初の成長を見た。
丁寧に手を合わせてから食べ始めた。
「あら。」
「こうしないと高田コーチがね・・・」
「知らないコーチね。」
「合宿にしか来ない人。 マジでキツかった・・・」
「そう。 息子を鍛えてくれた事にお礼しないと。」
次に真美が驚いたのは祐輝の食べる量だった。
焼き肉屋で祐輝はタン塩やカルビにハラミやホルモンといった一通りのメニューを食べながらも白米を5杯も食べたのだ。
自然と食べられた。
胃袋が大きくなり、食べられる限界量が増えていた。
「これは食費で破産だ・・・」
「母ちゃんビビンバと冷麺も頼んでいい?」
「好きなだけ食べなさい。」
息子の成長は真美にとって何よりも嬉しい事だ。
しかしそれは同時に真美の経済を圧迫する事にもつながる。
必死にパートをして何とかやっていけている。
世の中のシングルマザーに比べれば真美は家賃もかからないし音を上げる事はできない。
とても強い女性だ。
その強い遺伝子は息子の祐輝が確かに受け継いでいる。
高田コーチの地獄の特訓を耐え抜いた。
経済的にこそ余裕のなかった親子だったが互いに想い合っていた。
しかし中学生という思春期や反抗期が到来する年齢の祐輝には素直に言葉にできる事ができなかった。
「ああ美味かった。」
「感謝してる?」
「うん。」
「野球頑張りなさいよ?」
「わかってるようるさいな。」
男の子の思春期とはこんなものだ。
母親に頼る事が恥ずかしいと思ってしまう。
それも仕方ない。
祐輝は感謝しているのだ。
そのためにエースを目指している。
「はあ・・・一言ありがとうって言ってもらいたいだけなのに・・・」
足早に家へと歩く祐輝の背中を見て悲しそうにする真美。
真美を見て心配そうに寄り添う小学4年生の千尋。
優しく頭をなでて家へと帰っていく。
中学生の少年が言葉ではなく形で母に感謝を伝えようとしている。
家に帰ると祐輝は合宿での日々を思い出す。
「もう二度とやりたくない・・・でも良い経験だった。 エースかあ。 まだ全然わからないや。」
試合の経験も少ない。
夏休みも終盤に差し掛かっている。
しかし夏休みに最後のイベントがある。
それは練習試合だ。
新宿の中にある落合という街の少年達で構成されている。
落合キングスというチームだ。
なんとこのキングスは関東大会3位の実力を持つ強豪だ。
1年生の祐輝はその試合に出られるかはわからない。
しかし見て損をする事はない試合になる。
合宿から帰ったその週末にある練習試合に向けて祐輝は床につく。
明日からまたナインズは練習が再開する。
来るキングスとの一戦へ。
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