56 / 140
第56話 これぐらいの相手
しおりを挟む
祐輝が覚えたカーブはまだ健太のレベルでは捕れなかった。
河川敷の週末で賑やかなグラウンドの真ん中で立っている祐輝はピッチャーマウンドを足でいじると相手チームのバッターを見つめていた。
ロージンバックを指で少しだけ触るとボールを握って投球フォームへ入った。
「これぐらいの相手はカーブなしで抑えられないと越田には絶対に勝てない。」
さほど強くないチームを相手に変化球を使って翻弄しても意味がない。
目指す先は遥か上に存在している。
ピッチャーマウンドから右手のベンチから睨みつけている鈴木監督を鼻で笑うと鋭いストレートを健太に向かって投げ込んだ。
ボールが風を切る音を出してキャッチャーミットに吸い込まれていく。
破裂音にすら聞こえる健太のグローブの補給音がグラウンドに響いた。
審判のストライクコールを腹の底から叫んだ。
祐輝の高速回転する鋭いストレートに息を呑む相手チームのバッターはスイングする事すらできなかった。
そしてツーストライクと追い込むと祐輝はゆっくりと投球フォームに入り渾身のストレートを投げ込んだ。
中学2年生とは思えない鋭いストレートは130キロを超え始めていた。
そしてあっけなく先頭打者を三振に取ると2番、3番打者も三振に取ってベンチへ戻ってきた。
涼しい表情でベンチへ戻る祐輝を後輩達が歓声と共に迎えてハイタッチしている。
だが鈴木監督は特に声をかける事もなく貧乏ゆすりをしながら真っ直ぐ前を見ていた。
口を開いたかと思えば一言だけ「点取ってこい」と吐き捨てる様に言うだけだった。
ナインズの攻撃の間に祐輝は健太と会話をしていたが、仕切りに手を気にしている。
不思議に思った祐輝は健太の手を見てみると赤く腫れ上がっていた。
「捕るの下手だから・・・」
申し訳なさそうに下を向いて腫れ上がる手を片方の手でなでている。
祐輝の実力だけが飛び抜けて、普通以下の成長を続ける健太達には追いつく事ができなかった。
ストレートという真っ直ぐグローブへ入ってくるボールを捕るのがやっとで変化球なんて触る事すらも困難といった状況だ。
ベンチに座って水を飲む祐輝は頭をかきながら困った表情で健太の手を見ていた。
立ち上がると保冷バックからアイシングを取り出して健太に持たせる。
「なんとか捕ってくれよ。」
「うん。」
気がつくとナインズの攻撃もあっさりと終わっていた。
祐輝はピッチャーマウンドへ向かって小走りしている。
健太は慌ててレガースを身につけ始めていたが時間がかかり、その間の投球練習は代理の後輩キャッチャーが座ったが祐輝はどうせ捕れるはずもないと思い、軽く投げていた。
快音を鳴らして捕球する後輩はどこか不満そうにキャッチャーマスクを外して祐輝にもっとしっかり投げるように頼んだ。
仕方なく祐輝はストレートをしっかりと投げ込むと後輩は簡単に捕球してみせた。
「おう」っと口を開けた祐輝は2球、3球とストレートを投げるとカーブを投げてもいいか尋ねた。
こくりとうなずいて後輩はキャッチャーミットを構えていた。
ゆったりとしたフォームから鞭のようにしなる祐輝の腕から投げられるカーブはバッターが避けずにはいられないほどに大きな軌道で変化していった。
後輩キャッチャーはそれすらも捕球してニコリと微笑んで「いい球ですね」なんて言いながら余裕の表情を見せていた。
祐輝もどこか嬉しそうにロージンバックを触っていた。
すると健太がやっとレガースをつけ終えて試合が再開された。
河川敷の週末で賑やかなグラウンドの真ん中で立っている祐輝はピッチャーマウンドを足でいじると相手チームのバッターを見つめていた。
ロージンバックを指で少しだけ触るとボールを握って投球フォームへ入った。
「これぐらいの相手はカーブなしで抑えられないと越田には絶対に勝てない。」
さほど強くないチームを相手に変化球を使って翻弄しても意味がない。
目指す先は遥か上に存在している。
ピッチャーマウンドから右手のベンチから睨みつけている鈴木監督を鼻で笑うと鋭いストレートを健太に向かって投げ込んだ。
ボールが風を切る音を出してキャッチャーミットに吸い込まれていく。
破裂音にすら聞こえる健太のグローブの補給音がグラウンドに響いた。
審判のストライクコールを腹の底から叫んだ。
祐輝の高速回転する鋭いストレートに息を呑む相手チームのバッターはスイングする事すらできなかった。
そしてツーストライクと追い込むと祐輝はゆっくりと投球フォームに入り渾身のストレートを投げ込んだ。
中学2年生とは思えない鋭いストレートは130キロを超え始めていた。
そしてあっけなく先頭打者を三振に取ると2番、3番打者も三振に取ってベンチへ戻ってきた。
涼しい表情でベンチへ戻る祐輝を後輩達が歓声と共に迎えてハイタッチしている。
だが鈴木監督は特に声をかける事もなく貧乏ゆすりをしながら真っ直ぐ前を見ていた。
口を開いたかと思えば一言だけ「点取ってこい」と吐き捨てる様に言うだけだった。
ナインズの攻撃の間に祐輝は健太と会話をしていたが、仕切りに手を気にしている。
不思議に思った祐輝は健太の手を見てみると赤く腫れ上がっていた。
「捕るの下手だから・・・」
申し訳なさそうに下を向いて腫れ上がる手を片方の手でなでている。
祐輝の実力だけが飛び抜けて、普通以下の成長を続ける健太達には追いつく事ができなかった。
ストレートという真っ直ぐグローブへ入ってくるボールを捕るのがやっとで変化球なんて触る事すらも困難といった状況だ。
ベンチに座って水を飲む祐輝は頭をかきながら困った表情で健太の手を見ていた。
立ち上がると保冷バックからアイシングを取り出して健太に持たせる。
「なんとか捕ってくれよ。」
「うん。」
気がつくとナインズの攻撃もあっさりと終わっていた。
祐輝はピッチャーマウンドへ向かって小走りしている。
健太は慌ててレガースを身につけ始めていたが時間がかかり、その間の投球練習は代理の後輩キャッチャーが座ったが祐輝はどうせ捕れるはずもないと思い、軽く投げていた。
快音を鳴らして捕球する後輩はどこか不満そうにキャッチャーマスクを外して祐輝にもっとしっかり投げるように頼んだ。
仕方なく祐輝はストレートをしっかりと投げ込むと後輩は簡単に捕球してみせた。
「おう」っと口を開けた祐輝は2球、3球とストレートを投げるとカーブを投げてもいいか尋ねた。
こくりとうなずいて後輩はキャッチャーミットを構えていた。
ゆったりとしたフォームから鞭のようにしなる祐輝の腕から投げられるカーブはバッターが避けずにはいられないほどに大きな軌道で変化していった。
後輩キャッチャーはそれすらも捕球してニコリと微笑んで「いい球ですね」なんて言いながら余裕の表情を見せていた。
祐輝もどこか嬉しそうにロージンバックを触っていた。
すると健太がやっとレガースをつけ終えて試合が再開された。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる