青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

文字の大きさ
71 / 140

第71話 東京都の精鋭

しおりを挟む
過酷な冬が過ぎて月日は経ち、桜が美しく咲き乱れる頃。


東京都の中学生が集まる選考会の会場に祐輝はいた。


そこには東京中から集まった自信に満ち溢れた球児達が東京都の旗を背負うために磨いた技術を披露する場所だ。


総勢200名もの球児達が8チームに分けられて試合をする。


これも運命なのか祐輝のチームには越田の姿があった。


新宿区代表としてこの選考会に来ているのは祐輝と越田のみだった。


共にグラウンドに入りウォーミングアップを始める。


緊張した様子の祐輝を見て馬鹿にした表情で肩をポンポンと叩いている。



「お前緊張してんのか?」
「そう言う越田こそ。」



越田は「馬鹿かお前。」と呆れた表情で鼻で笑っている。


そして越田は祐輝の胸元をボンッと押して「俺ほどのバッターは東京にいないから普通に投げれば打たれねえよ。」と得意げに言っている。


その言葉に安心した祐輝は「そっくり返す。」と言うとどこか嬉しそうに笑って2人はキャッチボールを始めた。


いつもの頼りない健太とは異なり投げる相手は怪童越田だ。


祐輝は気持ちを落ち着かせて冷静に考え始めると自分がどれだけ幸せな空間にいるのかと気がついた。


倒したくてたまらない相手だが、味方になると心強い越田。


祐輝の回転数の良いストレートをなんとも見事なキャッチ音で捕っている。


すると周囲の球児達が越田を見てどよめいている。



「あれが関東3位の4番だぜ。」



球児達の注目は越田に集中していた。


それと同時にあの越田と平然とキャッチボールをしているあいつは誰だとコソコソと話している。


祐輝は不安になり悪送球を投げると越田は「自分で取ってこい。」と後ろに指差した。


走ってボールを取ってくると越田は「お前の事をあいつらは知らない、だから驚かせてやれよ。」と背中を力強く叩いた。


ウォーミングアップが終わり選考会の試合が始まった。


祐輝は尚も緊張した様子でマウンドへ走っていく。


どっしりと座ってキャッチャーミットを構える越田の様子は緊張する祐輝を安心させる。



「あれが才能か。 構えてるだけで安心する。」



祐輝はゆったりとしたフォームで先頭打者に投げ込んだ。


そして快音と共にキャッチャーミットに吸い込まれる祐輝の速いストレートは球場にいる全員を驚かせた。


「あいつ誰だ?」と驚く球児と無言だがじっと見つめる審査員達の視線が集まっている。


そして2球目はカーブを投げた。


祐輝の変化量の大きいカーブも越田は難なく捕球するとしっかりと頷いて「ナイスボール。」と声を上げている。


そして3球目。


越田が出したサインはストレートだ。


「自慢のストレートを見せろ。」と言っているかの様にアウトコース低めに構えていた。


落ち着いて投げ込んだストレートは不思議なぐらい越田の構えた所へ綺麗に決まる。


これが才能なのか?


越田という怪童は投手の能力を最大限にまで引き出す事のできる不思議な力を持っている。


祐輝のストレートは常に最高速度だ。



「ストライクッ! バッターアウト!」


先頭打者を三振に取った祐輝と越田は互いに頷いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...