72 / 140
第72話 最強の相方
しおりを挟む
越田のキングスはエース速田の引退と共に新体制を築いた。
同い年のエースが新たに誕生したが実力は速田には遠く及ばなかった。
そして今、越田はライバルである祐輝のストレートを捕っているが非常に楽しそうにプレーしている。
だがそれは祐輝も同じだ。
2番打者は内野ゴロに転がったが守備につく選手達は皆が華麗に捕球して難なくアウトに取る。
「これが野球か。」
例えバットに当てられても守備が助けてくれる。
点を取られても味方が打ってくれる。
だから思いっきり投げられる。
みんなのために。
祐輝は人生で初めて野球というスポーツの素晴らしさに触れた。
その後も3番打者を外野フライに打ち取ってベンチへ戻ると越田がハイタッチを求めてきた。
「まあまあだな。 今のは相手バッターがダメだった。 俺ならホームランだ。」
「良く言うよなー。」
互いに顔を見合わせると笑い合って味方の攻撃を見ていた。
東京中から集まった選手達の中で祐輝と越田は初回を見事に3人で打ち取ってきた。
相手チームのピッチャーはこれも有名な投手だ。
桜木という葛飾区代表の彼は祐輝に負けない130キロを超えるストレートを投げては中学生では珍しいフォークボールという変化球を持っていた。
フォークは2本の指で挟んだ状態から投げる変化球でかなりの握力が必要になる。
しかし桜木は平然とツーストライクに追い込むと必ずフォークを投げてきた。
一見するとストレートに見えるがバットを振る直前に手元ですとんっと落ちるこのフォークボールは中学生には打つ事が非常に難しい。
どよめく球場で越田と祐輝は顔を見合わせた。
「あいつすげえ。」と祐輝がボソっとつぶやくと「大した事ねえよ。」と越田は言い放った。
「あいつ引きずり下ろしてやろうぜ。 お前は俺の前の打順だからお前が少し粘って球数稼げ。」
それはファールを重ねて桜木から球数を多く投げさせろという事だ。
「簡単に言うなよ。」と祐輝は眉をひそめている。
「ツーストライクまでバット振るな。 ツーストライクは必ずフォークだけどあれは振らなければ全部ボール球だ。」
やはりここに来ても怪童越田の分析は鋭かった。
ストレートと同じ軌道から突如下に落ちるフォークに驚くバッターはたまらずバットを振ってしまうが、振らなければ全て低すぎるボールと判定される。
3番打者として準備を始める祐輝は越田に言われた通りツーストライクまでバットを振らない様に意識した。
そして2番打者も三振に終わりいよいよ祐輝は打席に立った。
独特のフォームから投げられるストレートは実際の速度よりも速く感じた。
「フォークなんか投げなくてもこのストレートだってファールにできるか。」
そしてあっという間にツーストライクに追い込まれると一度ベンチを見た。
すると越田はまるで「信じてるぞ。」と言わんばかりの純粋な瞳で見ていた。
祐輝は指示通りバットを振らずに立っている。
投げられた3球目は思わず手を出したくなる様な緩いストレートかと思えば手元ですとんっと落ちた。
「ボールッ!」
越田の分析通り、フォークは低めに落ちすぎてストライクゾーンを外れている。
4球目もフォークを投げたがこれもボールだった。
ツーストライクツーボールで祐輝は考えた。
「次はストレートだよな。」
これ以上球数とボールカウントを増やしたくない桜木バッテリーは必ずここはストレートを投げてくると考えた。
そして5球目。
カーンッ!
「ファールボールッ!」
何とかバットに当てた祐輝はファールで粘っている。
そして6球目。
「ファールボールッ!」
7球目。
祐輝はバットを振らなかった。
「ボールファボール!」
2球速いストレートを見せてからもう一度フォークを投げる事でよりバッターはフォークを振ってしまうという心理的な作戦だ。
しかし祐輝だってピッチャーだ。
相手のバッターが嫌がる心理は良く分かっていた。
2球ファールにした時点で祐輝はもうバットを振るつもりがなかった。
そして一塁に立った祐輝は打席に入る越田を見ている。
同い年のエースが新たに誕生したが実力は速田には遠く及ばなかった。
そして今、越田はライバルである祐輝のストレートを捕っているが非常に楽しそうにプレーしている。
だがそれは祐輝も同じだ。
2番打者は内野ゴロに転がったが守備につく選手達は皆が華麗に捕球して難なくアウトに取る。
「これが野球か。」
例えバットに当てられても守備が助けてくれる。
点を取られても味方が打ってくれる。
だから思いっきり投げられる。
みんなのために。
祐輝は人生で初めて野球というスポーツの素晴らしさに触れた。
その後も3番打者を外野フライに打ち取ってベンチへ戻ると越田がハイタッチを求めてきた。
「まあまあだな。 今のは相手バッターがダメだった。 俺ならホームランだ。」
「良く言うよなー。」
互いに顔を見合わせると笑い合って味方の攻撃を見ていた。
東京中から集まった選手達の中で祐輝と越田は初回を見事に3人で打ち取ってきた。
相手チームのピッチャーはこれも有名な投手だ。
桜木という葛飾区代表の彼は祐輝に負けない130キロを超えるストレートを投げては中学生では珍しいフォークボールという変化球を持っていた。
フォークは2本の指で挟んだ状態から投げる変化球でかなりの握力が必要になる。
しかし桜木は平然とツーストライクに追い込むと必ずフォークを投げてきた。
一見するとストレートに見えるがバットを振る直前に手元ですとんっと落ちるこのフォークボールは中学生には打つ事が非常に難しい。
どよめく球場で越田と祐輝は顔を見合わせた。
「あいつすげえ。」と祐輝がボソっとつぶやくと「大した事ねえよ。」と越田は言い放った。
「あいつ引きずり下ろしてやろうぜ。 お前は俺の前の打順だからお前が少し粘って球数稼げ。」
それはファールを重ねて桜木から球数を多く投げさせろという事だ。
「簡単に言うなよ。」と祐輝は眉をひそめている。
「ツーストライクまでバット振るな。 ツーストライクは必ずフォークだけどあれは振らなければ全部ボール球だ。」
やはりここに来ても怪童越田の分析は鋭かった。
ストレートと同じ軌道から突如下に落ちるフォークに驚くバッターはたまらずバットを振ってしまうが、振らなければ全て低すぎるボールと判定される。
3番打者として準備を始める祐輝は越田に言われた通りツーストライクまでバットを振らない様に意識した。
そして2番打者も三振に終わりいよいよ祐輝は打席に立った。
独特のフォームから投げられるストレートは実際の速度よりも速く感じた。
「フォークなんか投げなくてもこのストレートだってファールにできるか。」
そしてあっという間にツーストライクに追い込まれると一度ベンチを見た。
すると越田はまるで「信じてるぞ。」と言わんばかりの純粋な瞳で見ていた。
祐輝は指示通りバットを振らずに立っている。
投げられた3球目は思わず手を出したくなる様な緩いストレートかと思えば手元ですとんっと落ちた。
「ボールッ!」
越田の分析通り、フォークは低めに落ちすぎてストライクゾーンを外れている。
4球目もフォークを投げたがこれもボールだった。
ツーストライクツーボールで祐輝は考えた。
「次はストレートだよな。」
これ以上球数とボールカウントを増やしたくない桜木バッテリーは必ずここはストレートを投げてくると考えた。
そして5球目。
カーンッ!
「ファールボールッ!」
何とかバットに当てた祐輝はファールで粘っている。
そして6球目。
「ファールボールッ!」
7球目。
祐輝はバットを振らなかった。
「ボールファボール!」
2球速いストレートを見せてからもう一度フォークを投げる事でよりバッターはフォークを振ってしまうという心理的な作戦だ。
しかし祐輝だってピッチャーだ。
相手のバッターが嫌がる心理は良く分かっていた。
2球ファールにした時点で祐輝はもうバットを振るつもりがなかった。
そして一塁に立った祐輝は打席に入る越田を見ている。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる