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第90話 何かがいる
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ミズキと顔を見合わせる祐輝の表情は青ざめていた。
驚きのあまりお土産の八つ橋を口に咥えたまま言葉を失うミズキは祐輝の顔を見るなり「祐輝君だね」とつぶやいた。
隣にいるミズキの友人は何を話しているのか理解できずに困った表情をしていた。
「トイレでも行ってくれば?」と友人が気を使うと祐輝はミズキの手を引っ張って歩いていった。
「ど、どうしたの?」
「ごめん・・・俺もわからない・・・」
「京都で話した事は覚えているの?」
「覚えているよ。 でも自分でも何がなんだか・・・ミズキと別れるべきなのかな・・・」
今にも泣き出しそうな祐輝の表情は京都で見た化け物ではなかった。
ミズキも頭が混乱していた。
突如言っている事が変わり、肝心な事は覚えていないなんて。
「こんな事言っても信じてもらえないと思うけど・・・なんかたまに俺が俺じゃなくなっている気がする・・・」
「テレビで見たけど多重人格的な?」
「いや・・・なんかもっとこう。 強い何かがいる気がする・・・」
多重人格というよりもホラー映画でよくあるそれに感じた。
段々と自分が乗っ取られる様な感覚だった。
怖くてたまらない祐輝は青ざめた表情で唇を震わせていた。
ミズキも驚いた表情をしているが否定はしなかった。
9年間も一緒にいたからこそ京都での祐輝が別人の様だったのは気のせいではないと感じていた。
「祐輝君おかしかったもんね。」
「怖い・・・ミズキが死ぬかもしれないとか言ってたよね・・・」
「言ってたね・・・祐輝君に殺されるのかな・・・」
修学旅行の帰りの中学生とは思えない会話をする2人は顔を見合わせて困惑していた。
そしてこの後2人はどう関わっていくのかもわからずにいた。
ミズキは名門関東高校へ進学するが祐輝は練馬商業という都立高校へ進学する。
高校生になれば会うこともなくなるであろう。
互いの青春を生きるために。
祐輝はその時思った。
(これはミズキにしか話さない。)
「なあミズキ。」
「うん?」
「別れる。 でも。 卒業まで一緒にいてほしい・・・」
「いいよ。」
もはや2人にしかわからない関係性があった。
それは死線を潜った戦友の様な表情にも見えた。
ミズキは内心安堵していた。
(愛しているって言ってくれたものね。 きっと悪魔じゃないよ。)
明らかに別人だったが確かに「愛している」と言い放った。
恥ずかしがり屋な祐輝が言うはずもない言葉を平然と言っていた。
思い返せばどう考えても祐輝じゃなかった。
恥ずかしそうにする素振りもなければあんなに淡々と話す様なタイプではない。
修学旅行から戻り家に帰ったミズキは祐輝の事が頭から離れなかった。
何か数奇な運命でも背負っているのではないかとも考え始めた。
テーピングの本を捨てたかと思えば家のパソコンで検索を始めると本をネットで注文した。
「憑依された人の特徴」という名の本を買った。
そして「幽霊」について真剣に考える様になった。
驚きのあまりお土産の八つ橋を口に咥えたまま言葉を失うミズキは祐輝の顔を見るなり「祐輝君だね」とつぶやいた。
隣にいるミズキの友人は何を話しているのか理解できずに困った表情をしていた。
「トイレでも行ってくれば?」と友人が気を使うと祐輝はミズキの手を引っ張って歩いていった。
「ど、どうしたの?」
「ごめん・・・俺もわからない・・・」
「京都で話した事は覚えているの?」
「覚えているよ。 でも自分でも何がなんだか・・・ミズキと別れるべきなのかな・・・」
今にも泣き出しそうな祐輝の表情は京都で見た化け物ではなかった。
ミズキも頭が混乱していた。
突如言っている事が変わり、肝心な事は覚えていないなんて。
「こんな事言っても信じてもらえないと思うけど・・・なんかたまに俺が俺じゃなくなっている気がする・・・」
「テレビで見たけど多重人格的な?」
「いや・・・なんかもっとこう。 強い何かがいる気がする・・・」
多重人格というよりもホラー映画でよくあるそれに感じた。
段々と自分が乗っ取られる様な感覚だった。
怖くてたまらない祐輝は青ざめた表情で唇を震わせていた。
ミズキも驚いた表情をしているが否定はしなかった。
9年間も一緒にいたからこそ京都での祐輝が別人の様だったのは気のせいではないと感じていた。
「祐輝君おかしかったもんね。」
「怖い・・・ミズキが死ぬかもしれないとか言ってたよね・・・」
「言ってたね・・・祐輝君に殺されるのかな・・・」
修学旅行の帰りの中学生とは思えない会話をする2人は顔を見合わせて困惑していた。
そしてこの後2人はどう関わっていくのかもわからずにいた。
ミズキは名門関東高校へ進学するが祐輝は練馬商業という都立高校へ進学する。
高校生になれば会うこともなくなるであろう。
互いの青春を生きるために。
祐輝はその時思った。
(これはミズキにしか話さない。)
「なあミズキ。」
「うん?」
「別れる。 でも。 卒業まで一緒にいてほしい・・・」
「いいよ。」
もはや2人にしかわからない関係性があった。
それは死線を潜った戦友の様な表情にも見えた。
ミズキは内心安堵していた。
(愛しているって言ってくれたものね。 きっと悪魔じゃないよ。)
明らかに別人だったが確かに「愛している」と言い放った。
恥ずかしがり屋な祐輝が言うはずもない言葉を平然と言っていた。
思い返せばどう考えても祐輝じゃなかった。
恥ずかしそうにする素振りもなければあんなに淡々と話す様なタイプではない。
修学旅行から戻り家に帰ったミズキは祐輝の事が頭から離れなかった。
何か数奇な運命でも背負っているのではないかとも考え始めた。
テーピングの本を捨てたかと思えば家のパソコンで検索を始めると本をネットで注文した。
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そして「幽霊」について真剣に考える様になった。
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