青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第95話 まあそうなるか

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人気のない体育館裏に行くと「タイマンお願いします」と祐輝は言った。


千野は嬉しそうに笑った。


「久しぶりに気合い入ってんの来たな」とタイマンを喜んでいた。


高校1年生が3年生と戦って勝てるはずもない。


体格が違いすぎた。


だが祐輝はそんな事気にもしていない。




「じゃあ遠慮なく殴らせていただきます。」
「おう。 死んでも文句言うなよ。」
「死人に口なしです。」
「お前気に入った。」




そして祐輝は千野の顔を思い切り殴ったが、びくともしていなかった。


殴った祐輝の手の方が痛かった。


相当喧嘩慣れしていると確信した祐輝は全力で襲いかかったが直ぐに千野は殴り返した。


それはまるで鉄球でも顔に当たったかの様だった。


大の字になって倒れると頭がグラグラしていた。




「まあそうなるか・・・」
「ほら立てよ。 もっとやろうぜ。」
「もちろん。 舎弟になるなら相応の人間がいいと思いましてね。」
「ほんと気に入った。」





祐輝は立ち上がると腹部目掛けて蹴り込んだがやはりびくともしない。


足を掴んで背負い投げをする様に地面に叩きつけられると激痛で意識が飛びそうだった。


それでも立ち上がりもう一度顔を思い切り殴った。


千野は倒れるどころか笑っていた。


そしてとどめの一撃の様に渾身のパンチを祐輝の顔に振り抜くと気絶したかの様に崩れ落ちた。




「十分だな。」
「ば、バカ強え・・・」
「立てよ。」
「もう無理っす。」




千野は祐輝に肩を貸すと荷物を持って駅に向かい始めた。


歩きながら千野は「どうして怪我した?」と聞いてきた。


中学時代にあった惨劇を話すと千野は「悔しかっただろ」とどこか悲しそうに眉をしかめていた。


祐輝は既に決めていた。



(舎弟になろう。)



その場に立ち止まると祐輝は「忠誠を誓います」と頭を下げた。




「固えよ。」
「一応ですよ。」
「飯行くか? 奢ってやるよ。」
「舎弟に飯おごってくれるんですか?」




千野は得意げに笑っていた。


駅にある牛丼屋に立ち寄ると特盛を2つ頼んで食べ始めた。


人生で一番美味しい牛丼だった。


あっという間に食べ終えると店を出て電車を待った。




「千野さんはそっちでしたか。」
「そうだよ。 お前は新宿だから逆だな。 気をつけて帰れよ。」
「ええ。 兄貴。」
「部活ではそう呼ぶんじゃねえぞ?」




顔を見合わせて笑った2人は電車に乗り込んだ。


本来なら1年坊主が3年生とここまで親しくなる事はなかった。


だが千野は気合の入っている後輩を待ち続けていた。


祐輝にとっては初めての尊敬できる兄貴分となった。


顔は痛むが心は温まっていた。


嬉しそうに電車に揺られていると同じ制服を着た女子生徒がいた。


肌は白く、スタイルがとても良かった。


練馬商業は学年ごとに色があった。


女子生徒ならリボンで男子生徒なら学ランの襟の色。


祐輝は緑色のバッチを襟にしていた。


電車に乗る女子生徒も緑色のリボンをしていた。


不思議そうに見ていると女子生徒は祐輝に気がついてぎこちない会釈をしてみせた。


高校生活は始まったばかりだ。
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