青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

文字の大きさ
110 / 140

第110話 永遠に忘れないでしょうね

しおりを挟む
既に2時間が経過している。


祐輝は700球も捕球していた。


体力なんてとっくに限界だった。


しかし不思議なほど力が湧き出てくる。


捕球を失敗して打球が体に当たるたびに激痛が走る。


それでも立ち上がった。


これはタイマンだ。


もはや練習ではない。




「永遠に忘れる事はない・・・一生の思い出になる・・・」




千野バットスイングも遅くなってきていた。


お互い気持ちだけでノックを続けている。


もうすぐ800球目になる。


一度ボール拾いで休憩をすると千野が近づいてきた。




「あと200球だな。」
「はあ・・・はあ・・・千野さんでよかったです。」
「俺もお前以外にしか打たねえよ。」




この日は永遠に記憶される。


いつの日か人生で苦しい事が起きても今日ほど苦しい経験はそうはない。


だが同時に苦しい状況においても必ず味方がいて活路があるという事も学んだ。


千野がいてくれて200球捕球すれば終わる。


必ず終りが来るんだという実感を肌で感じていた。


休憩が終わり、残り200球を録るために互いに離れると千野がふらついていた事に気がついた。




「お互い限界っすね・・・」




既に白いユニフォームは泥と汗で紺色になっていた。


気温も40度のままだ。


そして更に1時間が経過した。




「997!!」
「はあ・・・はあ・・・」



左右に振られる打球に必死に飛びつくがなかなか届かない。


千野もいよいよ限界で打球がとんでもない方向へと飛んでいく事も増えた。


お互いがしっかりやらねば終わらない。


千野が捕れる範囲に打ち込んで、祐輝がしっかり捕球しなくては。



「998!!」
「ああ・・・もう少し・・・」




飛びついて捕球すると「999」と千野が叫んだ。


祐輝は両手を広げて打ってこいと合図している。


千野が放つ打球は右手に飛来したが祐輝は飛びついて空中で捕球した。


そしていよいよ。




「1000!!」
「おおおおお!!!!!」
「行くぞ祐輝!!」




千野が最後に打ち込んだ打球は祐輝の顔面に目掛けて飛んできたとてつもなく鋭い打球だった。


渾身のパンチの様だった。


祐輝は捕球したがその勢いで尻もちをついた。


しかしグローブからボールは落ちていない。


千野が近づいてくると笑っていた。




「さすが俺の舎弟だ。」
「マジで・・・感謝しています・・・」




祐輝は泣いていた。


嬉しくてたまらなかった。


地獄の様に暑くて過酷なノックだったが、人生で最高の時間だった。


未来永劫忘れる事はない。


誰かに感謝するという感情を学べた。


千野は祐輝とのノックを終えると免許の合宿に行くと颯爽と帰ってしまった。




「俺だけのために来てくれてたのか・・・」




駅へと走っていく千野の背中が見えなくなるまで頭を下げていた。


練習を終えて宿舎に帰ると仲間達と大浴場へ飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...