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第126話 冷たい夏
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仲間から孤立したまま、季節は蝉が鳴き始めた。
球児達は夢を叶える最後のチャンスを胸にその過酷な3年間の集大成を迎えた。
練馬商業もその時が来たがベンチに入った祐輝はその光景をただ冷たい目で見ているだけだった。
仲間の勝利も願わずに早く終わらないかと。
だが祐輝の冷たい目とは裏腹に練馬商業は順調に勝ち進んでいた。
駅を出て球場に向かう仲間達の会話はある選手の事でもちきりだった。
「春大会とこの夏大会45本のホームランかあ・・・関東高校の越田ってやつ化け物だな・・・」
それは祐輝にとって親しみのある名前だった。
関東高校の越田。
共に夢を目指した戦友だ。
彼は高校進学後も1年生から今日まで正捕手としてメンバー入りを続けてきた。
プロ注目の越田の名前は練馬商業にまで轟いていた。
越田の話をしながら球場入りした仲間達は4回戦まできていた。
相手は大会注目の名門高校だった。
そして試合は始まった。
試合は最初から力の差があった。
140キロ後半を投げるエースピッチャーを前に練馬商業はろくにヒットを打つこともできずにいた。
相手の攻撃は熾烈で点が徐々に増えていった。
試合は7回まできたが既に9対0だった。
あと1点取られたら試合は終了する。
祐輝にとっては待ち遠しかった。
「やっと終わるか・・・」
そして試合は終わった。
仲間達はシクシクと最後の夏が終わった事への涙を流していたが祐輝は足早に球場を後にした。
家に帰ると自動車学校への予約を取った。
そして免許合宿へ行った祐輝は夏休み明けには車を乗り回していた。
母親の真美の車を借りて学ランを着たまま運転する祐輝は1人で様々な場所へ行った。
誰とも遊ぶ事もなく。
夜景が綺麗な場所へ行くと窓を開けて1人で眺めていた。
「つまらねえ夏だった。」
冷たい目で夜景を見る祐輝は家に帰る最中でアヤノから電話がきた。
電話に出ると「ドライブに連れて行って」と誘われた。
アヤノの家に向かう最中で祐輝はある事を考えていた。
(付き合うか・・・告白してみよう・・・もう仲間もいないし・・・)
そしてアヤノが待つ駅へ車を走らせた。
駅に着くとアヤノが手を振っていた。
助手席に乗ると「六本木のクラブまでお願いね」と話していた。
「な、なんだって!?」
「別に駅でもいいよー。」
「クラブなんて行ってんのか?」
「優しい男たくさんいるのー。」
けんせーに捨てられてからアヤノは完全に変わっていた。
ある日ナンパされた男に連れて行かれたクラブに入り浸り、連日男遊びをしていた。
祐輝が免許合宿に行っている間の事だった。
たった2週間程度、会わなかっただけでアヤノは変わってしまった。
「アヤノ・・・」
「祐輝君も行く?」
「自分の事大事にしろよ・・・」
「別にいいじゃん。 付き合っても誰も大事にしてくれないんだから。 私は適当に遊んでるんだよお。」
アヤノはそう言うと六本木の夜に消えていった。
その日を堺に祐輝はアヤノとも疎遠になってしまった。
ハンドルを叩いて下を向く祐輝の冷たい最後の夏だ。
球児達は夢を叶える最後のチャンスを胸にその過酷な3年間の集大成を迎えた。
練馬商業もその時が来たがベンチに入った祐輝はその光景をただ冷たい目で見ているだけだった。
仲間の勝利も願わずに早く終わらないかと。
だが祐輝の冷たい目とは裏腹に練馬商業は順調に勝ち進んでいた。
駅を出て球場に向かう仲間達の会話はある選手の事でもちきりだった。
「春大会とこの夏大会45本のホームランかあ・・・関東高校の越田ってやつ化け物だな・・・」
それは祐輝にとって親しみのある名前だった。
関東高校の越田。
共に夢を目指した戦友だ。
彼は高校進学後も1年生から今日まで正捕手としてメンバー入りを続けてきた。
プロ注目の越田の名前は練馬商業にまで轟いていた。
越田の話をしながら球場入りした仲間達は4回戦まできていた。
相手は大会注目の名門高校だった。
そして試合は始まった。
試合は最初から力の差があった。
140キロ後半を投げるエースピッチャーを前に練馬商業はろくにヒットを打つこともできずにいた。
相手の攻撃は熾烈で点が徐々に増えていった。
試合は7回まできたが既に9対0だった。
あと1点取られたら試合は終了する。
祐輝にとっては待ち遠しかった。
「やっと終わるか・・・」
そして試合は終わった。
仲間達はシクシクと最後の夏が終わった事への涙を流していたが祐輝は足早に球場を後にした。
家に帰ると自動車学校への予約を取った。
そして免許合宿へ行った祐輝は夏休み明けには車を乗り回していた。
母親の真美の車を借りて学ランを着たまま運転する祐輝は1人で様々な場所へ行った。
誰とも遊ぶ事もなく。
夜景が綺麗な場所へ行くと窓を開けて1人で眺めていた。
「つまらねえ夏だった。」
冷たい目で夜景を見る祐輝は家に帰る最中でアヤノから電話がきた。
電話に出ると「ドライブに連れて行って」と誘われた。
アヤノの家に向かう最中で祐輝はある事を考えていた。
(付き合うか・・・告白してみよう・・・もう仲間もいないし・・・)
そしてアヤノが待つ駅へ車を走らせた。
駅に着くとアヤノが手を振っていた。
助手席に乗ると「六本木のクラブまでお願いね」と話していた。
「な、なんだって!?」
「別に駅でもいいよー。」
「クラブなんて行ってんのか?」
「優しい男たくさんいるのー。」
けんせーに捨てられてからアヤノは完全に変わっていた。
ある日ナンパされた男に連れて行かれたクラブに入り浸り、連日男遊びをしていた。
祐輝が免許合宿に行っている間の事だった。
たった2週間程度、会わなかっただけでアヤノは変わってしまった。
「アヤノ・・・」
「祐輝君も行く?」
「自分の事大事にしろよ・・・」
「別にいいじゃん。 付き合っても誰も大事にしてくれないんだから。 私は適当に遊んでるんだよお。」
アヤノはそう言うと六本木の夜に消えていった。
その日を堺に祐輝はアヤノとも疎遠になってしまった。
ハンドルを叩いて下を向く祐輝の冷たい最後の夏だ。
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